ガンバレ よし子さん

手作りせんきょ日記

ヴィルデ・フラングに片思い (1)

2011年03月25日 | シベリウス バイオリン協奏曲
シベコンチームの皆さんこんにちは。シベコン広報部長のクレタです。
今回も前回に引き続き、2011年3月5日にオーチャードホールで聴いた、
ヴィルデ・フラングのシベコンについて書こうと思います。
前回のテキストは こちら



ところで、この演奏会、皆さんはあんなに多くのお客さんが集まると予想していましたか?私はまず当日の聴衆の数に驚いてしまいました。

実を言うと、私はチケットを購入した時点ではヴィルデに対する関心はまだ薄く、ただ、彼女のデビュー盤がシベリウスとプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲で、それが北欧音楽ファンの間で静かに話題になっているのは知っていて、デビュー盤でシベコンを選ぶなんて、日本のヴァイオリニストでは考えられないことなので、よほどこの曲が得意なのか、それとも好きなのか、と思っていました。1月には国内盤がリリースされ、私もアマゾンでそれをチェックしていましたが、私のほしい物リストには、既に前年11月にリリースされたフランク・ペーター・ツィンマーマンのシベコンが登録されていて、自分がまず買うべきはそっちだと思い、購入を見送っていました。

ところが、私のそんなゆるいマークとは裏腹に、当日のオーチャードホールは超満員。
立ち見のお客さんまでいるではありませんか。私はN響オーチャード定期を聴くのは2回目ですが、4階バルコニーの立ち見席に人がいるのを見たのは初めてです。

へぇ~、ヴィルデって、こんなに注目されてるんだ。
え、 ひょっとして、広報部長、乗り遅れてる?

会場のフィーバーぶりを前に、不意打ちを食らった格好の私は、とりあえず手元のプログラムで彼女の情報を補足することに。

プログラムによると、ヴィルデ・フラングは1986年ノルウェー生まれの24歳。ということは昨年度シベコン・チャンピオン( ←個人的見解 )の神尾真由子さんと同い年です。
出身地がノルウェーとあり、なるほど、と納得。それなら彼女がデビュー盤でシベコンを弾くのも頷けます。ノルウェーは国境の南をフィンランドと接する隣国で、民族と言語は異なるものの、両国はともに北欧諸国に含まれ、特有の自然や文化の共通点は少なくありません。たとえば白夜とか、イケアとか。私は北欧に行ったことはありませんが、北欧で暮らす人々には互いに共有するマインドがあるように思います。そしてシベリウスの音楽も、そのマインドとどこかで結びついている気がします。身近な例に置き換えると、日本人は「ハルキ・ムラカミ」を読むにあたり、作者と母国語を共有していますが、それと同様に、北欧人はシベリウスの音楽を自分たちの文化として共有し、東洋人よりも近い感覚で演奏したり鑑賞したりしているのではないか、私はそのように想像します。そう考えると、これからヴィルデが演奏するのは本場仕込みのシベコンで、この演奏会はそれを聴く格好の機会ということになります。北欧音楽ファンならこれを聴き逃す手はありません。

プログラムには、さらにもうひとつ、彼女が注目される理由が載っていました。一般のクラシックファンにとって、目玉はこちらのほうかもしれません。ヴィルデは室内楽のキャリアも豊富で、多くの演奏家と共演しています。中でも特筆すべきはアンネ=ゾフィー・ムターとのデュオで、その演奏活動は2007年から現在まで続いています。ふたりのリサイタルは世界各地で好評を博していて、ヴィルデの公式HPの今後のスケジュールによると、帰欧後はムターとドイツ各地をツアーで回る予定になっています(これは後で調べました)。「ムターの秘蔵っ子」 ・・・ これはN響がヴィルデにつけたキャッチ・コピーですが 、ムターが信頼する若き実力者の真価を見極めよう、そんな思いでやって来たお客さんも多いはずです。



というわけで、ふたつの意味で注目の演奏会。満員の会場はいつもの3割増し( 当方比 )の熱気に包まれて、なにか特別なことが起こりそうな予感がします。
シベコン広報部長こと、わたくしクレタ、これが普段の演奏会ならこの辺で精神を統一し、極寒の澄み切った空を悠然と滑空する鷲の如き境地に入っているところです。

しかし、一体どうしたことでしょう。

この日は開演のブザーが鳴り終わっても、なかなか心が一点に定まりません。
思った以上に聴きどころ満載のシベコンが、もうすぐ始まろうとしているのに、心は極寒の空を飛ぶ鷲どころか、春の陽気に誘われた蝶々のように、フワフワと落ち着きなく彷徨っているのです。            (つづく)

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結成!シベコンチーム

2011年03月17日 | シベリウス バイオリン協奏曲
花屋の店先にチューリップが並び始めた今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私のほうは相変わらず、飽きることなくシベコンを聴き続けています。
この曲が好きで、あまりに夢中で聴いているせいか、シベコンがらみの現象が次々に沸き起こり、それがどんどん拡がっていって、
いったい、どっから手をつければいいの?
まとめるには、散らかりすぎ。

とうとう自分に起こる変化をフォローしきれなくなり、やむを得ず、昨年からブログの更新を停止していた私。でも先日、おそるおそるログインしてみたら、そこには思いがけない発見が。

2011年3月5日のアクセス数が、他の日の3倍  
更新もしていないのに、なぜ?

理由は簡単。この日は渋谷オーチャードホールでN響の定期演奏会が行われたのです。
メイン・プログラムは、
Sibelius Violin Concerto featuring Vilde Frang.
シベリウス ヴァイオリン コンチェルト フィーチュアリング ヴィルデ・フラング




あ~、この数字を見た時はうれしかったな。

潜在的なシベコン愛好者は思いのほか多い。
彼らは私がことさらアナウンスしなくても、各自で美味しそうなシベコン(変な表現ですが)を嗅ぎつけて聴きに行く。
そしてその感想をシェアしたいと思っている。

私はこの数字をそう分析し、3月5日にアクセスしてくれた、PCの向こうの、まだ会ったこともない皆さんを、ひとりで勝手に「シベコンチーム」と命名しました。

結成!シベコンチーム。

そのくらい、シベコン広報部長はうれしかったのです。

というわけで、しばらくはシベコンチームに向けてヴィルデのシベコンのことを書きます。
前回(2010年11月26日)のレポートは「つづく」のまま、いったん保留とします。続きを待っていた方ごめんなさい。小泉純一郎との邂逅については、ヴィルデとの出合い(?)の後で報告します。ブログは放置していたけど、テキストはワードに書きためています。形を整えて後日必ずエントリします。用意したネタがことごとく中断して心苦しいですが、それは私がいつも見切り発車で、終着点が見えないままテキストを書き始めるせいです。考えるだけで結局書かずに終わるのがいやなので、頭に浮かんだあれこれを、とりあえず「えいやっ」と、強引に文字に変換してみるのですが、まだ修行が足りないらしく、あちこち散らかって収集がつかなくて。いずれきちんと片付けますので長い目でおつきあいくださいね。

しかしながら。

いま、日本は、私の頭の中以上にとっ散らかってしまって。

いったい、どっから手をつければいいのか、何を優先すればいいのか、
それぞれの現場で、皆さんがギリギリの判断を余儀なくされています。

「あっちにもこっちにも厳しい現実がある時に、被災地から遠く離れた僕らだけが、のうのうと日常を送っていいのだろうか。」地震の翌日の夜、晩めしを前にして夫はそう言いました。私達は東京住まいで被害は少なく、それぞれの実家の家族も無事でした。帰宅が遅れたため、夜遅い食事になりましたが、食卓にはいつもどおり湯気の立つ温かい食べ物が並んでいました。ガスコンロや電子レンジを使ってめし炊きをしながら、私も被災者の方々と自分の間に生じた格差について考えていました。私にも後ろめたい気持ちはあります。でも、こんな時だからこそ、難を逃れた者はしっかり食べてしっかり眠って、明日に向けて力を蓄えておかなければ。私はそう思い、いつもより真剣に晩めしを作り、それをありがたくいただきました。地震が起きようが、原発トラブルが起きようが、慌てず騒がず目の前の仕事をこつこつやっていこう。私はそう思っています。節電のために明かりや暖房が消えても、私は私なりのやり方で明るさと温かさを維持して周りに提供していこうと思います。

シベコンチームの皆さんは大丈夫ですか。
皆さんが無事であることを、そしてこのブログを読んでくれることを願っています。

では、気持ちを切り替えて本題に入りましょう。
2011年3月5日のN響オーチャード定期のメイン・プログラム、
Sibelius Violin Concerto featuring Vilde Frang.
次回はソリストのヴィルデ・フラングについて紹介します。   (つづく)

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