テキサスのカントリー・チャートで今年に入って、"Honky Tonk in Heaven"と"Plainview"の2曲を立て続けにチャート入りさせて気を吐いているカントリー・バンドを取り上げたいと思います。わが国で常識的(?)な暮らしをしていたら、お耳にかかる事などまずない類の音楽でしょうね。この「Honky Tonk in Heaven」は7曲程度収録のファースト・アルバム、特にカントリー・ミディアムの"Plainview"の美しさと素晴らしい歌声にくぎ付けになりました。
素晴らしいシンガー、リコ・ゴンザレス
彼らは、今はテキサス州サン・アントニオを拠点に活動するテキサス/レッド・ダート系のカントリー・バンド。チャーリー・ダニエルズ、アラバマやレストレス・ハート("When She Cries" 懐かしい・・・)らの影響下にある、熟練したフィドルやボーカル・ハーモニーに定評があります。元々出身はイリノイ州のLapeerでしたが、2018年のセルフ・タイトルのEPでにわかに注目を集め、アメリカ中西部からテキサスを精力的にツアー活動でまわりました。そして温かく迎えてくれたテキサスに拠点を移したのです。今ではその地で著名なライブ会場であるGruene HallやLuckenbackにも多くの出演機会を持つようになりました。
EP「Kin Faux」収録の方とは録音が違うようです
2018年のEP「Kin Faux」は、プロデューサーに往年の名カントリー・バンドであるソーヤー・ブラウン Sawyer Browの創立メンバーで、90年代にメインストリームでヒット("Jesus and Mama"等)を飛ばしたコンフェデレイト・レイルロード Confederate Railroadに在籍した(2011~17年の期間)事もあるボビー・ランドールBobby Randallがプロデュースしたナッシュビル録音でした。対してこの 「Honky Tonk in Heaven」のプロデューサーは、何と今のCMA(カントリー音楽協会)のプレジデントであり、メインストリーム界で活躍するソングライターのジム・ビーヴァースJim Beaversがクレジットされてるので、録音は同じくナッシュビルと思われます。また、こちらもかつてメインストリームでヒットを飛ばしたソングライターのバーニー・ネルソン(ケニー・チェズニー、ランディ・トラビス等)が前作EPと同様楽曲を提供しています。
オープニングの"Look Up in Lubbock"からフィドルが雄叫びをあげ、本場のカントリー・バーの雰囲気たっぷりのホンキー・トンクでご機嫌です。゛今゛の音として聴ける事に感激します。すでにヒットした"Honky Tonk in Heaven"は、より前のめりになる骨太なリズム・ナンバーで、確かにチャーリー・ダニエルズの後継と感じさせてくれます。とにかくこのバンドのポイントはボーカルとフィドルを担当するリコ・ゴンザレスRico Gonzalezの歌声。ハスキーなしわがれ声、という程度の表現では捉えきれない実力と親しみやすい表現力を感じてしまいました。それを最も堪能できるのが、やはりミディアム・スローの"Plainview"。コチラもリコによるイントロのフィドルも情感たっぷりで、バーニー・ネルソンの曲作りのうまさも光ります。90年代はこの類のいい曲が沢山有ったのです・・・なお、Plainviewとはテキサス州の街の名前です。
そんな中で少し意表をつかれたのが、"Cherokee County"。ピアノでしっとり始まるモダンなスロー・バラードなのです。こちらはプロデューサーのジム・ビーバースの作。リコはキーボードもプレイするマルチ・プレイヤーであり、もともとイリノイ州という北部出身なので結構ポップな体質(やはりスペイン系?)も持っているのかもしれません。泣きのファルセットを聴かせるところとか、地方アーティストにとどまらせるには勿体ない艶やかな一般性もあると思います。ラストのシャッフル"Wild Horses"でイイ声のシンガーがデュエットしていますが、こちらも90年代にMcBride &the Rideで人気のあったテリー・マクブライド。テリーも最近テキサスでヒットを飛ばしています。
ということでここ最近、90年代カントリーの香りが濃厚に漂うテキサスのカントリーにも親しんでいることから、珍しいアーティストに触れさせていただきました。
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