紗羅のアトリエ

Healing Art 美しいもの 楽しいこと 2007年春より食道がん患者 

小春日和

2007-11-14 | がんとのお付き合い
東京都心より2度ばかり気温が低いという千葉県柏市。なるほど。木々がすっかり秋の色。日差しが眩しく、空が高く、空気が肌に心地よい。ごきげんな小春日和。こんなにいいお天気の日に、目指すは我らががんセンター。

「紗羅、ダイジョーブー?」
枕元にk-ko。内視鏡検査を終えた私のそばでいつものように笑う。

この日、私は採血とCT。そして大嫌いな内視鏡検査。この春見つかった食道がんを化学療法で治療し、退院してから2度目の検査です。検査結果は11月30日。完治にはまだまだ時間がかかりそうな・・そんな今日の手応えでした。

k-koはがんのキャリアで、この厄介な病気の先輩でもある友人です。この日、k-koは入院。新たに出来た食道がんを内視鏡で切除する。なんとまぁの久々の入院です。

数年前に下咽頭がんの発覚でスタートした彼女の闘病生活。その最初の頃は咽頭部から食道へと、がんのもぐら叩き状態でした。ハズバンドのりゅうちゃんがメールで送ってくれる病状報告を読むだけで、なすすべ無く、遠くで見守るしかなかった私たち。
果敢に闘い、元気になってからしか会おうとしない彼女の生き方。その潔さ。

なのに私の罹患を知るや、k-koはフルエンジンであらゆる事で支えてくれました。病気への対処からメンタル面から読む本まで・・・手作りの料理を届けてくれたこともしばしばでした。

電話があると「どこから掛けてんの」と聞いてみる。「いまムンバイ(インド)」「新潟よ。ウラジオストックから帰ったばっか」信じられないフットワークでばりばり仕事をしているk-ko。私は甘えっぱなしです。
この日のk-koは患者さん。さっさと自分の入院手続きを終え、病室に荷物を置いて私の様子を見に来てくれる。

「心電図が何時になるかまだ判らないのよ。紗羅を送りがてら一緒に食事に行こうと思ったのに~」

内視鏡の手術は何度もしたことがあるから大丈夫。早ければ5日位で退院出来るかもしれない。慣れているから問題ないよ。と、彼女は言うのです。

検査を終えて、k-koに送られ、病院の外に出る。眩しい日差しに目を細め、カサコソと枯葉を踏んで歩く。肩をならべてゆっくり歩く。高い高い空の下。青い青い空の下。

「どっか行きたいよねー」
「ホントにねー」
「送って行けなくてごめんねー」

ひとり家路に着くワタシ。見送る彼女の温かい視線を感じつつ、振り返ることが出来ない・・・。

食欲の秋!

2007-11-08 | がんとのお付き合い
ずいぶん間が空いてしまいました。
アトリエサラを片付けるに当たり、だらだらと悩んでいるだけで、どんどん時間が経っていきます。疲れやすいのはどうやら身体だけではないようです。脳味噌がウニ~~~!

はい。元々ウニは好物なのですが、化学療法を終えて退院してきた食欲の無い時にも、ウニでご飯が食べられました。先日、従妹が気仙沼の塩雲丹を持ってきてくれたので、しみじみと新米の甘さを楽しんでおります。あぁ~、ご飯が美味しい♪

そうそう。ウニの話じゃなくって食欲の話です。空腹感、そして美味しく食べられるということの幸せ・・・。最近徐々に、いや、めきめきと取り戻しています。食欲!

がんに侵された食道のせいではなく、化学療法が色々なな味覚障害を引き起こします。嗅覚も過敏と言うか異常と言うか・・・。野菜、それも菜っ葉類が気持ち悪くて食べられなくなりました。新聞や書籍の紙?インク?のニオイが耐えられなかったんです。(本を読む時は口呼吸でガンバル)いろんな事があんびりーばぼー!!!肉も魚も長いことダメで、お水すら口に苦かった。何を食べていたのかというと、甘いものと酸味の無い果物。一生分のアイスクリームを食べたような気がします。

8月21日に退院してきて、最初に我慢して食べたのがご飯とお味噌汁です。それから少しずつ増えたメニューが、納豆、雲丹、おこわ、メカブ、茄子の漬け物。他のものは色々試しましたがひと口でダメ。なので、これらが2ヶ月ほど続きました。いやぁー、日本人ですねぇ。変ですねぇ。

2週間ほど前から、だいぶいろんなものが食べられるようになってきました。味覚が過敏になっているのか、添加物の多いものはダメみたいです。買ってきたお弁当は大抵ダメ。でもホント、この頃は野菜も魚も、自分でも驚くほど良く食べられるようになり、そして何より米がウマイ。こんなに嬉しい「食欲の秋」は初めてかもしれません。体重もじわじわと増えております。

塩と昆布で揉んだだけの蕪がウマイ。自分で醤油漬けにしたイクラがウマイ。焼いた茄子をオリーブオイルと塩だけで食べるのがウマイ。雑穀を入れたご飯がウマイ。えっとせとらぁ~♪以前はあまり気にしなかったのですが病後はやはり無農薬野菜が食べたくて、友人知人のお世話になっています。

お話変わって・・・、
皆様にご心配かけました我が愛しの仙台箪笥。最高の行き先が決まりました。仙台に里帰りです。箪笥がダンスしております。

「そうかそうか、お前はそこに行きたかったのね~。どうして早く気付いてあげられなかったんだろうね。ごめんごめん。いやぁ、ホントに良かったわぁ」

箪笥にも気持ちがあったようです。ようやく会話が成り立つようになった今日この頃、詳しくお伝えするためには本を一冊書くほどのエネルギーが要るので、ごめんなさい、このストーリーはあえて割愛いたします。

本当にお騒がせいたしました。一緒に悩んでくださった多くの方に感謝!ありがとうございました。

しかしまあ、具体的なお片付けは、始まったばかりです・・・。