【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =101=

2019-06-21 05:44:15 | 浪漫紀行・漫遊之譜

〇◎ 命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』

◇◆ =101= 芸術の秋!葉っぱに泡の塔を造ったのは誰? ◆◇

 大阪の住宅街では、いつの間にか昼間のセミの求愛コーラスが、夜のコオロギのさえずりにかわっていた。でもセミがいなくなったわけではなく、卵に「姿を変えて」身近な場所にいる。一方で、土の中で卵から孵ったコオロギたちが「大人」になって、求愛歌を奏で始めたわけだ。心地よい響きが秋の夜長に流れる♪

 今回は“芸術の秋”にふさわしく、昆虫によるアート作品をご覧いただきたい。8月に信州の峰の原高原で開催した二つのイベント「昆虫~ちいさないきもの~自然撮影体験教室」と「この夏探検昆虫学者になろう」の中で見つけたものだ。

  峰の原高原は、コスタリカのモンテベルデとほぼ同じ標高(1500メートル)で、森林と草原に囲まれている(第57~59回でも紹介)。濃い霧がかかる日もあって、モンテベルデの雲霧林の9~10月の雰囲気が漂う。

  イベント中、さまざまないきものたちに出会ったが、なかでも特にビビッときたのが、葉っぱの上に並ぶ「白い泡の塔」のオブジェ(最初の写真)。参加者のみんなが「何かヘンなものが・・・」と言うので行ってみると、ヤマナラシという小さな若木の葉にそのオブジェはくっついていた。

 何なん-2

 「何なん?」  塔の高さは2~3ミリ。目を凝らすと泡状の物質でできているようだ。周辺の葉はかじられていて、穴だらけになっている。そこに緑色の幼虫を3匹発見! 見た目はハバチの幼虫だ。

  ハバチは「原始的な形質を保っている」ハチの仲間で、その幼虫のほとんどが、もっぱら植物の葉を食べる。幼虫はガやチョウの幼虫に似ているが、足(腹脚)の数が多いことで見分けがつく。ぼくは峰の原高原でこれまでに7種ほどのハバチの幼虫を見てきているが(最後に2種紹介します)、周りに泡の塔が建っているのは初めてだ。

 幼虫を撮影しようとカメラを近づけると、幼虫はス~ッと体を横に倒して葉の裏側へと移動。裏側から近づくと、またス~ッと葉の表へ移動(笑)。慎重に近づかないと気付かれてしまう。でも、幼虫はその場で体の向きを変えるだけで、どうやら離れたくない様子。

  泡の塔はこの幼虫たちが造り上げているはずで・・・でも、どうやって? なんと参加者の一人が、その瞬間をとらえていた! 幼虫が葉の表面に白い泡を吐き出し、塔状に仕上げていたのだ。自然を注意深く観察するたくさんの「目」があると頼もしい!

 何なん-3

  ところでこの幼虫、いったいどんな種類のハバチで、白い泡の塔にはどんな役割があるのか? フェイスブックに投稿して情報を募ったところ、Itaru Suzukiさんからのコメントで、サクツクリハバチのものであろうということを教えてもらった。泡の塔を並べて柵を作ることから「サクツクリ」なのだろう。今回見つけたのは、プリスティフォラ・プラティケルス(Pristiphora platycerus)という種のようだ。

  泡の塔を触ってみると、軽くて柔らかく、少し粘着性があり、手にペタっとくっついた。粘着性があるということは、天敵である寄生蜂や狩り蜂、ヤドリバエなどを近くにとまらせない役割があると考えられる。

  別のサクツクリハバチ(Stauronematus compressicornis)の泡の成分を調べた論文によると、泡は16種ものタンパク質で構成されていて、20以上の酸が含まれているそうだ。その中には、抗菌活性を持つとされるラウリン酸や起泡性に富むミリスチン酸も含まれている。こうした成分を天敵が嫌がる可能性も高い。

  数日の間、繰り返し様子を見に行っていると、幼虫は1匹、また1匹と数が減っていき、泡の塔も減っていった。最後の1匹も、葉の端まで歩いてきたかと思うと、ぶら下がり、そのままポトッと地面に落ちた。この後、土の中のどこかでサナギになるのだろう。元気に育ってほしい。

  最後にハバチのおまけ、体勢や形態の美をどうぞ!

 何なん-4

 Ӂ 3年越し、謎のトゲトゲ幼虫を探せ! Ӂ

 ツノゼミ-d1

   今回の話の発端は、2014年の8月にさかのぼる。 アメリカのワシントンDC、スミソニアン国立自然史博物館にあるマケイミー博士(Dr. Stuart Mckamey)の研究室におじゃましていたときのこと。ツノゼミの専門家である博士から、ある使命を授かった。ツノゼミの1種、ハイフィノエ・ラティフロンズ(Hyphinoe latifrons)の幼虫を採集し、飼育してほしいと言う。

  このツノゼミ、現在はハイフィノエ属(第117回、第118回)に分類されているものの、実は別のグループではないかと博士は考えている。分類の見直しには幼虫の情報が欠かせないので、なんとかならないかというわけだ。  ぼくはこれまでに2回ほど、コスタリカの家の周辺でこのツノゼミの成虫を確認していた。近所にいるのは間違いない。でも幼虫を探すとなると、大事な手がかりとなるのがその形態だ。博士に尋ねると、「おそらく茶色いトゲトゲをしている」と言う。

  あれ? トゲトゲの幼虫の抜け殻なら撮影したことがあるぞ。 ぼくはPCに保存してあるその画像を探し当て、博士に見せてみた(冒頭の画像と次の画像2枚)。

 「ワオ、これだよ、これ! キレイな写真だ。成虫まで育てたのかい?」  「いや、家の前のインガ・シエラエ(Inga sierrae:マメ科の木)の高いところの葉の裏についていたので、写真を撮っただけです」  「手の届く低い木々にもいるはずだ、探して飼育してくれよ!」」

 ・・・それから3年、ぼくは折に触れ、家の周りにあるインガ・シエラエの木々の手の届く範囲の枝葉をチェックしてきた。しかし、幼虫どころか、抜け殻さえ見つからない。見つかるのはそのツノゼミの幼虫に似た虫こぶだけだった(次の写真)。

  2017年の5月、日本からケントくんという昆虫好きの高校生が、ぼくの元に修行にやって来た。1カ月間ぼくに弟子入りして、自然の中での生活や昆虫について学ぶ。いい機会なので、ケントくんと思いっきりトゲトゲ幼虫を探してみようと決心した。

  以前、抜け殻を見つけたのは木の高いところの枝の葉の裏。 今回の調査は、高枝切りバサミも使って大胆に行こう! 午前中、家周辺やバイオロジカルステーション敷地内のインガ・シエラエの木々をチェック。敷地の外も探してみるが、見つからない。午後になると雨が降り始めたが、隣の山の頂上へ向かう道を行くことにした。

  急斜面を30分ほど登っていくと、目の前に大きなインガ・シエラエの木が道の上にせり出すように枝葉を伸ばしていた。よし、ここを狙ってみよう! 高枝切りバサミで枝先から1メートルほどの範囲を切り落としては、二人で目を通していく。ゾウムシやヨコバイなどたくさんの小さな昆虫たちは見つかるのだが、ツノゼミの幼虫は見当たらない。

  数本目、ついにツノゼミを見つけた! 幼虫でもなく、目当ての種でもなく、土のついたデコボコのサツマイモのような姿をした成虫(次の写真)で、枝に上手く擬態しているように見えた。この木と密接な関係にあるのかも、もしかしたら探している幼虫は成長したらこのツノゼミになるのでは?などと思いつつ、幼虫探しを続けることにした。

 

 それからどれくらい探しただろう。もう見つからないのかな~と思っている矢先、葉っぱの付け根にそれらしき物体を見つけた。 「ん?え?これとちゃうん?」とケントくんに見せてみる。 次の瞬間、二人は目を大きく見開いて、互いに顔を見合わせた。

 「おった~! これやでこれ!」  二人は笑顔まみれになった。 思い切って調査してやっと見つけた幼虫を、慎重に持ち帰って飼育だ。無事、成虫まで育てられるだろうか。果たしてハイフィノエ・ラティフロンズは現れるだろうか。

 ツノゼミ-d2

・・・・・つづく


_ San Gerardo de Dota Costa Rica _

・・・・・・ https://youtu.be/BgqRI9NrA7s ・・・・・・


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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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