★WCS：ワールド座標系とUCS：ユーザー座標系

AutoCADの世界を形作る根本のWCS
　　ユーザーが自分で設定できるUCS

AutoCADには、大別して2つの座標系があります。1 つは図面の左下隅の基点（0,0）を中心に 水平なX軸・垂直なY軸・XY平面に対して垂直なZ軸からなる固定座標系・ワールド座標系(WCS)。もうひとつは、ユーザーが自分で原点の位置や傾きをきめられるユーザ座標系(UCS)です。UCSは「WCSを、Z軸方向に○°回転してX軸方向に△、Y軸方向に×移動した座標系」というふうにWCSと関連づけて定義されます。新規図面を開いたとき、デフォルトで一番最初に現れる座標系は「WCSを移動ナシで使うUCS」であり、実際にはすべての入力は【現在のUCS】を用いて行われているのです。

UCSを定義するときに比較的よく使うと思われるやりかたを説明します。

コマンド: UCS
現在の UCS 名: *ワールド*
オプションを入力


移動(M)
X,Y,Z軸の方向は現在のUCSのまま、原点だけを移動します。LTを使用してオブジェクトに「厚み」を持たせながら3Dで作画していったり、エクセルに入力した座標からポリラインを描画・AutoCAD上の断面図から座標を取得する場合などに、なくてはならない処理です。

直行投影(G)
平面・下面・正面・背面・左側面・右側面、AutoCADに内蔵されているUCSの中からひとつを選びます。

直前(P)・呼び出し(R)・登録(S)・削除(D)・一覧(?)
設定したUCSは任意の名前をつけて登録できます。また、登録したUCSはいつでも名前を指定して呼び出すことができ（UCSⅡのツールバーならコンボボックスで変更可）、直前オプションを利用するといつでも、一つ前に使っていたUCSに戻ることができます。いらなくなったUCSは削除オプションで削除することも可能。一覧オプションは、コマンドライン上ですでに登録してあるUCSのリストを見たい場合に使います。

ワールド(W)
UCSをAutoCAD固定座標系のワールド座標系にもどします。

※直行投影を含むUCSの呼び出しや削除、一覧はUCSMAN（UCS管理）コマンドを使うとダイアログを見ながら処理することができます。

作成
座標系を定義します。

コマンド: UCS
現在の UCS 名: *ワールド*
オプションを入力 [作成(N)/移動(M)/直交投影(G)/直前(P)/呼び出し(R)/登録(S)/削除(D)/一覧(?)/ワールド(W)] <ワールド>:


通常、ここでNを指定すると新しいUCSを定義するためのオプションが現れるのですがNを入力せずに直接以下のオプションを入力することでも同じ結果が得られます。

Z 軸ベクトル(ZA)：原点と、新しく設定するZ軸上の一点を現在の座標系で指示

3点(3)：新しい座標系の原点とX軸・Y軸上の任意の点をそれぞれ一点マウスで指示してやることによって、新しい座標系を定義。

オブジェクト(OB)：オブジェクトを指定してその傾きにUCSをあわせます。マクロなどでもよく使われ、おそらくもっとも使用頻度が高いオプション。ただし、3Dポリライン・ビューポート・リージョン・スプライン・楕円・構築線・引出線・マルチテキストは、位置あわせに使用することができません。

面(F)：3Dソリッドの面にUCSをあわせます。

X/Y/Z：現在のUCSを、指定した軸を中心にしてUCSを回転させます。プラス方向とマイナス方向の決定には、右手の法則を使います。親指を立てて右手を握り、親指の先端を軸のプラス方向に見立てたとき、残りの4本の指が閉じている方向がプラス、開く方向がマイナスになります。2次元の図面を描く場合なら、Z軸を中心にしてUCSを回転させることが多いと思います。


頻繁にUCSを利用する業界といえば測量座標系を使う土木業界だと思いますが、それ以外でAutoCADを使用される方も、使いようによってUCSは非常に便利で作図時間の大幅な短縮につながることも少なくありません。
たとえば

★斜めになった矩形を書きたいとき。
★いろいろな角度で描かれた線分上に文字を描いていきたい！
★画面に対して傾いた地形図をよそからもらった！
★任意の線に平行になるようオブジェクトを回転コピーしたい！

場合などにはUCSは非常に有効です。特に私はCtrl+Shift+WをUCS->オブジェクトに、Ctrl+WをUCS->ワールドに割り付けているので、かなりスムーズにUCSを使うことができます。右手にマウス、左手はキーボードというポジションの人にはかなりおすすめでくる方法です。ひとつずつ説明していきますので、使用したことのないひとはぜひ挑戦してみてください。

【検索キー】
WCS/UCS/ワールド/ユーザー座標/座標系/