あてれん家の人々

酒好きとぉちゃん、とぼけたじじ&ばば、盗み喰い大魔王のワンたちを書き綴ったある一家の恥物語。

あわくったのりこ

2013-09-19 | 介護
‘淡谷のり子’の本番を明日に控えていたあてれんは、大雨だった三連休の最終日を

南富良野で過ごしていた。

夕方3時。旭川に向かって走っている車の中であてれんの携帯が鳴った。

『・・・・・あ。職場からだ。』

すごくいやな予感がした。

一呼吸置いて電話に出たら相手は明日の敬老会の実行委員I君だった。

『あのぉ。明日の淡谷のり子の音楽なんですけど・・』

『はい。』

『CDとか、自分でなんとかして欲しいんですけど。』

『はいぃ?』


要するに、4つの事業所が合同で行う会場にはカラオケ設備がないらしく、

3連休前のI君の話ではCDを探して用意しますとのことだった。

当然、カラオケのCDなんてあるわけないので、あてれんはCDに合わせて

口パクで歌うマネだけするからという段取りだったのだ。

ちょうど、風邪を引いて声の調子も悪かったため、CDに合わせて口パクすれば

120人のお年寄りたちも楽しんでもらえると思ったし。

なのに、今さらCDも用意してないので自分で借りて来いだと?

『いや・・それはムリだわ。今、旭川じゃないし、

これから帰ってもまたすぐに出かけなきゃならないし。

CD借りに行く時間、ないですよ?』

あてれんは、ちょっとイラついていた。

なんで前日になって、しかもこんな時間になってからそんなこと言い出すのだ?


『じゃぁ、You Tubeで探して携帯に入れて、音をマイクで拾って流すとかどうですかね?』


『えー?携帯から流れる音をマイクで拾うの?それはさすがにないんじゃない?

一回You Tubeで探してみたけど、ちゃんとしたのなかったよ?』


だめだ。

もう、グダグダだと思った。


I君は『わかりました。じゃぁ、なんとかします・・。』

とだけ言って電話を切ったが、あてれんは憂鬱で仕方がなかった。

そして・・

最悪の場合は、アカペラで歌うことを決心したのであるっ。




その日の夜、湯船に浸かりながら本気で淡谷のり子を熱唱してみた。

『窓を開ければぁぁ~~~~港がみえるぅぅ~~~♪』

出だしのキーの調整とか、アカペラの間の取りかたとか、ブルースのビブラートとか、

素人なりにイメージしながら、何度も何度も別れのブルースを歌ってみたのである。

鼻歌で風呂に入ることはあっても、本気で歌ったのは生まれて初めてだ。

天国の淡谷のり子さんも喜んでいるに違いないくらいのレベルであったことは間違いないっ。



しかし・・。

120人の前で淡谷のり子をアカペラで歌う勇気・・。

ほとんどが認知症とはいえ、あのメイクにあの衣装、そしてアカペラ・・。

たった5分のステージにあてれんのストレスはマックスを迎えるであろう。


ベッドに入る前に、願いの叶う不思議な額に手を合わせてお願いしてみた。

『どうか明日は、無事に、うまくできますように・・。』

そしてもう一つ。

『できれば敬老会を中止にしてください・・。』

ま、それはありえない話だな・・と自分に言い聞かせ、不安な思いで寝たのであります。






本番当日。

敬老会は午後から。

午後に4つの事業所が会場に一気に集まり、敬老会が始まる。

なので午前中は各事業所で体操をしたりお風呂に入ったりといつもと変らない時間を

過ごすの。


この日、あてれんは朝の会の担当だった。

『おはようございます!』

から始まり、本日の一日の流れや小話、歌や体操など約1時間半にわたって

司会・進行を務めることになっている。


その‘小話’の話題であてれんは、前日から調べておいた淡谷のり子の生い立ちから

最期までをみんなに簡単に説明し、午後からの淡谷のり子のステージの伏線を敷いて準備していたのだ。




そしていよいよ午後になり・・

30人を引き連れ、淡谷のり子のステージ衣装が入った大きなカバンをぶら下げて

敬老会の会場へ向かったまではいいのだが・・・。


4事業所の高齢者のみなさんが一つの会場に、しかも時間通りに集まるのは至難の業だ。

敬老会は開演を30分オーバーしてもまだ始まる様子はなかった。

そこに、別の実行委員に『あてれんさん、淡谷のり子の音源は?』と聞かれ、

『ないですよ。アカペラでいきます!』と答えたら、

『そりゃーダメだわYou Tubeでなんとか探して、マイクで音拾ってやるしかないよ』と

I君と同じアイディアを言い渡されることになる。

『You Tubeで別れのブルースのカラオケなんて見つからなかったです。

しかも淡谷のり子じゃない人が歌っているバージョンが多いし、音も小さすぎて

携帯にマイク近づけても、この会場にどんだけ聞こえるのかわからないですよ?』

『でも音がないよりはいいから。』

『いや・・アカペラのほうが私はいいと思うんですけど。』



先輩相手に、少々言い合いになったが、どうしても携帯から音を拾うという

みみっちい音楽だけはイヤだった。それはもう、想像しただけでも寒い。

マイクのエコーさえ効いていれば、アカペラのほうがずっと迫力があると思った。


そんな土壇場でのやり取りを聞いていた実行委員長が耳を疑うような提案をしてきた。


『時間も押してるし・・淡谷のり子と小島よしおは

カットしてもいいよ。』
って・・・・。


『あてれんさん、それはまた、うちの事業所の忘年会のときに温めておいて♪』って・・・。




『えっ!?淡谷のり子、やらなくていいんですか?』


メイクも衣装もまだ手を付けていなかった。

正直、控え室があるわけでも、終わった後の洗面所があるわけでもないこの会場で

あの淡谷のり子に変身するのはすっごくすっごく面倒だったのは本心である。

実行委員長の気が変らないうちにあてれんは

『じゃ、やめましょう時間ないから仕方ないですね!淡谷のり子はまた今度ってことで♪』

と両手で大きなバッテンを作り、その場にいたスタッフに伝わるように合図を送ったのであった。


その後、敬老会はグダグダの進行により、やっぱり時間内には終わらず

実行委員長はとても大きく落胆して事業所に帰ってきたが

あてれんはプレッシャーから開放され、とてもいい一日を過ごした気がした。



ふと考えた。

もしかして、願いの叶うあの額のパワーだったのかもしれないな・・・・。



PS:タイトルの‘あわくったのりこ’は

あてれんの淡谷のり子を楽しみにしていた男性利用者さんが

あてれんに付けてくれた芸名です

いいトコついてるねぇ~。




今日は結婚記念日だった・・・。

2013-09-12 | 家族
美容室で『滝川クリステルみたいにしてください』とお願いし、

ばさばさと長く伸びきった髪を切っている最中に

とぉちゃんからメールが入った。




タイトル:ごちそう

本文:今日はごちそうだね。



一瞬の間ののち、全身の毛穴が広がる。



朝、トイレに座りカレンダーを眺めていたときに

『あ明日は結婚記念日かぁ。』

と寝ぼけた頭でぼんやりそんなことを考えていたのだが、そもそも日にちの感覚が

一日ずれていたので、とぉちゃんがメールをくれなければ明日が結婚記念日になってしまうところだった。



しかし、この『今日はごちそうだね』の一言が

どんなプレッシャーなのか、お分かりかね?



ご馳走ってなに?

刺身と寿司しか思いつかないあてれんは、出来上がった滝川クリステル風の頭で

とりあえずスーパーに向かったのであった。



ご馳走・・ご馳走・・・ビーフシチューか?



実は前日、クリームシチューを作ったばかりだったけど、

ごちそうと言われてビーフシチューしか思いつかない貧困な発想の滝川クリステルちゃんは

牛肉とワインを買って、なんとかテーブルをごまかそうと考えたのである。



結婚26年記念。

‘ごまかし気味のごちそう’のテーブルは、

ビーフシチューの残りのワインボトルを置いただけで華やかになった気がした。





そして・・・・


今年も例のロウソクは健在である・・・。







注;25までしか数字が書いていないため、この先はフリーらしい・・。




気になる滝川クリステルだが、




とぉちゃんには『オメー、ヨン様みたいだな。』と言われる。


たしかに、滝川クリステルというよりも、滝川クリクリシスギテルって感じだよな




淡谷のり子ショー

2013-09-12 | 介護
客席は半分以上が‘認知症’の高齢者である。


だからといって、手抜きはできないっ。


まだ少し熱っぽくてだるい身体を引きずって、あてれんは淡谷のり子ショーの舞台に立った。



司会の男性があてれんを紹介する声が楽屋に聞こえた。


『それでは、淡谷のり子の‘別れのブルース’です。どーぞー!』


イントロが始まると同時に幕が上がった。


腕を胸の前で組んだあてれんが登場すると、客席は一気に沸いた。



『窓をあけ~れば~♪』



少々鼻声ではあったが、あてれんの歌声はマイクを伝い、客席に響いていたようだっだ。


言葉の不自由なお客様が、一緒に歌っているのが聞こえた。


『頑張ろう。あの人だって歌っているんだから・・』



2番まで歌いきったとき、どっと拍手が起こった。

あてれんは、淡谷のり子風の上から目線の態度でお辞儀をし、幕の裏へと消えていった・・・・。


終わったわ・・。

これで私の仕事が・・・・。



・・・と書きたいところだが。



昨日の本番は、一度のリハーサルもなく行われ、不慣れな司会のウダウダな進行により、

催し物全体が本当に情けないものに終わってしまったのである



トップバッターはあてれんの淡谷のり子。

楽屋と書いたが、そんなものはうちの施設にあるはずもなく、カーテンで仕切られた風呂場の脱衣場がそれである。

トップバッターのあてれんは、一人で風呂場でメイクをし、アフロのカツラと借り物のドレスに着替え、

脱衣場で腕を組みながらウダウダの進行を待っていたのである。


『あれ?おかしいな。ちょっと待ってくださいねー。』とか

『淡谷のり子って、音楽いるの?』とか、

本番になってもそんなこと言ってる司会者に、ちょっとイラっとしたのは言うまでもない。


そして、やっと淡谷のり子の紹介が終わり、少しの間のあと‘別れのブルース’のイントロが流れたので

あてれんは淡谷のり子のスタイルで、脱衣場とホールの仕切りのカーテンを開け、出て行ったのだが・・



『あ!ちょっと間違った!もう一回!ごめんごめん!やり直すわ!』


とまた司会進行のドタバタで、一旦カーテンの裏にあわてて引っ込み、


2回目のイントロで再登場となったわけである。



想像してほしい・・それがどんなにこっ恥ずかしいことか・・。



当然、客席の驚きも笑いも半減である。


お笑い芸人にとってこれはぜったいに納得のいかない舞台である。



おまけに風邪が治りきらずに鼻声で高音も低音も出ず(意外と音域が広い歌なのだ)

あれほど司会者に頼んでおいた‘マイクエコー上げてごまかして!’の注文も忘れられており、

客席で歌う声に助けられ、5分間のステージが終わったという結果である・・・








しかーし!!!!



あてれんには、まだチャンスが残っていたっ



昨日の本番は、うちの事業所独自の敬老会であり、

17日には4つの事業所全部が集まる合同の大きな敬老会があるのだ。

今度はそこでまた、淡谷のり子を披露する



17日の大きなイベントは、司会も慣れた職員がやるので

きっときっと大丈夫であろう。

客席も昨日の4倍、120人くらいの利用者さんが集まる予定である。


次こそは絶対に湧かすぞ~~~~


(最近、自分がどこに向かっているのか分からなくなることがある。)





楽屋・・・・脱衣所にて撮影。







次ぎは天童よしみをやりたいと強く思うあてれんであった・・・。



2大イベント

2013-09-10 | 遊ぶ☆
今月は前半に大きなイベントが2つもある。

一つは、赤い糸~のブログにもUPしたが、里親さんたちの同窓会を企画していた。

(詳細は‘赤い糸’をご覧ください♪)



この同窓会は、奇跡の天気により大成功で無事に終わった。



さて、もう一つ、あてれんの頭の中の半分を占めていたのが・・・・


敬老会での淡谷のり子である。


『あてれんさん、淡谷のり子頼むね。』と職場の古株女子から言われたあの日から

あてれんは日夜淡谷のり子の歌を練習し、メイクをイメージし、友人の娘さんにドレスを借り、メガドンキで紫色のカツラを

買って、晴れ舞台に備えている。



ところが・・・。


先週の土曜日から、喉の調子がおかしいのだ。

イガイガするし、なんか身体がだるい・・。

風邪薬を飲んで、なんとか日曜日の同窓会には体調も回復したかのように思えたのだが・・。



日曜日の同窓会で張り切って大声を出しすぎたせいか、

月曜の朝には、ついに声が出なくなっていた・・・

淡谷のり子は水曜日である。

なんとかそれまでに治さなくては



症状はどんどん悪化していった。

月曜日の夜にはついに熱が38度まで上がり、全身の関節と筋肉が痛み始めていた。

尋常じゃない大汗をかき、市販の風邪薬を飲むも効果はなし・・。

今日(火曜日)の勤務は代わってもらうことにして午前中に病院へ行き、一日ゆっくりと休むことにした。



今朝の熱は37.3度まで下がっていた。

少しだけ体が楽になった気がする。

よし・・今のうちに淡谷のり子のメイクの練習しとこー。


あてれんは朦朧としながらも洗面所で顔を洗い、アイライナーと水色のアイシャドーを思いっきり使って

自分の顔に淡谷のり子を描いてみたのだ。

ついでにカツラも被ってみよう・・・。


うん。イケル


『発熱中ですが・・。』



メイクも完璧、衣装もバッチリ。あとは体調だけだ。

さぁ、身体が動くうちに病院行って薬貰ってこなくちゃ・・。



せっかくの淡谷メイクを落とすのももったいなかったが、まさかこのまま外出するわけにもいかないし

クレンジングで一気に落とす・・・・落とす・・・・えっ?


落ちないんですけど・・・♭


もう、頭の中は大パニック。

なんでクレンジングで落ちないの?

化粧品販売の友人に泣きそうになって電話してみたら、


『オイルクレンジングじゃないとダメだわ』ってことが分かり、


しかし、うちにはオイルクレンジングなんてあるわけもなく・・




台所に走っていってオリーブオイルを顔に塗りまくり、

なんとか淡谷メイクは落とせたのでありました。



この後、病院へ行って点滴をし、薬を飲んだが熱は上がる一方です

本番は明日・。

神様。どうか明日には元気になっていますように



冷やしラーメンへの熱き思い

2013-09-01 | とぉちゃんの巻き
今年の夏・・


いったいどんだけ冷やしラーメンを食べただろう・・。



冷やしラーメン好きのとぉちゃんの週一リクエスト。















ハムもキュウリもないこともあったっけ・・・。






とぉちゃんは、冷やしラーメンの具にこだわりを持っている。

卵とキュウリとハムだけでいい。

ハムを高級鶏ハムに変えても、野菜にモヤシを足してもダメ

『あー。余計なもの乗せたらまずいっ!』って・・・。



もう一つ、あてれん家の冷やしラーメンのルールは、自分で好きなようにトッピングをすることである。

当然、ぐじゃぐじゃなのはとぉちゃん作だ。

センスのかけらもないのは見て分かる。

それでも彼は大満足で冷やしラーメンをすするのである。


その週一冷やしラーメンも、秋の気配とともについに(やっと)先週で終わってしまった。


『あーあ6週続いた冷やしラーメンもこれで最後かぁ


冷やしラーメンとの決別の季節にとても残念そうな表情を浮かべる。



『あてれん。冷蔵庫に残っている冷やしラーメンのタレは、見ると思い出すから捨ててくれ。』って



あんた・・・。


相当バカだよね