ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Chris Isaak クリス・アイザック - Mr. Lucky

2009-06-21 | カントリー(男性)
 カリフォルニアのレトロなロカビリアン、クリス・アイザック Chris Isaak。たっぷりとしたエコーを響かせたロイ・オービソンのロカビリーや、50年代サン・レコードのカントリーを愛する彼の音楽は、カントリー・ミュージック・ファンにも十分心地よく響く資質を持っていると思います。そのサウンドと、ベルベットのように艶やかで男の色気をにおわせるテナー・ボイスは、ドワイト・ヨーカムDwight Yoakamに通じるものも感じます。俳優業やテレビ出演もこなすマルチ・タレントであるクリスの、新しくスタートしたTVショーとのコラボレーションとしてリリースされたという、この7年ぶりのオリジナル・アルバム、なかなかの秀作であります。そして、何とトリーシャ・イヤーウッド Trisha Yearwoodが素晴らしい歌声を聴かせてくれている事でも、カントリー・ファンには注目です。

      


 すこぶる出色の作品は、50年代調のメロウなロカビリー・サウンドに最新のテクノロジーによって奥行きを加味した"Baby Baby"。陰影に富んだギターのエコーが良い雰囲気で、クリスの深みあるテナー・ボイスとしっとり絡みます。同系統の作品で、サウンドがより軽快になりドワイト・ヨーカム的になってくるのが、"I Lose My Heart"。ここではレッカーズ(The Wreckers)のミシェル・ブランチがデュエットしていますよ。そしてトリーシャがデュエットした素晴らしいバラード"Breaking Apart"。今の時代、十分”カントリー・バラード”として捉えて全く差し支えないでしょう。美しくシンプルなメロディを持つこの小品で、澄み切ったトリーシャの歌声がクリスとの対比で際立ちます。音の肌触りがナッシュビルに比べると簡素(ストリングスもキーボードでやってるしょう)なところがさり気なくて、これはこれでナイス。これら3曲は、是非カントリー・ファンに聴いてもらいたいですね。小粒ですが、"We've Got Tomorrow"も、ホーン・セクションを入れるなど目先を変えつつも、曲調は結構クラシック・カントリー。レイ・プライスが歌いそうな雰囲気です。ここでは、クリスの伸びのある意気のいいハイトーン・ボイスが楽しめます。全曲自身の自作で、フックのあるコンサバなメロディ作りの上手さが、いい形で堪能できる作品群です。

 ロック卒業組のカントリー・ファン(である私のような人間)には、"Cheater's Town"が結構ハマるかも(私はハマりました)。歌い手の心の微妙な動きを代弁してるかのような、シュールで鈍く響き渡るリード・ギターが曲のカラーを支配する印象的なミディアム曲。クリスの歌声も曲が進むにつれてエモーショナルに熱を込めていきます。エモーショナルといえば、エルビス・プレスリー流のブルージーな熱唱と曲調で迫るのが"Big Wide Wonderful World"。アルバムのハイライトの一つと言える、ホワイト・ブルース・ナンバーです。

      

 1956年、カリフォルニアはStockton生まれ。大学を卒業後、ロカビリー・バンド Silvertoneを結成、現在までクリスをサポートし続けることになります。1985年のそのバンド名を冠したデビューアルバム「Silvertone」をワーナー・ブラザーズからリリース。売れませんでしたが、批評家筋からは好評を得ます。2年後にセカンド「Chris Isaak」をリリースしてビルボードのトップ200にようやくチャートイン。この頃から、俳優業にも手を染めるようになっていきます。1989年に「Heart Shaped World」をリリース、当初は前作よりは売れましたが、ブレイク!というほどではありませんでした。ところがシングルの"Wicked Game"がデヴィッド・リンチ監督、ニコラス・ケイジ主演の映画「ワイルド・アット・ハート」に使用された事で俄然注目を浴び、シングル、アルバムともにトップ10のブレイクを果たしたのです。その後の90年代半ばはコンスタントにヒット・レコードをリリースし続けますが、それも後半からはツアーや俳優業が多忙になり、レコーディングから遠ざかっていくことに。しかし、2002年に「Always Got Tonight」、2004年にはクリスマス・アルバムをリリースするなど、音楽制作をけして絶やすことはありませんでした。

 ●トリーシャとのデュエットしたライブが見れるChris IsaakのMySpaceサイトはコチラ

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