ボブジ(Bobuji)のパーカッション&ドラムやその他諸々

ドラマー&パーカッショニストのボブジのブログ。出来事や思ったことなど色とりどり。

咄嗟の一言

2013-04-16 19:32:36 | 日常のあれこれ



「大丈夫ですか!?」
 
人はこの言葉をどんな時に使うだろう。
急病で突然倒れた人に向かって言ったり、賞味期限が数回誕生日を迎えている食品を差し出された時などに使える言葉だろう。
 
私が音楽の専門学校を卒業してから最初の冬の出来事だった。
私は音楽仲間と数人で箱根に一泊二日のプチ旅行に出かけたのだ。
 
初めてのロマンスカーでテンションが上がり、真っ昼間からビールで盛り上がる若者達。
旅館に着く頃にはテンションMAXで、日本酒やら焼酎やらウイスキーやらおつまみやらをドッサリ買い込んで部屋で大宴会が始まった。
しかしまだまだガキんちょな我々は自分のペースは考えずガンガン飲んだ。
案の定、夜になると全員が酔いつぶれて死んだように寝てしまった。
 
私も寝ていたのだが、ふと夜中の1時くらいに目を覚ますと急に温泉に入りたくなった。
だって箱根に来たんだもの。温泉に入らないで何しに来たの?って話ですよ。
みんなはグースカ寝ている中、私はまだ重いまぶたを擦りながらも浴室へ向かった。
 
浴室へ到着するとどうやら人の気配はなく、貸し切り状態のようだ。
私は服を脱ぎ、髪と体をしっかりと洗い、湯船に浸かった。
とても気持ち良い!なんと至極の時なんだろうと多幸感に包まれた。
そして浴室の外には露天風呂がついていた。これに入らないと箱根を満喫したとは言えない!
私は露天風呂に浸かって大自然と戯れた。
山の中の木々がライトアップされていて幻想的な風景で、夜風が気持良く、思わず山の中へ全裸のまま飛び出していきたくなった程だ。
 
そんな最高の空間を満喫していたら、どうやら他の客が入って来るようだ。
脱衣所からうっすら人の話し声とガサゴソと物音が聞こえる。
かなり名残惜しかったが、まぁ元々パブリックな空間だし仕方がないと思い、新入りさんを出迎える事にした。
 
スーっと浴室のドアが開かれると、その人達の姿が見えた。
 
 
お、おっぱい!?
 
なんと20代と思われる女性の2人組が入ってきたのだった。
私は頭がパニック状態!何がどうなっているのか状況を把握出来ずにいた。
この旅館は混浴ではないはずだ。何かのドッキリなのか?ヤツらは男湯にあえて入りに来る程の鋼鉄の心臓の持ち主なのか?それとも私が間違って女湯に入ってしまったのか?
いずれにしてもこの状況はヤバイ。ヤバすぎる。一歩間違えば私は性犯罪者のレッテルを貼られ、一生後ろ指をさされながら生きていかなければならなくなるような絶体絶命の状況だった。
 
幸いにもこちらは外の露天風呂に浸かっているのでまだ気付かれてはいない。このまま湯船にだけ浸かって出て行ってくれれば何とかなるとかすかな希望を抱いた。
しかし、そんな希望もあっさりと打ち砕かれるのであった。
「ねーねー外の露天風呂も入ろうよ!」と少々はしゃぎ気味な話し声が聞こえたのである。
まぁそりゃそうだよな。さっき私も「露天風呂に入らないと箱根を満喫したとは言えない!」なんて思ったんだから。
 
ガラガラガラ…
 
露天風呂と浴室の間に隔てられた、たった1枚の防御壁…ATフィールドがいとも簡単に破られたのである。
そりゃそうだ、ただのドアだもん。
女性2人組が私に気付くと軽く会釈をしてそのまま露天風呂に入った。
 
良かった!男だと気付かれていない!
 
結構な量の湯気がたっていたのと、お湯がにごり湯だったのと、私の髪が長かったのと、顔ギリギリまでお湯に浸かっていたのでどうやら私の事を女性だと認識しているようだ。
ひとまず助かった。このままこのお2人さんが上がってしまえば気付かれることなく退散できる。
きっと話を聞く分にはこの状況は美味しい状況で羨ましいなどと言われるのかもしれないが、当の本人としては全く余裕が無く、まさに死と隣り合わせの極限状態なのだ。
心臓は今までに聴いた事もないような16ビートを刻んでいる。
 
そしてついにその時は訪れた。
 
「ねぇ、そろそろ上がろうか?」
 
そう言って2人組はついに上がっていった。
ぃやったぁぁぁあい!!!!
私は百の拷問を耐え抜いた不死鳥のごとく、喜びの舞いを踊った。
 
とにかく誰にも気付かれぬうちに上がらなければと脱衣所へ急いだ。
体を拭き終わって、服を着ようとした時に悪夢は再びやってきた。
 
ギィ…
 
入口のドアが開かれた音を聴き取ると、一目散に浴室へ逃げ帰り、再び露天風呂へダイブした。
どうやら50代くらいのオバサンが入ってきたようだ。
その瞬間、この状況が確信に変わった。
 
うん、ここは女風呂だ。
 
酔いのせいなのか眠気のせいなのか、入る場所を間違えてしまったようだ。
私は状況を把握すると、常に最悪の事態を想定しながら先程と同じ戦闘態勢をとった。
 
やはりオバサンも体を洗って浴槽に少し浸かると、そのまま露天風呂へやってきた。
緊張が走る。果たして…
 
「こんばんわ」
 
オバサンが挨拶してくる。
ここで声を出しては男だと気付かれてしまう。
「どうも」といった感じで軽く会釈をしてなんとか切り抜けた。
 
その頃、私は猛烈に気分が悪くなってきた。
そりゃそうだ。酔っている上にこんな長時間お風呂に入っていたらのぼせるのは当たり前だ。
私は一秒でも早くこのオバサンが上がってくれるようにひたすら天に向かって祈り続けた。
 
ようやくオバサンが上がった頃には既にフラフラ状態になっていた。
しかしこんなところで倒れては私の人生に「変態」という2文字がしっかりと刻まれてしまう為、なんとしても部屋まで無事にたどり着かなくてはならない。
天へ昇ろうとする意識を必死で地へ繋ぎとめながら体を拭いて服を着て、急いで浴室の入口のドアを開けて外へ…やったようやく解放された!!
 
するとなんと目の前には旅館の女将が…
 
さようなら私の人生。一瞬でこの世の終わりを悟ってしまった。
60代くらいの女将は首だけこちらを向けた変なポーズで目も口もかっ開いたまま時が停止している。
私も同様にものすごい顔をして時が停止していたに違いない。
時間にして3秒くらいだったと思うが、その間がとても長く感じられた。
沈黙を破り、女将がただ一言
 
「大丈夫ですか!?」
 
ご覧の通り、どう見ても大丈夫じゃない状況です。
きっと女将は「どうして女湯に入っていたのですか?」とか「覗きですか?」とか「変態ですか?」とか色々聞きたい事が一度に込み上げてきてパニックになり、その結果出てきた言葉が「大丈夫ですか!?」だったに違いない。
私は反射的に「あ、大丈夫です。」と言って、俯いたまま何事も無かったかのように部屋へ向かって早足で歩き出しました。
女将はまだパニック状態なのか特に追いかけて来ることもなく、その場で固まったままでした。
 
翌日、出発の際に女将に見送られたのだが、どうしても女将の方を向く事が出来ませんでした。
その出来事をみんなに話すと、私はみんなから神扱いされた。
 
私の脳裏にいつまでも「大丈夫ですか!?」と、何とも言えないあの固まった表情が焼き付いている。

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3 コメント

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神w (まみねぇ)
2013-04-17 14:17:17
一人で笑っちゃったよw
Re:まみねぇ (bobuji_drums)
2013-04-17 19:29:03
なかなかの貴重な体験だったよw
w (まみねぇ)
2013-04-20 07:46:27
そりゃそうだ(._.)髪の毛長くて良かったねぇw

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