小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

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小説「オミとカイ」9.カイが行きたい場所

2024-07-11 22:27:00 | 小説
 ドアをノック されたが俺は答えられなかった。

 カイが帰ってきたのならダイキが大騒ぎしてノックしてくるだろうがそうではないようだったからだ。

 何をする気にもなれなかった

 あの〈ジャパン ホラー アワード〉にノミネートさえされなければ、打ち合わせで初めて感情的になったカイに、俺の出品作のアイディアを激しく全否定されることもなく、福岡での撮影も嫌がられず、こうして消えられなかったのではないかと思えてくる。

 彼らしくない 無責任な消え方だからこそ怖いのだ。

 カイから連絡は来ていないか、スマホをチェックしたが無駄だった。

 ついでに俺のスマホの中の心霊写真は変化していたか見たのだが...

 …変化していた…

 俺の顔を隠すように、濃い、白いモヤがかかってしまっていた。写真の縁の方は赤くなっていて…


 なぜ?

 いざ 自分の写真が大きく育ってしまうと恐ろしくなった。

 よりによってこのタイミングで…

 それで俺は気がついた。

 これが生き霊というなら、これははカイのものではないのだろうか…
 でも、カイは自分の意思で生き霊を飛ばすことなんて出来るのか?

 それとも よく聞くように、カイから勝手に出てきた生き霊なのか…

 それにしても何を恨んでいるのだろう?
 ミュージシャンを目指していたあの頃のことだろうか…

 その時メッセージが着信した。

 俺は恐る恐る恐るメッセージを確認すると、麻里華ちゃんからだった

ー急で申し訳ないのですが大事な話があります 夕方 お会いできませんか?

 ああ、これで終わるんだ 、そんな気がした。

 俺はとても行ける状態ではなかったが、ここは行かなければ大変なことになる気がして、行くと返信した。



 昼間は ソファーに転がって、ダイキと二人 カイが立ち寄りそうなところを考えた。

「…結局 ネカフェ と 心霊スポットしか思いつかないか…」

「でも一人ならビジネスホテルもあるかもですよ。二人ならラブホ?」

「相手は誰だよ 」

「う一ん、行きずりの人。カイさんモテるし 」


そんな下らないことを言いあっているうちに、 思いついたことがあった

「そういえばカイって、東尋坊に行きたいとか言ってなかった?」

東尋坊というのは 福井県の景勝地で…有名な自殺スポットでもある。

ダイキも、

「そういえば俺も聞きました。ここで昼ご飯の時。テレビか何かで見て鳥肌が立ったって。海が禍々しくて、美し過ぎて心惹かれたって。」



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