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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

だるまさんがころんだ

2004-08-07 | 演劇
今回の燐光群による『私たちの戦争』と『だるまさんがころんだ』の交互公演ほど、現代演劇が担う必要性と有効性を強く実感させてくれた作品は、近年久しくなかったように思う。
これが2作品を見終えた私の第一印象である。
『だるまさんがころんだ』は圧倒的反響の声に後押しされて、今年2月の初演以来早くも5か月で再演であるが、今回の初見でその理由が納得できた。とにかく面白いのだ。
「演劇という手段で現在の状況と向き合う」という坂手洋二(作・演出)のアプローチの結果は、この作品でも『私たちの戦争』以上に刺激的な魅力に満ちている。

テーマは地雷である。
地雷→兵器→戦争→派兵→戦場→地雷の連鎖の輪から、非戦闘地域にいる私たちでさえ、もはや逃れようがない《戦時下》状況に足を踏み入れたことは明白である。
海外の戦闘地域の地雷原をさまよう自衛官コンビ
親分からの命令で地雷を探すたびに出るヤクザ
和製の地雷を製造する会社で働く父親とその家族
地雷撤去に命と身体を賭ける女性
地雷で埋め尽くされた村を追われた難民
地雷で死んだ双子の兄弟
セントラルパークの地雷
はたまた、皇居に埋められた地雷まで、
地雷をめぐる様々なエピソードが、ポップな感覚のコラージュのように繰り返し交錯してゆく。
今回も、地雷を手に入れるために四苦八苦する気の好いヤクザを演じた大西孝洋が良い味を出して最も印象に残る。
また、自衛官コンビの猪熊恒和と瀧口修央がブラック・ユーモアのパートを受け持ち、中山マリがベテランの貫禄を見せた。
休憩なし2時間10分の舞台は、一瞬のダレも生じさせない、密度の高い第一級のエンターテイメントそのものであった。
(2004-8-3 下北沢ザ・スズナリにて butler、
2004-8-7 加筆)


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