ガンバレ よし子さん

手作りせんきょ日記

ソナタ形式(1)

2010年03月11日 | シベリウス バイオリン協奏曲
シベリウス作曲ヴァイオリン協奏曲二短調。

長い試行錯誤の末、私はようやくひとつの結論に達した。
この曲が持つ独自性と革新性。それを語るにはソナタ形式への言及が不可避である。
シベリウスがこの曲に込めたメッセージ。それは聴き手がソナタ形式を理解してはじめて受け取ることができるのだ。

・・・と、ここまで読んで、
「ようやく更新したと思ったら、のっけから難しそうな話題だなぁ。」
と思ったあなた、
あなたは正しい。

仮に、この後
「シベコンの第1楽章は、他の典型的なヴァイオリン協奏曲と同様に
ソナタ形式で書かれている。」
と文章を続けたとして、果たしてその意味を理解するユーザーが何人いるだろう、と
私も思う。たぶんわかる人よりわからない人のほうがずっと多いんじゃないだろうか。
ってゆーか、そもそも自分自身がソナタ形式を十分に理解しているとは言い難い。

かようにこのソナタ形式というやつは日本人にはなじみが薄い。
初心者がクラシック音楽を聴く時の、最初のつまずきの石がソナタ形式である、と言っても過言ではないだろう。だから私もそのへんのややこしい理論はすっ飛ばして、カジュアルでわかりやすいところだけを拡大してクラシック音楽を聴いてきたように思う。

でも、ここではあえてソナタ形式について語りたい。
もちろん、シベコンについて語るのが私の本来の目的である。しかしその前に、ウォーミングアップとして、私とユーザーとの間で、ソナタ形式について最低限のイメージを共有しておきたい。その共同作業を経た上で、改めてシベコンについての話を始めたい。遠回りに見えるかもしれない。でも、この過程を省略して、感覚的な言葉をいくら並べても、シベリウスがこの曲に込めたメッセージはうまく伝わらないと思うのだ。

ちなみにソナタ形式は西洋音楽の様式の一つである。管弦楽曲の第1楽章や終楽章に多く使われる。ハイドンによって基盤を整備され、モーツァルトによって発展し、ベートーヴェンによって広く大衆に普及した。ソナタ形式の原型はバロック期のイタリアに見られるが、楽式として完成させたのは上に挙げた18世紀後半から19世紀初頭のウィーン古典派の音楽家である。そのため、ソナタ形式はドイツ=オーストリア音楽の確固たる礎のひとつとなっている。
ベートーヴェンに続くロマン派の音楽家は、その伝統を踏襲しつつ、それを一部壊したり、新しく何かを付け加えたりしながら、自己のスタイルを模索した。チャイコフスキーにしろ、シベリウスにしろ、管弦楽曲を書くにあたって、第1楽章と言えばまずソナタ形式が頭に浮かび、そこがスタート地点となった。

というわけで、まずはチャイコンの第1楽章をサンプルにして、ソナタ形式の作曲法を簡単にまとめてみる。参考音源は引き続きキョンファ盤である。少々抽象的な話になるかもしれないが、しばしの間、ご辛抱願いたい。


チャイコンの第1楽章の構造をソナタ形式で表すと

< 序奏 ‐ 提示部 ‐ 展開部 ‐ カデンツァ ‐ 再現部 ‐ コーダ >

となる。オケによる序奏の後、キョンファの挨拶(アインガング)に続いて二つのテーマが現れる。テーマはいずれもソロヴァイオリンによって奏でられる。このうち

「ファッファ~、ミレファラミ~ファミ~、」
で始まる8小節をテーマ1 (以下T1)

「ラ~ソ~、シラソシラ、シ~ラ~ドシラドシ、」
で始まる4小節をテーマ2 (以下T2)

とする。T1はメインテーマ。強いメッセージを持ち、曲中でしっかりと自己主張をする。
T2はサブテーマ。T1が男性的ならT2は女性的、というふうに、T1と対比させることでT1のメロディを際立たせる役割を担う。
T1とT2。第1楽章はこのふたつのメロディで構成される。ただし、T1とT2は、ただ一度現れるのではなく、加工されたり、変形されたりして何回か繰り返される。そしてその度に、区切りの音には変化がつく。T1とT2のほかにも様々なメロディやフレーズが出てくるが、それらはすべてT1とT2をスムーズにつなぐための接続詞に過ぎない。

では、このうちT1に注目して、楽章中で何回繰り返されるか数えてみよう。
( 第6回へ続く )

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