サイレント

静かな夜の時間に・・・

始末屋(2)

2006-01-17 03:27:34 | Weblog



師匠「子供殺しの件だが・・・」
私「連続子供殺し事件?」
師匠「そうだ」
私「いま日本のあちこちで起こっている・・・」
師匠「・・・・・・」
私「一件一件は独立した・・・」
師匠「・・・・・・」
私「大人による連続した子供殺し?」
師匠「そうだ」

師匠が仕事の話を持ってきた。
いつものことなのだが、
詳しい説明などはあまりしない。
基本的には、自分で考えさせるのが師匠流だ。


私「あれって、単独犯?」
師匠「・・・・・・」
私「日本の各地で何人もの大人に憑依して・・・」
師匠「・・・・・・」
私「次々と子供を生け贄にしている者が・・・」
師匠「・・・・・・」
私「いるんですね?」
師匠「・・・・・・」

よくあることだ。
血の贄は、美味しい御馳走である上に、
貴重なエネルギー源となる。
ただし、
そういう行為は処分の対象となりうるが。

処分されるか否かは、
その時代の、そしてその地域における、
管理責任者の方針にもよるし、
実行犯と処分担当との力関係にもよる。
取り締まる側の手に余る犯人であれば、
実際問題として、放置されてしまう。


私「最近、急に増えたというか・・・」
師匠「・・・・・・」
私「矢継ぎ早に連発してるというか・・・」
師匠「・・・・・・」
私「妙だな、とは思ってましたが・・・」
師匠「・・・・・・」

静かな師匠。語る私。

私「本当に単独犯ですか?」
師匠「・・・・・・」
私「変な組織の末端とかじゃないでしょうね?」
師匠「・・・・・・」
私「調査も含めて私に一任ということですか?」
師匠「・・・・・・」


師匠は寡黙な人だ。
典型的な職人肌の仕事師タイプであり、
自分にも他人にも厳しい。
無論、私にも厳しい。

そう、私が子供の頃から、
これまでずっと師匠は私に厳しかった。

姿の見えない師匠の存在を知ったのは、
ほんの四年前のことだが、
私が生まれた時からひたすら私を見守って、
成長期、そして成人してからも、
師匠が私を陰ながら指導してきたことを、
私はあとから理解した。

そして、
これまでの自分の数十年を振り返ってみて、
師匠の私への指導方針が、
どれだけ厳しかったか、私は知った。


師匠「頼むぞ」
私「わかりました」

私はこの件を引き受けた。