【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

王妃メアリーとエリザベス1世 =17=

2016-04-16 18:49:11 | 歴史小説・躬行之譜

○◎ 同時代に、同じ国に、華麗なる二人の女王の闘い/王妃メアリーの挫折と苦悩 ◎○

◇◆ 俘虜の旅路・メアリー ◆◇

 1568年5月、エリザベスに援軍を期待してスコットランドを脱出してきたメアリーだったが、そのままイングランドに留め置かれることになった。 カーライル城は、メアリーの、イングランドでの最初の監獄となった。 しかしそこはスコットランドに近く、メアリー支持者が彼女を奪還しにくる恐れがあった。 だが、そのようなことがもしあれば、イングランドとスコットランドの関係はますます複雑になる。 そこで2カ月ほどすると、メアリーはひとまず、ヨークシャーのボルトン城に移送された。

 メアリーはそこに半年間あまり幽閉されたあと、彼女の監視役となった6代シュルーズべりー伯ジョージ・トールバットの領地へと送られていった。 そして、タツベリー、チャッツワース、シェフィールド城、シェフィールド・マナー、バックストン、ウィングフィールド・マナー、ワークソプ・マナー、コヴェントリー、チャートリーと、伯爵領内の城や館を転々とさせられたのである。 もっとも長く幽閉されていたところはシェフィールド城で、彼女はそこで14年間ないし15年間の囚われの身の生活を送ったという。

 イングランドに亡命してみれば、メアリーを待っていたのは、囚われの身の生活だった。 しかしそれでも初めのころは、彼女はまだエリザベスに期待するものがあった。 血がつながっているふたりが会えば、かならず親しくなれる、と信じていたのである。 ところがエリザベスは、メアリーと会うことを拒否しつづけた。 なぜならば、メアリーには夫殺しの疑いも取りざたされていたからである。

 エリザベスは、恋人を作っても、イングランドと結婚したと宣言して独身をとおしてきた。 その彼女は、メアリーの夫殺しの疑いに、嫌悪感をもっていたのである。 エリザベスは、「真相が明らかにされないうちは、メアリーには会いたくない」とも言ったという。 それともう一つ、彼女がメアリーに会いたくない理由があった。 人づてに聞く9歳年下のメアリーは、背が高く、燃えるような美しい赤毛をしているという。 そして、フランスの宮廷で育てられた彼女の身のこなし方は、まわりの者を圧倒するほど洗練されているという話だった。

 それにひきかえてエリザベスは、偉大な国王ヘンリー8世を父にもちながら、私生児と罵られて育ってきた。 何度も権力闘争や宗教抗争に巻き込まれてきた。 身の危険さえ感じることもあった。 彼女が自分を守るために自然と身につけてきた方法は、たとえ味方だと思っても絶対に本心をあかさないこと、まわりのおだてや誘いにのらないことだった。 それは、若い娘のとる態度や愛嬌とは、ほど遠いものだった。

 エリザベスも美しい金髪をしていて、子供のころはそれが自慢だった。 しかし、三十も半ばを過ぎたいまは、痩せぎすで女性としての魅力に自信がもてなかった。 そんな女ごころも、エリザベスにメアリーと会うことをためらわせていたのである。 

 国内のプロテスタント勢力は、カトリック勢力が「メアリーをイングランド女王に」と、いつ担ぎだすかわからないと、エリザベスに彼女を処刑するように迫った。 しかし、メアリーの処遇と運命については、ヨーロッパ中のカトリック勢力が注目していた。廃位されたとはいえ、スコットランド女王にしてイングランド王位の継承者、母方はフランスの大貴族、そしてカトリック。 メアリーのうしろには、ローマ教皇とカトリックの大国であるフランスとスペインが控えていた。

 それでなくともフランスとスペインは、プロテスタントのエリザベスを追い落とし、そのあとにメアリーを据え、あわよくばイングランドを属国化すべく、互いに牽制しながら、虎視眈々と狙っていた。 イングランド国内でも、エリザベス体制を転覆すべく、カトリック勢力の陰謀が渦を巻いていた。 海外からは過激なイエズス会の僧侶が潜入し、反プロテスタント活動を扇動していた。 彼等は、カトリックの地方領主がマナー・ハウスのなかに作った隠し部屋――僧侶の穴――にかくまわれながら、地下活動をつづけていた。

 メアリーはしだいに、亡命したころには思いもつかなかったような、陰謀の渦に巻き込まれていったのである。

 

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森のなかえ

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