国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

昭和57年国有鉄道に関する小委員会から。第3話

2014-08-09 23:21:14 | 国鉄関連_国会審議
こんばんは、昨日も多数の方に訪問頂き、かつご覧いただき誠にありがとうございます。
まだまだ未熟なサイトではございますが、今日も昭和57年の国会議事録からご覧頂きたいと思います。
このパートでは、臨調答申に基づき、特定地方交通線の協議について話が始められるのですが、その実協議会が殆ど開催されていない点について説明していますが、ここで見え隠れするのが廃止対象路線を通過する沿線自治体の足並みが揃わないことへの苦言が述べられています。
 また、人員削減の難しさ、特に人件費については退職者不補充で自然減を図れるとしても年金負担が大きくのしかかってきて経営を圧迫すると言ったことが述べられています。



○越智委員長 高木参考人、野田参考人、退席していただいて結構でございます。御苦労さまでした。
 中馬弘毅君。
○中馬委員 大臣の所信表明に対する質問をさせていただきます。
 運輸大臣は、今回の所信表明の重点事項の第一として、国有鉄道の再建の問題を挙げておられます。大臣が、はからずもか、買って出られたか、それはともかくといたしまして、非常に重要な役割りを担う時期の運輸大臣に就任されたわけでございまして、これは国鉄の再建が本当に重大な岐路に立っているさなかでもございます。その中での判断というのが非常に重要なことになってこようかと存じます。
 午前中に宮崎委員の質問で高木総裁は、いま臨調で問題になっているいろいろなことについては、一応そのことには気をとられずに、例の国鉄再建、経営再建計画に向かって邁進するんだという御決意を述べておられました。しかし、一方、いま世間では、この国鉄に対してのいろいろな再建方策、民営化論だとかあるいは分割論だとかあるいはそのまま経営形態を少し変えていくのだとか、いろいろな提案、意見も出てきております。また一方、鈴木総理は、この臨調の答申を尊重して、そして行政改革に政治生命をかけるとおっしゃっております。
 大臣はこういったことに対して、国鉄のいまのあり方、そして来るべき臨調の答申をどのように尊重されるのか、その点についてまず御所見を伺いたいと思います。
○小坂国務大臣 しばしば申し上げておるように、国鉄の問題はきわめて危機的な状態であるということは御承知のとおりでありますが、これに対応いたしまして、昨年の五月に決定されました経営改善計画、これをともかくまともに実践してまいりたい。できればその深度を深めてまいりたい。そして六十年度においては、幹線部門においてぜひ収支とんとんまで持っていこうということを、実際の国鉄の運営の基本として現在私は考えております。
 また、一方、臨調におきましてもいろいろの案があるやに承っておりますが、まだ正式には何の話も聞いておりません。新聞紙上で拝見いたします民営論あるいは分割論というものも出ておることは承知しておりますが、しかし、私は、現時点においてそうした問題に入る以前の問題として、先ほども御質問がございましたが、年金の問題あるいは退職金の問題、さらにはまた国鉄内部に内蔵する諸種の問題、こうした問題の解決が先行すべきである。それは、やはり経営改善計画のプログラムをさらに深めて、実際的な効果の上がるように指導していくのが適切ではないか、私はそう思っております。
○中馬委員 私ども、国鉄総裁が経営者としての当事者能力を持ってもらいたいということから、それに関連する事業拡大の法律、また今回の再建法に対しましても非常に積極的に対応してきたものでございます。
 したがいまして、それが効果が出てくるのであれば、もちろんその形で推し進めてもらいたいというのが正直な気持ちなんでございますけれども、しかし、現実の姿というのはなかなかそこに行ってないわけで、そうしますと、いま大臣がおっしゃったのは、これは国鉄総裁がおっしゃっていることと一緒であるわけです。一緒であることが悪いとは言っておりませんが、しかし、国民の負託にこたえて国鉄というものを管理監督するのが運輸大臣の役目でございますから、そうしますと、臨調の答申、これは今後どういうのが出てくるかわかりませんけれども、しかし、それに対して一顧だにしないということであれば、これこそまた鈴木内閣の一員として、別のところでは鈴木さんが、国鉄のいろいろな改革も含めて、これに政治生命をかけていくとおっしゃっているのと矛盾するではございませんか。大臣の御所見を承ります。
○小坂国務大臣 私は、別に臨調の答申に対して、いまこの時点でとやかく論評をする何物もないのでありますから、臨調の答申が出ました時点で――それかいつ出るかも私は予測しておりませんけれども、出た時点でそれをよく見ていくということしかないのではないかと思っております。
○中馬委員 それはそれといたしましょうか。
 高木総裁にお尋ねいたしますけれども、先ほど、経営改善計画を一生懸命やっていくということでございますが、しかし、その中の一つであります地方交通線対策協議会、四十線のうち三十六線区の協議会を発足するんだという、これは法律で決まっていることなんですけれども、これもまだ開かれておりません。ということは、これをやるとおっしゃっても、現実の問題として国民の目からすると、ひとつも進んでいないじゃないかということになるわけでございまして、この点についてはいかがですか。
○高木説明員 お尋ねにお答えする前にちょっと申し上げておきたいと思いますが、私どもは、臨時行政調査会の第四部会というところに何回かお呼び出しがありまして、御質問にお答えをするという形で御説明をいたしておりますが、そこでの内容は、経営改善計画そのものが実行できないではないか、大丈夫なのかということの疑念が基本にあるということかと思います。
 それは、何しろ昨年の五月に正規には御承認いただいたわけでございますし、外からごらんになりますといろいろ御批判もありましょうけれども、かなり短い期間に七万四千人という大幅な要員減をやるということは、相当骨の折れる仕事だと私どもとしては思っておるわけでございますが、一万一千人は五十五年度中に要員を減らすことができまして、したがって五十六年度では一万一千人予算上も減員になっているわけです。五十六年につきましては、いまそれにまさに取り組んでおるところでございまして、年度末まであともう四十日ぐらいしかないわけですが、その間に全部いろいろまとめ上げて一万二千人減らして、来年の五十七年度の予算定員を四十万以下にするということでいま取り組んでおります。
 これに取り組むことができれば、かなり私どものいまやらんとしていることに対するいろいろな疑心の目といいますか、本当にできるのかなということについての信頼が置けないという点が、ある程度御理解を進めていくことができるのじゃないかと思うわけですが、その際、地方交通線の問題につきましていまお触れになりましたように、協議会がなかなか進行しないということはあるわけでございますが、しかし、現実には、全体の中でいま非常におくれております一つの大きな理由は、線区数の多い北海道と九州、特に福岡県に問題があって、どうしてもお互いに同じ県内では隣の村、隣の町、隣の線区はどうなるのだろうかということで、横にらみということになるものですから、北海道も九州もどちらもなかなか進みにくいわけでございますが、これがある程度進行すればかなりのところまではいくのではないか。法案審議のときにさんざん詳しく御審議いただいた部分が相当進め得るのではないか。これらにつきましては、北海道及び福岡県そして関係市町村に粘り強くいまお願いを続けておるわけでございまして、何とか三月いっぱいにはお願いしなければならぬというつもりでおります。
 この点も、全体としては経営改善計画の中で非常に重要なウエートを占めておるわけでございますから、何とか達成しなければならぬわけでございます。また、その意気込みでやっておるわけでございまして、先ほどの要員減の問題と同じように、これをどこまで推し進め得るか、そして地方の関係の方々に御理解いただけることになるかということがいま大事なことだと考えているわけでございまして、確かに予定よりは大分おくれておりますが、しかし、これはそうかといって、法案審議の段階でいろいろ御議論がありましたように、地域に及ぼす影響は大きいわけでございますから、地元の方が御心配になるのもある意味では無理もない点があるわけでございまして、私どもとしては、ぜひぜひ説得に説得を重ねて御参加までこぎつけたいということでいまやっている最中でございます。
○中馬委員 その協議会が現実に開かれないわけでございますが、法律にあるように、開かれない場合の規定があったかどうかはともかくといたしまして、これは見切り発車をされるわけですか。
○高木説明員 協議会そのものは、もうすでに法律で設置できることになっておるわけでして、御参加がなくてもやってやれないことはないシステムになっておりますけれども、どうもスタートでそういう形でつまずきますとなかなか後々紛糾するわけでございますし、いままでも実は水面下といいますか、公式には協議会、わかった、参加しようとは言っていただけておりませんけれども、この三カ月余りの間には、実は協議会の希望予定日というものが決まりました十一月初めの段階と今日では、各線区につきましてもかなり内容的には事実上の話し合いといいますか、御説明は進んでいるわけでございますので、いまここで余りそういう一方実施みたいなことは何とか避けなくてはならぬという気持ちでやっております
○中馬委員 法律では見切り発車でもできる形ではありましょうけれども、それはやはり地元の方々との協議がまずは第一でございますし、しかし一方で、このままでいくと結局は、臨調がどういう答申を出すかは別といたしまして、民営化で本当に民営になってしまったらそういうところは切り捨ててしまわれるということも踏まえて、地元の方々の御理解を極力得るようにしていただきたい、このように思う次第でございます。
 それから、人員の削減の話が出ておりましたけれども、確かに総裁以下皆さん方の御努力はよくわかるのです。一万二千人減らした、しかし一万二千というのは全体の三%なんですね。三%減らすことも大変なことだと思います。しかし、三%減らしながら、一方でそれ以上の賃上げをしておれば経営は改善しないというのは、これはもう単純な算術でございます。普通の赤字会社であるならば、世間並みの賃金というのは許されないんじゃなかろうか、組合の方も一生懸命やっておられる方々、たくさんいらっしゃいますけれども、しかしその経営のあり方として、三%切るほどの努力をしておられる、しかし一方でそれ以上の賃上げをするようなのが果たして世間並みなのか。そういうのは世間では常識としては通らないわけでございまして、その結果として実際に五十七年度予算でも、すでにまた五十六年度を上回る赤字が積み重なる形になっているわけですね。こういう点、われわれには努力しておられる姿はわかるのですけれども、しかし、評価というのは世間がするものでございまして、その世間、国民一般が、どうも国鉄はやっていない、実際に数字にもあらわれていないとなりますと、そのふんまん、あるいはまた一挙にやってしまえといった声が上がってくるんじゃないでしょうか。総裁、どのようにお考えですか。
○高木説明員 ただいま御指摘の問題は、私ども経営にとりまして非常に重要な要素になっております。
 御存じのように、現在の制度はストは禁止をされておる、そのかわり給与については御存じのような調停なり仲裁ということを通じて、最終的には国会の議決もしくは承認ということで決められることになっておるわけでございますが、この賃金の決め方については、久しく民間準拠ということで事実上十何年も続いてきております。その場合に、民間準拠というのは給与総額についてではなくて、給与水準についての民間準拠ということで今日まで参りましたので、したがって、民間の場合はいろいろ給与水準の上昇と絡めながらいわゆる減量経営がかなり進んできたわけでございますが、どうも国鉄の場合は、過去さかのぼってまいりますと、単価はそういうかっこうで上がりますけれども、給与総額はなかなか民間と同じようなわけにはいかないような形が出てきたわけでございます。
 そこで、いま減量のために取り組んでおるわけでございますが、ただいまお示しのように、人数は三%じゃないか、ところが単価はもっと上がるじゃないかという御指摘でございますけれども、幸か不幸か、いま非常に大ぜい高齢者がおります。高齢者というのは、ある意味から言うと高給者であるわけでございまして、人員の減によりますほかに、新陳代謝による平均給与が漸次低目になるということが加わりまして、五十六年度の予算といま御審議いただいております五十七年度予算とを比較いたしましても、人件費はほとんどふえないというかっこうになっております。
 しかるにかかわらず、全体として赤字がどうしてふえるかというと、五十六年と五十七年とを比べましても相変わらず年金負担が急増する。総額としての年金が大変国鉄の経営負担になるというのじゃなくて、単年度の年金負担額の上がり方が非常に激しいわけでございますし、退職金もいろいろな関係で、というのは主として人数と単価の関係でふえるということで、五十七年度では国鉄の退職金と共済金負担の総額が実に九千億にもなるわけでございます。現職の諸君に払わなければならない給与費が一兆四、五千億、あるいは五千億をちょっと超えるかもしれません。ところが、退職金と年金だけで九千億というような事態であるわけでございまして、これは特定退職金、特定年金負担でなくて総額でございますけれども、そういう大きな金額になるわけでございます。その辺の御理解を得られれば、国民の皆様にもある程度の御理解が進むのではないかと思うのでございますが、どうもわれわれの説明が下手であるのか、なかなかそこがわかっていただけないというのが悩みでございます。
 いずれにしましても、最近、五十六年を五十五年と比べていただき、五十七年を五十六年と比べていただきますと、全体としての赤字額はふえますけれども、経常的な人件費はほとんどふえないという形になっておるわけでございまして、そこらを数字的によく御説明するようにして御理解を深めてまいりたいと考えておるわけでございます。

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