ともちの小さなGLOBE

人生は一期一会のLong and winding road。小さな地球儀をめぐる日々をブログにしました。

ソニー再生 の読後感

2021-09-11 12:54:41 | 日常
平井一夫さんの「ソニー再生」を読み終えた。
Steve Jobs 1と2を読み終えたタイミングで、この本を凄く読みたくなったのは、「本を読むのはタイミングが大切」だと思ったからで、まさにその予想は的中し、良い刺激を受けることが出来た。


市場調査ばかりして製品を出すのではなく、自ら市場を作り出す…「マーケットクリエーション」の信念…
もし、ヘンリーフォードが車を世に出す時に、市場調査をしたならば、お客様のニーズは「もっと足が速い馬」だっただろう…
そして、お客様の声を無視するのではなく、お客様の期待値を圧倒的に超える「感動」を創り出せとしたSONYのDNAが、強いSONYを復活させる力だったと思う。

また、本書を通じて平井さんの半生を振り返った時、物凄く感じることは、人は縁により生かされていると言う事実。
そして、良い縁を繫ぐのが「素晴らしい世界を創ろう、お客様の為、社会の為」とする純粋な利他の【志し】であって、この意識を持つことで、周囲との「良い調和」が生まれ、平井さんの成功に繋がったと感じた次第。
確かに、平井さんは幼少期の頃から海外で生活し日本とは違った教育体系で情緒を育まれてきたとはいえ、英語脳であったことが成功に繋がったとは単純には考えるべきではないと思う。
英語が出来ることは本人の助けにはなったかもしれないが、そんな人間はどこにでも居る。しかし、最も大切なのは人間力でありセンスに他ならない。
このセンスが周囲との良い調和を生み良縁を紡ぐことが出来たのではないかと感じた。

一方、人員削減と言う、経営者として最も苦しい決断をする場面は、当事者でないと理解できない事態だが、逃げずに行ったことは自身の【志し】に沿った、ぶれない行動だったのかと心中察した次第…

また、本書を読んで、プレーステーションの父と言われる久夛良木さんは、Steve Jobs に非常に似たセンスを持った方だと強く感じた。
SONY・東芝・IBMの3社連合で開発された次世代半導体「Cell」の圧倒的な能力を、まずプレイステーション3につぎ込み、テレビや家電に広げていくデジタルシフトを実現する戦略は、凄い野心的アイデアだったと思うし、個人的には絶対に実現して欲しかった。
これは、Steve Jobs がAppleで取った、ハードウエアとソフトウエアをエンドツーエンドで統合する垂直モデルの世界であり、シームレスでシンプルなユーザー体験を目指す、クローズドな統合システムの実現に他ならない…
パソコン以上にゲーム機が普及している現実を踏まえ、家庭内のデジタルハブとしてプレイステーションを機能させると言う戦略はSONY以外描けることも実現する事も出来なかったろうし、それも夢のプロセッサーであるCellがあったればこその話だ…
事実Cellの上位バージョンのプロセッサを多数組み込んだスーパーコンピュータを後にIBMが開発しスパコンの世界トップランキングを2年間に渡り獲得している。
プレイステーション3を「家庭のスーパーコンピュータ」とするビジョンを久夛良木さんは持っていた訳だが、残念なのはプレイステーションと言う世界が、ゲーム機の世界から抜け出せなかったことだ…
一方、CellがVAIOに搭載されていたらどうだったんだろうか?
傍観者としてそんな思いにも駆られた…

しかし、苦渋の決断の中、プレイステーション3はゲーム機であると定義して、その幕引きをしたのは平井さんである訳だし、日の丸半プロセッサの夢がついえたのは残念でならない…

また、本書に紹介されているように、現在SONYは全事業分社としてソニーグループ株式会社となっているが、横の繋がりはどうなのだろうか?
Appleが統合システムを維持できているのは、各部門が密接に繋がっているからに他ならない訳で、はたしてソニーグループ(株)から、シームレスなユーザー体験ができるプロダクトを生み出し続けていくことが出来るだろうかと言う、一抹の不安も感じたのも事実だ。

最後に、本書を読み終える最終ページにある「おわりに」に書かれた文章に、心温まる嬉しい一言があった…
この本から得られる報酬全てが、貧困率13.5%と言われる日本の子供たちの貧困対策に充てられることだ。
久しぶりに温かい読後感を得ることが出来た。

多くの気付きも得て、Appleとの対比も行いながら読んだ本書は、自分に対して非常に良い刺激を与えてくれた書籍だった。



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