NYにはとても敵わないが、当地にも質の高いリージョナル・シアターがいくつかあって、そのひとつがStudio Theatreで、英国製の異色ミュージカルが逆輸入上演されているとなれば、観に行くしかない。
「ジェリー・スプリンガー・ショー」という札付き低俗TVショーが、かくも上質でメッセージ性も備えたエンターテイメントとして再生されたことに、先ず驚いてしまった。
数年前に、友人から頂いたロンドンのオリジナル版(BBC放映)のビデオを観て、とんでもなく風変わりだが、不思議な魅力を持った作品であることは知っていた。
今回、基本的にはオリジナルを踏襲したStudio Theatreのパワフルで、ある意味含蓄の多い、クオリティの高い上演に接して、これはやっぱり”The Musical”ではなくて”The Opera”だな、との思いを強くした。
先ず、オープン前から客席両サイドの最前列と2列目に仕込まれた、20名のコーラスのアンサンンブルの素晴らしさ。
200席余りの狭い劇場とステージを、TVショーの録画スタジオに見立てたコンパクトな装置。
司会者ジェリー役(ローレンス・レッドモンド)と、前説役(ボビー・スミス)から悪魔へと変貌するジェリーの対抗役の、主要2俳優の素晴らしさ。
また一幕目で番組に登場する、3股掛け持ちの浮気男とその関係者、おむつ愛好ハダカ赤ちゃん男とその関係者、ストリッパーと彼女のヒモでジャンキーのKKKメンバーとその関係者など、3組の出場者たちがいずれも演技と歌唱に破綻が無いのも素晴らしい。
二幕目は、ジェリーが生死の狭間を彷徨う病院で、ワグナーの『ワルキューレ』を彷彿とさせる場面と大合唱で始まり驚いた。
続くジェリーの地獄めぐりは、アダムとイヴ、ジーザス、さらには神までが登場して混迷を深めてゆく。
本作の白眉シーンとも言える、♪Fuck You Talk♪は、『魔笛』の鳥刺しパパゲーノが歌う♪パパパパパパ…♪のパロディである。
♪ファファファファファッ…♪だけでハラハラさせて、最後に大爆笑させるジーザスと悪魔の、息を飲むバトル二重唱が圧巻だ。
地獄の劫火に焼かれそうになるジェリーは、何とか生還するが、フィナーレで僕たち観客に不思議なカタルシスが訪れる。
一幕目の参加者のとッ掴み合いのバトルも、罵り合いも、何百回も歌詞の中で使われる汚い言葉も、美しいメロディと合唱に清められ浄化し、キレイはキタナイ、キタナイはキレイ、正しいは悪い、悪いは正しいと歌われる。
まるで『マクベス』の魔女の予言のような歌詞に導かれて、清濁あってこそ人生という、人間賛歌のテーマへと辿り着いたのだ。
ブラボー、ジェリー!
そして、素晴らしいカンパニーにアプローズ!
(2008-8-7、Studio Theatreにて、butler)
「ジェリー・スプリンガー・ショー」という札付き低俗TVショーが、かくも上質でメッセージ性も備えたエンターテイメントとして再生されたことに、先ず驚いてしまった。
数年前に、友人から頂いたロンドンのオリジナル版(BBC放映)のビデオを観て、とんでもなく風変わりだが、不思議な魅力を持った作品であることは知っていた。
今回、基本的にはオリジナルを踏襲したStudio Theatreのパワフルで、ある意味含蓄の多い、クオリティの高い上演に接して、これはやっぱり”The Musical”ではなくて”The Opera”だな、との思いを強くした。
先ず、オープン前から客席両サイドの最前列と2列目に仕込まれた、20名のコーラスのアンサンンブルの素晴らしさ。
200席余りの狭い劇場とステージを、TVショーの録画スタジオに見立てたコンパクトな装置。
司会者ジェリー役(ローレンス・レッドモンド)と、前説役(ボビー・スミス)から悪魔へと変貌するジェリーの対抗役の、主要2俳優の素晴らしさ。
また一幕目で番組に登場する、3股掛け持ちの浮気男とその関係者、おむつ愛好ハダカ赤ちゃん男とその関係者、ストリッパーと彼女のヒモでジャンキーのKKKメンバーとその関係者など、3組の出場者たちがいずれも演技と歌唱に破綻が無いのも素晴らしい。
二幕目は、ジェリーが生死の狭間を彷徨う病院で、ワグナーの『ワルキューレ』を彷彿とさせる場面と大合唱で始まり驚いた。
続くジェリーの地獄めぐりは、アダムとイヴ、ジーザス、さらには神までが登場して混迷を深めてゆく。
本作の白眉シーンとも言える、♪Fuck You Talk♪は、『魔笛』の鳥刺しパパゲーノが歌う♪パパパパパパ…♪のパロディである。
♪ファファファファファッ…♪だけでハラハラさせて、最後に大爆笑させるジーザスと悪魔の、息を飲むバトル二重唱が圧巻だ。
地獄の劫火に焼かれそうになるジェリーは、何とか生還するが、フィナーレで僕たち観客に不思議なカタルシスが訪れる。
一幕目の参加者のとッ掴み合いのバトルも、罵り合いも、何百回も歌詞の中で使われる汚い言葉も、美しいメロディと合唱に清められ浄化し、キレイはキタナイ、キタナイはキレイ、正しいは悪い、悪いは正しいと歌われる。
まるで『マクベス』の魔女の予言のような歌詞に導かれて、清濁あってこそ人生という、人間賛歌のテーマへと辿り着いたのだ。
ブラボー、ジェリー!
そして、素晴らしいカンパニーにアプローズ!
(2008-8-7、Studio Theatreにて、butler)
来年の秋にはLAでドンマー版のパレードが上演されますので、是非CAにバケーションにいらしてくださいませ(笑)。
http://www.barethemusicalinbaltimore.com/home.html
bareを上演している劇場、アムトラックの駅に近くて便利な場所のようですが、残念ながら行けそうにありません。
Next to Normalは DC の Arena Stageみたいですね。
ここは、Signature Theatreとジョイントで、以前 Sunday in the Park with George を上演したことがあります。これは是非とも観に行こうと思います。
Parade は日本からの観劇ツアーと合流したいなあ~。(笑)