わたしと家族の日々

夫と息子(高3)と私の三人暮らし。
子育ても、いよいよ終盤です。

『チャイルドヘルプと歩んで』

2024-06-07 | 
最近読んだ本で心に残った本、その2。

★『チャイルドヘルプと歩んで』廣川まさき
 
アメリカ、アリゾナ州フェニックス市にある
チルドレンズ・アドヴォカシー・センター。

被虐待児を保護した直後に必要な対応を
ワンストップで
全部まとめて担う組織です。

民間の児童救済機関チャイルドヘルプ、
州の児童保護機関、
フェニックス市警(児童犯罪捜査部の
一部隊がまるまる入っている)、検察、
FBI(児童虐待が性的搾取や
強制労働などの国際的犯罪と
つながることがあるため)、
医師、心理療法士…

24時間、年中無休です。
いつでも被虐待児を保護できるように。

虐待が通報されれば
すぐに警察が動き、
虐待児童を保護、
センターに連れてきます。

そして間髪入れず虐待の証拠を確保する。

診察室で傷やレイプの検査を行い、
着ていた服は証拠として保管し、
子どもの身体をきれいに洗って
新しい服を着せたあと、
フォレンジック・インタビューを行い
証言を得る。

その間に刑事は緊急出動して
家で証拠を押さえる。

州の児童安全局が
子どもの緊急保護にあたり、
一時保護施設に子どもを導く。
子どもは、そこで過ごしながら
心理的なケアを受ける。
その間、ソーシャルワーカーが
保護後の子どもの養育先を検討する。

予防的な役割を担う
児童虐待のホットラインも
この施設の中にある。

こうした児童虐待に関して必要なことが
幅広く、このセンターに集約されている。


・・・なんて心強い!!
こんな施設が
日本にもあったら良いのに!


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圧巻だったのは、
冒頭に書かれている
「フォレンジック・インタビュー」の様子です。

「フォレンジック・インタビュー」は、
保護から24時間以内に行われる
証言の聞き取り。
専門のインタビュアーが行います。

インタビューは細心の注意を払って一度だけ。

「記憶の汚染」がなされる前に
必要事項を漏らさず聞き取る
重要な役割です。


当然、実際の現場に立ち入ることは出来ないので、
この本では、
著者が被虐待児役(父親からの
身体的・性的虐待を受けた6歳女児)になった
模擬インタビューの様子が記されています。

模擬とはいえ、
その場に居合わせたような気持になり
心がヒリヒリと痛むものでした。

傷ついた子どもを
これ以上傷つけないよう
細心の注意を払いながら、
子どもの証言を
可能な限り最大限に確保する。

子どもを傷つけた大人に
証拠を突きつけ
責任を取らせるために。

そのためのインタビューが
どのように行われているか、
一端でも知ることができて良かった。


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フェニックス市は
アメリカで最も児童虐待の深刻な場所
だったそうです。

ここにチルドレンズ・アドヴォカシー・センターが
設立されたのは20年前。

このセンターのおかげで、
今や「アメリカにおける児童救済の手本」
と言われるほどに虐待件数が減っているそうです。

そして今では
チルドレンズ・アドヴォカシー・センターは
全米に設立されいるということです。
(全米への普及にはFBIが積極的に
動いたらしいのですが、
それだけ家庭内暴力と国際犯罪が
密接につながっている
ということなんでしょうね…)

こういうセンターが
先行事例としてアメリカにあり、
着実に実績を作っているということは、
これから整備をして行く必要がある
日本にとっても
ひとつの希望の光なのではないかと思いました。
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『「国境なき医師団」になろう!』

2024-06-02 | 
最近読んだ本の中で
特に心に残った本を記録しておきます。


★『「国境なき医師団」になろう!』 いとうせいこう

いとうせいこうと言えば、なんといっても「見仏記」。
みうらじゅんのイメージに引っ張られ、
「いとうせいこう」と「国境なき医師団」とのつながりが
とても意外に感じられ、手に取ったのですが
これは本当に読んで良かった!

「国境なき医師団(MSF)」の
医師や看護師にスポットを当てた記事は
何かと見る機会が多いのですが、
これの本はむしろノンメディカル、
つまり
ロジスティシャン(インフラ整備、安全管理など)、
アドミニストレーター(経理、人事)、
プロジェクト責任者、証言活動、
水・衛生管理、建築…等々の
役割を担う人々に焦点を当てています。

たしかに、紛争地や災害地に
医師と薬だけポンと送り込んでも
医療活動はできませんから、
絶対に必要な、重要な仕事です。

知らなかったことばかりです。
「知らない人代表」として取材をし、
現地に行き、それを文章にしてくださった
いとうさんに感謝したい。
それぞれのストーリーが
どれも実に生き生きとしていて
興味深かった。

人材として協力するのは無理としても、
せめて寄付をしたい、
と思いました。

毎年少しずつの寄付もいいけれど、
遺産の贈与も魅力的。
頭に入れておこう。
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