ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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Don Williams ドン・ウィリアムス - [DVD]Don Williams In Ireland : The Gentle Giant In Concert

2016-07-03 | カントリー(男性)
今回は、往年の超大スター、”ジェントル・ジャイアント”ことドン・ウィリアムス、そして彼の最新ライブDVDをご紹介です。70年代から90年代初頭にかけての長い間ヒットを飛ばし続け、ヨーロッパにまで広がった人気に対して、当時の流行り言葉”コスモポリタン”にちなみ、”カントリーポリタン”と言われていたそう。私もカントリーを聴き始めた頃、入門として「20 Greatest Hits」を聴き、その優しみ溢れるバリトン・ヴォイスと適度なポップさも持ち合わせた名曲のオンパレードに圧倒されたものでした。当時はそれ以上聴き進む事は出来なかったのですが、最近フッと聴き返して、やっぱり良いなあ・・・と思っていたタイミングでの、突如このDVDのリリース。飛びついてしまいました。ちなみにリージョン・フリーです。それではまず、ドンの栄光のプロフィールから触れましょう。



ドンは、もちろん子供の頃からギターを弾き始めていましたが、楽器の手ほどきをしてくれたのはお母さんでした。10代の頃は、カントリーだけでなく、ロカビリーやフォーク、ロックン・ロールまで幅広くプレイしていました。高校卒業後、自身のバンドを結成。それは最終的にはフォーク・ポップ・グループ、The Pozo-Seco Singersに発展し、1966年にはコロンビア・レコードから"Time"というトップ50ヒットを出しました。その後もマイナーヒットを飛ばし続け、バンドは1971年まで継続します。

The Pozo-Seco Singersが解散後、ドンはナッシュビルでソングライターとして活動する事を決心します。自分にはソロ・アーティストとしての活動は向いていないと思ったからです。最初は Jack Clement(50年代、あのサン・スタジオのプロデューサーでエンジニア)の出版社と契約した、ただのソングライターでした。しかし1972年の終わり頃には、JMIとソロ・アーティストとして契約する事に。デビュー曲"Don't You Believe"は泣かず飛ばずでしたが、"The Shelter of Your Eyes"が1973年の始めに14位まで到達。その後、マイナーヒットを積み重ね、1974年のブレイク作"We Should Be Together"では遂に5位を獲得するまでになります。このヒットのおかげで、いよいよメジャー・レーベルABC/Dotと契約。ファースト・シングルとなった、あの名曲、"I Wouldn't Want to Live If You Didn't Love Me"で遂にナンバー1を獲得するのです。1974年の夏の事でした。このヒットが、1991年までの長きにわたる彼のヒット街道~この間、ドンがリリースしたシングル、46曲のうち、トップ10に入らなかったのはたったの4曲~のスタートとなったのです。それら彼のビッグヒットの殆どは、 John Prine, Bob McDill,やDave Loggins(ケニー・ロギンスの従兄弟)らソングライター達の曲でした。

 ~この時代の名演が聴ける初期オリジナル・アルバムのレビューはコチラをご覧ください~
「 Volume 1 & Volume 2」
「You're My Best Friend / Harmony / Country Boy」



70年代を通じて、ドンは世界で最も成功したカントリー・アーティストになりました。彼のカントリー・ポップは、アメリカ・メインストリーム・ポップ界へのクロスオーバーだけでなく、イギリスやヨーロッパでも高い人気を得たのです。チャートでのヒットに加えて、ドンは数々のカントリー・アワードも獲得していて、特に1978年のCMAアワードで男性ボーカル部門とシングル部門(エリック・クラプトンもレパートリーとした"Tulsa Time")を同時受賞した事はハイライトでした。70年台終盤には演技にも活動の幅を広げ、主に友人であるバート・レイノルズの映画作品に出演しています。



80年代に入ると、背中の健康問題もあり、活動のペースは少しずつ穏やかになっていきますが、それでも多くのシングルがナンバー1を獲得し続けます。1986年には、所属していたMCAレーベル(ABCを買収していた)を離れ、キャピトルに移籍。レーベルの移籍によって彼のキャリアや人気が揺らぐ事はなく、トップ10ヒットを連発していきました。その中で、1987年、持病の治療の為、手術に踏み切ります。1989年にはRCAに籍を移し、当初はヒット曲を出し続けますが、それも1992年の末、最後のトップ10シングル"Lord Have Mercy on a Country Boy"までの事でした。90年代中盤は、演奏活動は続けていたものの、ナッシュビルの農場に引きこもり、事実上の引退状態となったのです。その後は、1998年の「I Turn the Pag」のレコーディングまで待たなければなりませんでした。.

それから、時折のコンサートツアー活動の後、2004年にシュガーヒル・レーベルより「My Heart to You」をリリースし、レコーディング・キャリアを再開します。しかし、2006年に敢行した”Farewell Tour of the World”でアメリカやヨーロッパを巡った後、再び引退状態に。これは2012年まで続き、同じくシュガーヒルからリリースされた名盤「And So It Goes」で復活。2014年には続く「Reflections」もリリースしました。



このDVDはその最新作の後に敢行されたアイルランドでのライブ・ツアーからのもの。なんと、DVDにはメニュー画面がなく、いきなり映像が始まるという、実に簡素な作り。選曲画面がないのは、サービスDVDではあるけど。。。しかし、そんなの些細な事と吹き飛んでしまうくらい、演奏自体はさすがのクオリティ。オープニング、アラン・ジャクソンも「Under The Influence」でカバーしていた名曲"It Must Be Love"から、ドン・ウィリアムスとバンドによるリラックスしたサウンド、完成されたアンサンブルに引き込まれます。ドンは、すっかり白髪、髭もたっぷりたくわえ、ステージ中央で微動だにせず座って歌います。それはそれは仙人みたいな風貌なのですが、その歌声は全盛期とたいしてかわらない。あえて言うなら、リズム曲でチョッピリテンポを落としているかな、くらい。時折挿入されるインタビューの話し声も、すごいバリトンのグッド・ヴォイスなんです。枯れた、などと言う表現は全く当たらなくて、必要最低限、洗練の極みといったサウンド。ラストの"Tulsa Time"は結構ビートが効いていてノセられますよ。

観客は殆ど中年層以上の方々なのですが、時々映される彼らのリラックスして楽しんでる姿や表情がとても印象的で、このライブ作品の一つの特徴と思います。やはり皆さん、一緒に歌うんですね。そのハイライトが、有名曲"You're My Best Friend"。福原照晃さんも歌っていたな。時々ドンも歌を止め、素晴らしい微笑を浮かべてその様を見守り、”Beautiful”とささやくのです。ドンの音楽が何ゆえに愛されてきたか、とてもよく分かる気がします。また映像では、頻繁にアイルランドの街中やパブ、美しい自然の風景が挿入され、良い雰囲気を作っていますね。その中で一瞬ですが、チーフタンズのマット・モロイが自分のパブの前で、”Cheers! Don Williams”とやるシーンがあります。なお、CDのライブ盤もリリースされていて、曲目が追加されてるようです。

ドン・ウィリアムスに馴染みのない人にお薦めする類の作品ではありませんが、よくぞ撮って、リリースしてくれた!と喜びたいです。もっと若い時期のライブ映像も有るようですので、DVD化を望みたいと思います。また、最近はオリジナル・アルバムが再発されており、わりと入手しやすくなっているので、そのあたりでまたドンの事を取り上げたいと思っています。


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