
ある日親父が『上野に行くぞ』と言いました。
祖父から結婚祝い?に贈られた親父の金無垢ジュベニアの裏蓋の角が破れ、三越の時計修理部で修理ができないと断られたので、アメ横の時計ショップに連れて行かれました。
ジュベニアにはラグ幅20ミリの金無垢のベアーのベルトを巻いていたので、そのベルトが取り付けられるのが、当時出回り始めていたクォーツの、ロンジンだけでした。
親父はロレックスはダメかなと店主に粘ったのですが、ラグ幅が合わないということで、嫌々ロンジンを買いました。
50年前当時10万円でした。
いまならヤフオクで3000円でも入札されません。
それだけクォーツは不人気ということでしょう。
ところがこのロンジン、親父の遺品で受け取った時以来、28年間一度も不調になったことはありません。
堅牢です。
非防水ですから雨の日なんかは風防ガラスに水滴が滴ることもありましたが、電池切れ以外は止まることは皆無、頑丈です。
親父が死んだ時に愚母から受け取った数少ない遺品のひとつなので、親父の遺影の前に置いてあります。
たまに腕に巻いて親父を忍んでいます。
ちなみに釣りが好きだった親父のために、ベルトはウミヘビの皮です。
もし親父が生きていれば102歳。
心筋梗塞っぽいということでチョンになりましたが、急死です。
病院から帰って5階まで階段を上って家のソファーに座ってこと切れました。
親の死因は残された子供にとっては貴重な、金に換えることができない遺産です。
刑事が『司法解剖を』と言ったのですが、愚母が『これ以上切り刻むことは本人も望まないだろう』と断りました。
医者がストレッチャーに横たわっている親父を腕組みしながら見ていましたっけ。
ただ、その医者は死亡診断書を書くことを拒みました。
死んだ日に行った病院も書かないと言ったので、仕方なくがんセンターへ行ってようやく書いてもらえました。
死因はたしか心不全だったと思います。
医者はなかなか死亡診断書を書いてくれないものだと知った次第です。
義母のときもコロナ禍だったので、『コロナじゃないか?』と聞いたら、『うちみたいな施設でコロナが出たら全滅だよ』といい、結局『肺炎』で処理されましたっけ。
今日はいいお天気の平日です。
今年のGWは過去最悪の日並びですね。
まぁ病気持ちの高齢者にとってはありがたい日並びということができますが・・・