ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

トーマス・レット Thomas Rhett - Country Again: Side A ~゛カントリー゛の捉え方や「Side B」のこと~

2021-05-08 | Thomas Rhett トーマス・レット レビューまとめ

★2022年の「Where We Started」を取り上げました

 

今年に入り、昨年CMAアワードのエンターテイナー賞を獲得した

エリック・チャーチや、残念ながらNワードで謹慎中のモーガン・

ウォレンが、新型コロナで失われたライブの機会をリカバーすべく、

充実したマルチ・アルバムをリリースしていますが、さらにこの

ーマス・レットもそれに続きました。本作のタイトルに付けられた

「Side A」は見せかけでなく、今年の年末に続編「Side B」を計画

しているのです。トーマスといえば、モダンなR&Bのスタイルも

ふんだんに取り入れたポップな音楽が特徴でしたが、本作はそれを

期待すると肩透かしをくらうほど、穏やかで時に深みすらも感じる

音空間を展開しています。

 

 

今回のプロジェクトについて、トーマスは語ります。゛「Country

Again: Side A」は、19才の頃に言いたかったけれども、その頃は若

すぎてそれを表現することが出来なかった、そういったことについ

てなんだ。僕がこの10年の間世界中をめぐり、最後にはわが家に戻

ったクレイジーな旅のことであり、人生にとって何が大切かを深く

考えることを、今まで以上に中心においたことに満足している。い

くつかの新曲を、コロナの自粛中にアコースティックなスタイルで

披露した時、ファンのみんなの反応には驚かされたよ゛これまで積

み上げて来たキャリアとコロナ禍の経験を糧とし、新たな境地に達

したということでしょう。

 

 

リード・シングル"What’s Your Country Song"は、アルバムの広告

塔にふさわしい華やかさを持つ素直なポップ・ソング。ただ、そ

歌詞はカントリーに溢れています。というのも、カントリーの

歴史を彩った沢山の名曲タイトルを織り込んで聴き手に問いかけ

ているのです。1番だけでも、ジェイソン・アルディーン"Big Green

Tractor"、アラン・ジャクソン"Drive"、ハンク・ウィリアムスJr

“Whiskey Bent and Hell Bound” 、マール・ハガード"Mama Tried"、

フロリダ・ジョージア・ライン"Cruise"、アラバマ“Dixieland Delight”、

再びアラン・ジャクソン”Chattahoochee"、そしてジェイク・オウ

ェン“Blue Jean Night”等のワードを散りばめるという見事な職人芸

でコーラスにつなげます。゛2車線のハイウェイを駆け抜ける時/ラ

ジオをつけるんだ/どの曲が君の心を捉えるか教えて/どれが君にと

ってのカントリー・ソングなんだい?゛

 

 

続いてシングル・カットされた、タイトル曲“Country Again”につ

ては、トーマスは一つの曲に留まらない、彼自身の一部だとまで言

います。゛この曲は本当に僕の人生についてなんだ。ちょっと落ち

着いて、自分の人生の優先するべき事、それが僕にとって何なのか

をよく見てみる。そして、少し立ち止まっても大丈夫な事を理解す

るんだ。だたシンプルに生きても大丈夫だ、それからその優先事項

をリストの一番上に置けばいい~一番大切なことをね。僕にとって

それは、よい父になる事だったり、或いは良い夫、良き友達、良き

息子、良き兄弟になる事であり、チョッとした自分のルーツに戻る

事なんだ゛

 

トーマスは、「カントリー」という言葉をどう捉えているかにつ

いて語っています。゛「カントリー」ってかなり強力な代名詞だと

思うんだ。沢山の事を意味するんだよ。多くの人たちにとっては、

ブーツだったり、フィドルやスティール・ギターだったり、自然の

中で過ごす事だと思う。確かにそれも意味するモノさ。でも僕には、

シンプルな生き方だったり、多くを求めずに幸せになるライフスタ

イルだったり、そして音楽的には「カントリー」は誠実なストーリ

ーを意味すると思っているよ゛ここら、あのアラン・ジャクソン

の違が興味深いです。

 

 

本作は、その“Country Again”を始め、オープニングでイメージを決

定づける"Want it Again"や"To the Guys that Date My Girls"らのアコ

ースティック・バラード系が主軸を占めるアルバムだと思います。

それもトラディショナルではなくAOR系のそれで、元々トーマスは

スムーズなテナー・ボイスを活かしたそんなバラードがで得意でし

たが、ここではフィドルやバンジョーも聴かれオーガニックでアメ

リカ南部風のアットホーム感を感じます。上記したような彼のコメ

ントを体現した、成熟した音世界なのです。その分、アップテンポ

曲はサウンド的に地味目になりますが、トラディショナル系を贔屓

にする身には、今作は通してじっくり楽しめるものです。

 

実は今回のプロジェクトによる26曲程をまとめてリリースする案も

ありましたが、お兄さんからのアドバイスや、エリック・チャーチ

のマルチ・アルバムを見て、2パートに分ける事にしたようです。

゛この11曲を堪能する時間をとってもらって、それから「Side B」

がリリースされたら、その新たな12から15曲を楽しんで、プロジェ

クト全体を理解してもらえるんだ゛だいたいの傾向として、カント

リー・アルバムの曲数は10曲前後が好まれるようで、十数曲とか多

め入れてるのはポップ・ファンへのクロスオーバーを見込んだ大物

の作品に多いです。本作はそれ以上の曲数になったので、いろいろ

考えて2枚に分けたという事ですが、とにかく「Side B」も早く聴き

たいですね。

 

★前作、2019年の「Center Point Road」についてはコチラで取り上げました★


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