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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

毛皮のマリー

2008-05-06 | 演劇
今年は寺山修司没後25年、生存中は取り立てて興味が無かったが、今年は早や『身毒丸』に続いて2作目の寺山作品の観劇となった。
今回もまた、形を変えた「母」を演じる悲しい「オンナ」のお話である。

『毛皮のマリー』と言えば、観たことはないが、美輪(丸山)明宏が40年前に新宿文化で演じて以来、彼(彼女)の専売特許役だと思っていた。
今回、オカマ(男娼)のマリーさんを演じたのは演出家の川村毅。彼が旗揚げした”第三エロチカ”では役者としても出ていたそうだから、ひょっとして女装役の経験もあったのであろう。
それにしても、美貌で妖艶だったであろう美輪マリーとは、随分雰囲気の違うマリーであった。
どう違うのかと言うと、メイクで誇張された面が多分にあるのだが、ワハハ本舗の梅ちゃん風と言うか、イヤイヤそんな生易しいものではないぞ。漫才の宮川大助・花子の大助が女装したグロテスクな姿に近いかも知れない。

ところが、このマリーが素晴らしかった!
川村毅のビジュアルに依存しない、演技力のなせる技なのだが、美輪とは違った圧倒的なパワーが川村にはあるのだ。
劇中のセリフにもあるように、メリーさんは錦糸町かもっと場末をテリトリーとしたオカマさんである。
肉体労働系のガッチリ体型と、時折り効果的に出てくド迫力の男言葉が、さらに迫力増加にひと役かっていた。

マリーさんが育てている美少年・欣也役の手塚とおるが見事であった。半ズボンの華奢な姿態はまさに少年。それも、絶対に存在しえない少年です。
狂気を内に秘めた役では定評があるが、ピュアでキレイでコワイ、きっと彼以上の適役はいないだろう。

文学座時代ファンだった菅野菜保之を、しばらくぶりに舞台で観られたことも嬉しい。役柄は、なんと美少女の紋白である。
この役は、欣也の蝶のコレクションから抜け出てきたような非現実的な存在で、これまたグロテスク度は高めながら、演技力で魅せてくれる。
これだけコワイ存在が並び立つと、下男の醜女のマリーが目立たなくなる。「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは?」の場面は、冒頭のマリーの鏡への問いかけに呼応するが、下男がご主人さまに対抗意識を燃やす、格好の倒錯した見せ場になるはずだが、そうはならなくて残念であった。

1時間20分の舞台は、伝説の女優・川村毅はじめメイン3人の存在感で、60年代のアングラの記憶を呼び覚ませてくれた。
皆さんにお勧め、、、と言いたいところだが、東京での公演はわずか4日間で終了し、あとは5月10日、11日の青森県立美術館での公演のみである。
青森にお住まいのかたは、この機会に是非ご覧下さい。
(2008-5-3、シアタートラムにて、butler)


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3 コメント

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同感です (さわやか革命)
2008-05-10 10:54:37
TBありがとうございました。

|下男がご主人さまに対抗意識を燃やす、格好の倒錯した見せ場になるはずだが、そうはならなくて残念

確かにあの場面がいささか盛り下がっていたと思いました。
是非、再演を望みたいところです。そしたら、もっとよく観察できるかと--。(何を?)
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美貌の男娼 (butler)
2008-05-10 11:38:32
>さわやか革命さん、

かなり醜悪な舞台でしたが、僕は気に入ってます。(笑)
美化された男娼なんてツマラナイし、グロでOK!
ただ、下男とその他大勢がチョットです。
磨赤児が演った下男とか、ゲイバーのママたちの
その他大勢っていうのも、怖いもの見たさで
そそられますが…。(笑)

TB&コメントに感謝!
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Unknown (hitomi)
2008-05-17 18:24:18
はじめまして。舞台も録画中継も見ても全然、理解できません。どう解釈したらよいのでしょうか。
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