
半沢直樹は、「上を目指す」と公言する有能な銀行マン。半沢がバンカーとして頭取を目指すことには、ある理由があった。かつて、両親の経営する工場が傾いた際、産業中央銀行が融資を引き揚げたために父親が自殺したのだ。半沢が入社した産業中央銀行は、2002年に東京第一銀行と合併し東京中央銀行となり、世界第三位のメガバンクとなる。しかし上層部では、旧産業中央派と旧東京第一派での醜い派閥争いが繰り広げられていた。
ある日、半沢が融資課課長として勤める大阪西支店に、年商50億の「西大阪スチール」への融資話が持ちかけられる。半沢は警戒したが、支店長・浅野の鶴の一声で「無担保で5億の融資」が決まり、大阪西支店は最優良店舗となる。しかしその後、西大阪スチールは粉飾決算が発覚し倒産、社長の東田は雲隠れし、5億円の回収が困難な事態に陥る。支店長が本部上層部に根回しを行い、半沢に全ての責任を負わせることで、事態を収拾しようと画策していることを知らされる。1週間後の聞き取り調査までに、雲隠れした社長を見つけないと、半沢は地方に島流しにされてしまう。そして、東京本部での聞き取り調査の日、支店長の息のかかった人事部次長らに責任を追及される半沢は、葛藤の末にケンカ腰で応対したあげく、啖呵を切って言い放つ。「私は必ず、5億を回収する!」
今回は「半沢直樹」を経営学的に読み解いてみよう。日本の銀行は、バブル崩壊後、吸収合併を繰り返し行なうことで資本規模を拡大し、グローバル競争に参加できる資金力を付けてきた。一方で、従来の地域経済への資金供給以外に、産学官連携などの新規事業への資金、経営人材の供給、円高により海外進出する企業への融資や、グルーバル競争の中での銀行・保険・証券のボーダレスへの対応といったように、銀行を取り巻く状況は多様化し、人材の再配置が必要になっている。
一般に、組織が変動する時期には先例に基づく判断では難しいため、企業統治=コーポレートガバナンスのためのルール化の重要度が増してくる。それらを実現には、決裁システムや規則遵守コンプライアンス、さらにリスクマネジメントも必要である。
コーポレートガバナンスの視点から、半沢直樹が遭遇した「不良債権」事案を考えると、2つの構造的問題点があることがわかる。すなわち、第1には、審査・決裁システムの不備である。提案から承認を経て決裁した事案で、特定の関係者のみに責任が集中することは決裁システムの欠陥である。第2には、問題が発生した後の対応の不備である。不良債権はある確率で発生することが予想できる。これら複数の事案はコンプライアンス委員会など第3者が聞き取りを行い、処分もガイドラインに沿って公平に行うべきである。
さて、ドラマは半沢直樹の「倍返し」によって高視聴率を取っているようであるが、願わくば、有能な銀行マンのエネルギーを、犯人探しではなく、多様な新規事業へ向けて欲しいものである。
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