紗羅のアトリエ

Healing Art 美しいもの 楽しいこと 2007年春より食道がん患者 

Departures

2009-02-24 | Healing Art
Departure=空港をイメージする単語です。
ArrivalのないDeparture・・・Departures.
逝ってしまったたくさんの、愛しい人たちのことを思い出しました。

アカデミー賞、外国語映画賞受賞!オスカーを誇らしげに掲げた日本映画人の話題で沸き返った昨日、「おくりびと」のDVDが手元にあったのでタイムリーに観賞することができました。友人が送ってくれた業界関係者用のサンプルDVDです。
「Departures」=「おくりびと」(邦題)

劇場に足を運ばず、自室でDVDを観ることの特に多くなったこの頃のわたし。映画の感想は、なんとなーく照れくさくて書けないことが多いのですが、久しぶりに日本映画でだらだら涙を流し、ぐしゅぐしゅと洟をかみましたので、報告します。

葬式体験は多いほうだと自認しておりますが、納棺師という職業があるとは知りませんでした。故人をきれいにして棺桶に納める職業です。
ここで描かれたような納棺の仕事があるのなら、これもまた、亡くなった本人と家族にとってのHearing Artだな、と感じました。

納棺師という仕事を通して生きるということを考え直す、そんな映画です。笑い話のように織り込まれる幾つかのストーリーに深みがあって、キャスティングも見事。

物語の小道具として何でもない小石が出てきます。手のひらに乗るような石に父子の愛が伝わる・・。石にも意思がある・・・

生きて死ぬという当たり前のことを、こんなふうに世界に通じる普遍的なこころの問題として扱うことも出来るんだと、感心しました。

死というものが日常から切り離され、穢れとして扱われることに疑問を感じている私にとって、とても共感できる作品です。
死は断じて穢れではありません。
死に関係する職業も決して差別されることがあってはなりません。

願わくは、劇場に足を運んでご覧になることをお奨めします。


写真はヴェニス在住のSさんが送ってくれた、
ヴェニスの朝焼け。

ちゅうぶらりん

2009-02-19 | がんとのお付き合い
Dr.D  「入院の予約を入れて下さい」
紗羅  「えっ?超音波検査でやっぱりがんだったんですよね。」
Dr.D   「転移です。詳しくはPETの検査が出ないとわかりません。でも切るなら早い方がいいので入院の予約は入れておいてくださいと、そういうことです」

紗  「手術できるんですか?」
Dr.D  「わかりません。抗がん剤とか放射線ということもあるかもしれません」
紗  「打つ手はあるんですね?」
Dr.D   「わかりません。PETの結果を見た上で、火曜日のカンファレンスで相談してみます。それ以前にこれ以上の質問にはお答えできません。来週また来てください」

紗  「来週は予定を入れてあるんですが・・」
Dr.D  「再来週でも全然問題ありません」
紗  「では再来週、3月5日に伺います」


今日ハッキリしたのは、頚部の腫れはやはりリンパ節の転移がんであるということ。それだけ。それ以外は全て未解決のまま、宙ぶらりん状態の2週間に突入です。はっきり言えるのは、数度目のがん宣告であること。

来週病院に行ったところで何も得することはないとのことで、来週は以前から誘われていた小旅行の予定を決行することにしました。

スバラシイ心はずむ予定なのです。ふっふっふ。
仙台に住むの兄夫婦が手配してくれた、車で三泊の伊豆への旅。「からだとこころを癒すスペシャル・コース」なのです。この報告はいずれまた~。

Antique Collection

2009-02-17 | My Favorite Things
ZORRO Antique Collection

2009、2/19(thu) Start!
Open:11:30~19:00

gold & silversmith
ZORRO〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-44-11-1F
Tel 03-5774-8221

ゾロ」はオリジナルジュエリーに加えて、アンティークジュエリー、宝石のリフォームなどもしてくれるユニークなジュエリーショップです。

フランス骨董を20年近く仕事にしていた私には、ちょっと世界的にも(?)自慢できる私的コレクションがありました。19世紀末から20世紀初頭に創られたフランスのメタル(金属)ビーズのバッグとアクセサリーです。

フランスで骨董品を仕入れるのは、とてもスリリングな仕事でした。
蚤の市でも、一般の人の来ない曜日の早朝、暗い街角や車の荷台、建造物の隅などで現金取引が行われるのです。眼力と勘と度胸の勝負で札束が行き交います。どんなに高価な物でも、ブツは新聞紙にざっくり包んで持ち去ります。冬場は懐中電灯が必需品。

朝の6時ごろから10時ごろまでの真剣勝負。業者取引の時間が過ぎると、カフェで一休み。急に空気が緩んでみんな顔付きまででれ~~~んと緩み、足取りもゆる~~~くなります。

そんなフランスでの仕入れの合間に根気良く集めたメタルビーズ。とても珍しいもので、その当時から希少品でした。月光のように静かに光る金属のビーズ・・・。何時かどこかで展覧会をしたいなぁと漠然と思っておりました。

病を得て、梅ヶ丘の仕事場、アトリエ紗羅を閉める時に、意を決してこのコレクションを手放しました。きっと身軽になるべき時が来たのだと判断して。

優しい眼差しの奥に喜びの光を湛え、このバトンを受けてくださったのがZORRO さんです。手入れして何時かお披露目してくださると・・・。

2月19日からの3日間、イギリスで買い付けたアンティークジュエリーと共に、43点のバッグを展示すると丁寧な毛筆のお便りをいただきました。見に行かなくっちゃ!。いそいそ・・・。

木、金、土の3日間ですが、お時間のとれる方は是非お運び下さい。
場所が分かりにくいのでZORROさんのホームページの地図をしっかり確認して行ってくださいね。

また来週・・・

2009-02-12 | がんとのお付き合い
「来週、11時からPET-CT、その後超音波検査(エコー)を入れましたから、それらが済んでからまたここに来てください。」

「これががんだとして、治療方法はあるんですか?」

「検査してから話しましょう。」

千葉県柏市、国立がんセンター東病院。今日は6時起きで電車に乗って出かけました。D先生との2ヶ月ぶりの面談です。D先生の外来は週に一度、木曜のみ。頚部の腫れと痛みについて訴えると、触診の後、即、上記のような段取りがとられました。3月に予定していたCT検査も前倒し。

昨年12月18日の外来ではCTも血液検査の結果も異常無しで、頚部の腫れも問題にならなかったのですが・・・。あーあ。今日のうちに超音波に回される覚悟でいたのに、まとめてまた来週~ということになってしまいました。

腫れているのが筋肉の上なので、D先生も首を傾げておいででした。
私としても、リンパ節のがんがまた?・・いや、もしかして凄い肩凝り?・・などなど思い悩んでいたのです。

D先生はいつもながらの忙しそうなご様子。なかなか突っ込みを入れることが出来ません。まあ、悩んでも始まらないのは確かですけどねぇ。

異常があったら電話で連絡するようにと言われているのですが、一体どこからが異常なのか。患者という立場の人間は大いに迷うものです。気楽に相談できる所があればいいなと、本当に思います。

多すぎる患者と少なすぎる医者。入院患者を長く居させることの出来ない病院側の経済的な事情。etc.etc...医療も年金も高齢者問題も、どっちを向いてもため息ばかり・・・。

簡単に語れることではないけれど、医学と代替療法(東洋医学や近代西洋医学以外の民間療法)と宗教、日本に於いては特に仏教が手を結んで進んでくれればと、切に願うこの頃の私です。

カラスがワン

2009-02-10 | My Favorite Things
カラスが一羽います・・・という意味ではありません。

今日の羽根木公園で撮ったこの写真。
時計の上のカラスに注目!。
音付きの動画ではないのが残念です。

梅ヶ丘で仕事をしていた時、気になって仕方がなかったいろんな鳴き方をするカラスたち。「オハヨー」と鳴くカラスは街でも知ってる人が多かったけれど、わたしはこのカラスのやつも気になっていたのです。
ワンワンと鳴くんです。

いたいた。こいつに間違いなし。というわけでちょっといい現場写真(?)が撮れました。
犬を散歩に連れてくる人も多いこの公園。
ベンチで暖かな陽射しを浴びていると「ゥワン、ワン、ワン」
地上と天空から聞こえ二重奏。のんびり。

一昨日はひさしぶりの電車でお出かけ。
強風の中、代々木公園近くでテント公演している憧れの Cirque du Soleil の「Corteo」を観に行ってきました。Corteo=葬列。天国へ旅立とうとしているクラウンの夢見る陽気な葬列、というコンセプトから創られた作品です。

このサーカス団、シルク・ドゥ・ソレイユに対しては20年以上の思い入れがありました。
悲願の生ファンタジー世界にやっと出会えたのです。体調も安定していてわっくわっく。

期待し過ぎたということでしょうか。演出面で食い足りない所が少々・・・気になる場面を随所に感じ取ってしまいました。素直に楽しめばいいのにねぇ。それと折角の生演奏が生に聞こえないのが残念。
でもやっぱりすごい。たっぷり観せて、しっかり魅せてくれました。

圧巻だったのは、クラウンのかつての恋人達という設定の女性たち。
初っ端で見せてくれた、巨大なシャンデリアと共に揺れる(ブン回る)4人の下着姿の美女達のアクロバットは見事!そして息もつかせぬ究極の肉体表現の華やかさ。やはり圧倒され続けました。

そして終章に近く、吊るされた真っ白な長い2本の布を操り、空中を飛翔する青いドレスのブロンド美女のエロティシズム!。これには感動のあまり、涙が溢れてしまいました。歌いながらのアクロバットで、その歌もすごかった。いやいや、すごかったすごかった。

家を出てから帰り着くまでの5時間!。私のからだもなんとか持ちました。とってもステキな、手術後初のお出掛け。幻想的なスバラシク美味しい冬のよるでした♪

2009-02-04 | Weblog
立春の今日、東京の空はどんよりです。
昨日の昼はまぶしい陽射しのぽかぽか陽気。手袋の要らないあたたかさを羽根木公園で満喫しました。今年の梅祭りは2月7日(土)から3月1日(日)までとのこと。

ロンドンの大雪情報に驚いていたら、1日は一日雪だった、とヴェニス在住の知人からのメール。雪のヴェニスかぁ・・・。

北イタリア全体が凍ったそうです。雪が積もったミラノのドゥオモの絵葉書を見たことがありました。それほど珍しいことなんですよね。今回ミラノでは囚人が雪かきに動員され、数年ぶりの外出と雪に興奮して、がんがん雪を片付けていたそうです。

数年前まで1月~2月はたいていヨーロッパを歩き回っていましたが、都市部での仕事が多かったため、雪の思い出はあまりありません。でも・・。

空から雪だるまが降ってきた。

雪をめぐる思い出の引き出しから、こんなものが出てきました。
冬には珍しく晴れた日のパリの午後です。陽射しを楽しむべくカフェテラスでお茶を飲んでいると、コロ、コロリ。ちっちゃな白い丸いものがコートの袖を伝って落ちました。

なんだろうと目を凝らすと、まん丸な雪の玉。雹でも霙でも霰でもなく、小人が丸めた雪の玉としか言いようのない、ホントにまん丸な雪の玉です。直径3㎜~8㎜くらいのそれが、ほろりほろりと空から落ちてきて私のまわりで舞いました。手の平に乗せれば体温で溶けていく、まん丸な雪のかたまり。

なんだったんでしょうね、あれは。短い時間のことだったと思います。驚くと同時に楽しかった、幻想的な思い出です。妖精にたぶらかされたみたい。

今年の東京は雪の積もることも無く春を迎えるのでしょうか。

写真は昨日の羽根木公園。藤牡丹という名の梅の花。前回の写真の更なる開花です。