ガンバレ よし子さん

手作りせんきょ日記

ロジャー・ノリントン

2007年04月23日 | 録音


先日、N響アワーを見ていたら
私が日ごろぼんやりと抱いていた仮説を裏付ける情報が満載で
TVの前でひとりで興奮してしまいました。

テーマはロジャー・ノリントン。

ノリントン指揮によるモーツァルト交響曲第39番が
「2006年N響演奏会ベストテン」の1位に選ばれたということで
番組では、インタビューとリハーサル風景を交えて
ノリントンサウンドの魅力を紹介していました。

インタビューでは
彼の「ピュア・トーン」という独特の演奏スタイルに
N響が的確に応えてくれたことを賞賛していましたが、
その「ピュア・トーン」というのが、
極力ビブラートを使わない弦楽器奏法ということで、
これはまさしく3月にスロヴァキア室内オーケストラが
私をとらえたノン・ビブラート奏法。
やはり、この演奏スタイルが
クラシックを洗い直す新たな手法として確実にあるようです。

N響とのリハーサル風景では
ノリントンがバイオリン奏者たちにビブラートをつけるなと指示した後
「ビブラートなしの演奏経験は?」と質問し、奏者たちが首を振ると
「じゃあ、初めてのことをやってみよう。」と誘います。
奏者たちは「うゎ、来たぞ。」と思いつつ、今までの常識から
それを禁じられることに戸惑いを隠せない様子。
意を決したコンサートマスターが
「ノープロブレム。」と答えると
「ノープロブレム?」と聞き返し、
コンサートマスターが緊張ぎみに「イエス。」と頷くと
「彼は凄くいい人だ。お給料を上げてもらおう。」と笑顔で一言。
これでメンバーの雰囲気が和んだ後はすっかりノリントンのペース。
N響を手玉にとって次々と新しい響きを引き出していました。

そして本番のモーツァルト交響曲第39番。
録画でしたが、しびれました。

とにかく、ビートを感じる演奏なのです。
もう、踊りだしたくなるくらい強力に。
コーネリアスの回でも触れたように、
音楽においては「ビート=意思」というのが私の信条なのですが
その嗜好に単刀直入に訴えてくるダイナミズムがありました。
たぶん、ビブラートを排することで小節に勢いやスピードを
持たせることが可能になるのだと思います。

そして、指揮をするノリントンのたたずまいもまた独特で
時折、腕を上げてオーケストラに指示を出すものの、
それはほんの一瞬の合図にすぎず、それ以外の大半の動きは
アンダーワールドやケミカルブラザーズを聴きながら
気持ちよさげに踊っているトランス状態の人とまったく一緒。
響きそれ自体がもつ刺激や快感を追求していくと
音は限りなくデジタルに近づいていく、というのが
ノン・ビブラート奏法を聴いたときの私の印象だったのですが
ノリントンの表情を見て「ああ、やっぱり。」と思いました。
両者には確かに同じ種類の恍惚感と興奮があり
私にもその感覚が手に取るようにわかるのです。

演奏が終わる瞬間に、くるっと客席を振り返って
「みんな、ノッるかい?」と客席にアピールしていましたが、
私が客席にいたら「ブラボー」ではなく「イェー!」と返してしまったかも。

近いうちにまたN響との共演があるはずなので
その時は私もコンサートホールで
ノリントンおじさんと一緒に気持ちよくなりたいです。
できればスタンディングフロアで聴いてみたいけど、
それはまず無理でしょうね。