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ミサイル迎撃について

2015-08-28 17:51:20 | 政治・経済
 先日コメントをいただいたので、その回答を書いておきたい。
 やや長いコメントなので全文は掲載しないが、要約すると、以下のようになるだろう。ミサイルの種類には違いがあり、ミサイル防衛中のイージス艦は、自分自身を某業する能力が低下する、また、日本に飛んでくるミサイルと艦隊などを攻撃するミサイルは種類がちがい、この二種類の攻撃への対応を同列には扱えない――

 ミサイルについての説明には、たしかに不正確な部分がいくつかあった。その点については、私の不勉強と恥じ入るよりほかない。もとより私は軍事の専門家でもなんでもないので、ミサイルの種類などについての詳細な知識は持ち合わせていない。大局的な防衛資源全体という観点からすれば必ずしも間違ってはいないと思うが、ミサイルの迎撃に関する具体的な説明が不正確であったことは認めたうえで、ここで訂正しておきたい。
 ただし、そのことだけでは話の大枠は変わらない。日本が攻撃されている事態であればそれは個別的自衛権の範疇に入るし、そうでないのなら政府与党が安保法制について説明する際にもちだす「日本の自衛のため」という前提が崩れる――これは、ミサイルの種類云々とは関係がない。菅長官らの説明が非常に恣意的であるという点については、訂正する必要はないと考える。

 そして、イージス艦のミサイル迎撃能力について。
 今回少し調べてみたところ、イージス艦は自艦を防護する能力も十分に持っているとする説もあるそうだが、いずれにせよ、そのような脆弱性があるなら米軍内部でそれをカバーするような編成になっているのではないか? もし日本に対する攻撃に対して米国のイージス艦が対応し、そのイージス艦を北朝鮮が攻撃するとしたら、米側は北朝鮮と交戦状態に入ったとみなして本格的に応戦するだろう。そもそもそれ自体かなり非現実的な想定だと思うが、もしそうなったとしたら、自艦防護能力が低下しているイージス艦をサポートするぐらいのシステムは米軍側ももっているだろう。無論、そこをさらに強化するために日本の自衛隊と連携すべきだという主張であろうが、その次元の話になると、私は同意できない。米軍と一体化することが日本の安全保障にとってよいことだとは考えないからだ。
 さらにもう一点。どこかの国が弾道ミサイルを何発も発射して、それをイージス艦などの迎撃システムが次々と撃ち落し、そのイージス艦を敵国の艦船が攻撃する――というような事態は、ただの武力衝突ではない。かなり大規模な“戦争”である。私の知る限り、お互いにそのような近代兵器を駆使する戦争が起きたことは、これまで世界のどこの国家間にもない。したがって、そのような戦争について描かれる戦略というのは、あくまで机上のシミュレーションでしかない。もし実際そういう戦争が起きたら、それは人類がかつて経験したことのない未曾有の事態である。いかなる経験則も存在せず、シミュレーションどおりに事態が動くかどうかはわからないということにも留意しておくべきだろう。
 “未曾有の大戦争”ということでいえば、かつての二度の世界大戦がそういう例だっただろう。
 各国は、それまでの軍事の常識にしたがって、さまざまに戦略・戦術をたて、新たな兵器を作っていた。だが、その結果としてあのような惨状を引き起こすということには無自覚だったのではないだろうか。軍事の専門家が事前にあれこれシミュレーションしてはいても必ずしもそのとおりになってはくれず、すさまじい規模の破壊を引き起こした後になってから「こんなはずじゃなかった」といっても手遅れである。弾道ミサイルやその迎撃システムに関する“軍事の専門家”たちの議論には、そういう危うさがあるように私には思えてならない。