ミランダ・ランバート Miranda Lambert - Palomino レビュー

 

ヒット・シングル"If I Was a Cowboy"を収録した、通算8作目のオリジナル・アルバムです。下に転載した、以前投稿のリリース情報の通り、4月29日にリリースされ、ビルボード２００で初登場４位と見事トップ１０入りしました。モーガン・ウォーレンを例外として、最近はなかなかトップ１０にカントリーが入る事はないですので、ここらは流石の存在感です。

 

 

リリース情報記事でも記載した通り、「旅」をテーマにした曲集で、ミランダ曰く゛36の違った場所゛が出てくるとのこと。゛私はコンサート・ツアーをしてきたけれど、自分が旅行客になったことは無いから゛と、スターならではのお悩みをクリエイティブな活力にしたようです。

 

 

"Music City Queen"でB-52'sがゲスト参加したり（というより、B-52'sが今だに健在なのに驚きました。デビューは40年以上前ですから）、ミック・ジャガーのカバーをしてたりで話題は尽きませんが、実にプリミティブで堅実な音創りを徹底したアルバムだと感じます。前作「Wildcard」は、オープニングでEDMっぽい事をやったり、結構華やかさが有るサウンドでしたが、今作はトワンギーなバンド・サウンドを主軸にしていで、チョッとマイルドな南部らしい音です。トラディショナルではないですが、大人のポップ・サウンドで長いファンには聴き心地が良いです。

 

 

ミック・ジャガーの"Wondering Spirit"は、割とオリジナルに忠実な感じでロカビリーの雰囲気たっぷり。ミランダは、゛自分のスタイルではカバー出来ないと思っていたけれど゛、アルバムのテーマにマッチするので採用したそうです。゛もちろん、ミック・ジャガーの方がうまくやってるわ゛とレジェンドへの謙遜も忘れません。一方、"I'll Be Loving You"はブルージーでざっくりしたノリが聴きモノです。そういう間に、「The Mafa tapes」に収録されていた"In His Arms"のバンド・バージョンなどのカントリー・バラードを挟みます。この曲、とてもシンプルですが、そんなメロディが耳に残りますね。

 

 

音楽的な質は高いアルバムですが、メインストリームのヒット・レコードとしては確かに地味目な作風にも思えます。ミランダもすでに年齢的にアラフォーで最近の写真を見ても落ち着きを増してきたようですので、いよいよレジェンドへの道を歩んでいく段階に入ったのかと、この最新作は思わせてくれます。

 

 

【リリース前の紹介記事】（2022年3月12日投稿）

 

ミランダ・ランバートが4月29日にニュー・アルバムをリリースする事を発表しました。15曲のトラック・リストも発表されています。ジャケットでは、前作「Wildcard]とはガラリと変ってトラディショナルな装いを見せていますが、かつてリリースした曲の再録やカバー曲のチョイス、さらにゲスト・アーティストでも話題に事欠かないユニークさで、さすがです。

 

 

このアルバムの制作の始まりについてミランダは語っています。゛ルーク・ディックとナタリー・ヘンビーと私は、2020年にテネシー州の私の農場に出かけて、曲を書き始めたの。時間があるうちに、田舎に出かけて何が起こるか見てみようと考えたのよ。最初に書いたのは"Tourist"で、それがきっかけで、ちょっとしたテーマを持ったものを作ろうと思いついた。当時は旅行ができなかったので、歌を通して旅に出ようということになったのよ。これを聴く皆が、私たちさすらいの魂と一緒に旅をして、素敵なストーリーを持つクールなキャラクターたちに出会う準備ができていると望んでいるわ゛

 

 

"Wandering Spirit "は、あのローリング・ストーンズのミック・ジャガーの同名ソロ・アルバムからの曲。確かにあり得そうな選曲ですが、ロックの王道ストーンズ系の曲でどんなノリを見せてくれるか楽しみです。むしろ意外なのが、 "Music City Queen" に、The B-52’sがゲスト参加したことでしょう。ミランダの言葉によると、゛（長年共作してきた）ナタリー・ヘンビーが素晴らしい歌声で'Rollin' on the river...'と歌い始めた時、私達は皆「もしB-52sがこの曲で歌ったらどうだろう」と思ったのよ。彼らもこの曲を気に入ってくれたわ゛The B-52’sとはZOOMを通じてコンタクトし、そのZOOMを通して歌声をレコーディングしたようです。

 

 

グラミー賞にもノミネートされた、ジャック・イングラムとジョン・ランダルとのアルバム「The Marfa Tapes」から、"In His Arms", "Geraldene", "Waxahachie "が選曲されています。これはかねてからミランダも新バージョンを予告していたのが実現したもので、「The Marfa Tapes」でのミニマムなアコースティック・スタイルに対しどんなアレンジが施されているか注目です。3曲も再録した事については、゛Marfaのすべてが好きで、キャンプファイヤーを囲む友人たち、修正もプロトコルもフィルターもない、生々しくてリアルで、私はその一部を持ち帰りたかったのよ゛とミランダは語っています。

 

コンスタントに質の高いアルバムをリリースし続けてて来た彼女ですので、今作も期待は大です。