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SOFTVINYL TOYS 

黄金街

2005-04-07 22:11:33 | Weblog
「黄金街」の名前とは裏腹に、その一角はまるで安っぽいテレビドラマの
古びたセットのようだった。
バブル経済時にはマッチ箱のようなウワモノがのっかった、猫の額ほどの土地に
何億という値がつけられて土地ころがしの対象になった。
しかし、実際の街の様子といえば猛烈な土地ころがしの回転についていけず、
はじきだされた人々が、どんどん商売をたたんで出て行ってしまったため
「黄金街(ゴールデンタウン)」どころか、
「幽霊街(ゴーストタウン)」になってしまったのである。
人間が去ると、代わりに「怪なる存在(モノ)達」が棲みついた。
次に「怪なる存在(モノ)達」と共存できる人間達が、
ぽつり、ぽつりと街に戻りはじめた。
ほとんどが闇に包まれた黄金街の中心近くに、築40年は経っていそうな、
かろうじて自立している一軒の小さな木造モルタルの家があった。
ありふれてはいるが他の建物と決定的に違うところ、
それはその家の半開きのドアから、頼りなくも優しく誘いかけるような
オレンジ色の光が漏れていることである。光には人間を吸い寄せる力がある。
「怪なる存在(モノ)」は暗闇を棲みかとするが
人間は本能的に光を目指してしまう習性がある。

半開きのドアの上に小さな看板が出ている。「BAR 妖子(ようこ)」
どうもここでは酒を飲ませてくれるらしい。
しかし「妖子」という名がひっかかる。人間に擬態した妖怪が光と酒で、
人間にオイデオイデしているのかもしれない。

KABUKI-CHO

2005-04-07 03:30:46 | Weblog
妖怪、怪物、怪獣。怪と名の付く存在(モノ)達が
その街を目指してやってくるのは
その街にそれらを吸い寄せる特別で強力な磁場があるからだ。
ありとあらゆる怪怪奇奇としたものたち、魑魅魍魎、KABUKI-MONO・・・。
それらの存在が、その街の磁場に吸い寄せられ、彷徨い、棲みつき、
増えていった。それらの何千、何万という怪なる存在(モノ)達が
磁気を帯び、磁場が相乗的に強化されていった。
磁場が強化されると、さらにその街は怪なる存在(モノ)達を呼び寄せた。
いつしかその街は「怪なる存在(モノ)達の一大コロニー」となっていた。
その街に足を踏み入れたときにふと感じる、あの何とも言えない感じは
それら怪なる存在(モノ)達の気配を、本能的に感じ取っているからなのである。
カビ臭く生暖かい風が噴出す通気口に、暗く湿った厨房の排水溝に
屋上に取り付けられたネオンの裏側に、雑居ビル階段踊り場鉄扉の向こう側に。
怪なる存在(モノ)達はあなたの目に見えなくとも、確かに存在しているのである。

何が起こっても、不思議はない街であった。
しかし、その一瞬の閃光は、その街のネオンや喧噪とは
明らかに異質なものであった。
100万ボルトの電気の刀で、バッサリと空間を切り裂いたかのような閃光。
表通りの明るさとはうってかわって、一歩裏通りへ入ると
小さなブラックホールのような場所が、その街にはある。
その明暗のコントラストに一瞬めまいをおぼえ、暗闇に目が慣れるまで、
しばし時間を要するほどの黒いエアポケットだ。
そんな路地裏のエアポケットに、(正確には地上げ後の時間貸し駐車場だが)
一瞬閃光が走ったとしても、誰が振り向くであろうか?
黒いエアポケットを好んですみかとする名もない小さな妖怪達が
自分達のなわばりを荒らされまいと、身構え、ざわめく程度である。
閃光は一瞬で消えたが、暗闇に立ちつくす不気味なシルエットが
残像のように残って、いつまでもそれは消えることがなかった。
しかしそれは、残像ではなかった。新たな怪なる存在(モノ)が、
磁場を切り裂きこの街にやってきたのであった。
この街のどんな怪なる存在(モノ)達とは似ても似つかない姿。
名はミュータント・イービル。
その名のもとに語られる恐怖の都市伝説が、その後この街の隅々に
知れ渡ることになろうとは・・・。