ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Cam カム - Untamed

2016-03-26 | カントリー(女性)
一見、とてもカントリーとは思えないお洒落っぽい雰囲気のCDジャケット。裏面では背中を露出する大胆なショットも。ただよく見ると、チョッと垢抜けない感じもしたりで。2016年のグラミー賞で、堂々カントリーパフォーマンス部門でノミネートされた、カントリー・アーティスト、カムの、なかなか斬新なデビューアルバムです。

生まれも育ちもカリフォルニア州、ラファイエットと言う小さな町で、カントリー・レジェント、パッツィ・クラインの歌と共に、おじいさん、おばあさんに可愛がられ育ったよう。大学卒業後に、ロサンジェルスに移動。その恵まれた歌声によって、音楽活動を開始します。2010年にはCameron Ochs名義でポップ・アルバムをリリース。その後、芸名を短くしていき現在のカムにした頃には、カントリースタイルの作品を手がけるようになっていました。そして、2013年にナッシュビルに移動。そこで彼女に注目し、アルバム制作の支援をしたのが、今回のUntamedでもプロデュースを担当したTyler JohnsonとJeff Bhasker。Tylerはテイラー・スウィフトやP!NKとの共作で、Jeffはブルーノ・マーズ、ビヨンセ、FUNらとの仕事で知られる、いずれもポップ界で実績のある人達。彼女のサウンドの新鮮さは、このカントリー界としては異端な彼らとのコラボの賜物と言えるでしょう。コンスタントなライブ活動の甲斐あって、2015年にアリスタ/RCAとのメジャー契約を獲得したのです。



オープニング、汽車の汽笛のSEと、それを模した咽び泣くハーモニカをシンクロさせ、カントリーの伝統へのオマージュやね・・・と思ったとたん、唐突に始まるダンスビートに面食らう事に。正直、私、ダンスビートに浸ったのは80年代のユーロビートくらいというダンス音痴ですが、まずこのタイトルチューンにはまってしまいました。バンジョーもリズミカルにマッチしてる。この曲に代表される、Tyler Johnsonにより多様にプログラミングされた現代的なサウンドがこのアルバム、彼女の音楽の大きな特徴になっています。近年のカントリーは、売れっ子プロデューサ、ダン・ハフのサウンドを筆頭に、艶やかで派手なギターサウンドが長く席巻してきました。最初はカントリーっぽくアコースティックで始まり、サビで派手に盛り上げるパワーサウンドばかりが蔓延しているのです。この「Untamed」、そこからあえて外すことで、メインストリーム・カントリー界に新風を巻き起こそうとしているのですね。

その一方で、彼女を一躍スターダムに押し上げた一曲、"Burning House"はモダンでありながらしっとりとしたアコースティック・バラード。夢の中なら、燃えさかる家の中で、かつての彼氏にすがりつく事が出来る。そして、この燃える家の中で、夢から目覚めたくない・・・と驚くほど一途な女心が切々と歌われます。グラミーがノミネートしたのがこんなシンプルな曲だったというところに、カムがカントリー・シンガーとして真に非凡なものを持っている事が証明されてる思いました。ポップでダンサブルな弾けぶりと、カントリーらしい”小さな町の生活ならではの慎ましやかな美徳”を上手くミックスして表現できることが、カムの何よりの魅力と言えるでしょう。

時間のあるときは、他人のために曲作りをしていて、昔ご紹介したマギー・ロ-ズや、ポップのマイリー・サイラス(お父さんはゴリゴリのポップ・カントリーの人だった)らにも書いています。まあ、今やソングライターのクロスオーバーは当たり前になってるように思います。


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