山とアート

2008年から八ヶ岳南麓に移り住み、庭に小さな菜園を作りながら、知り合いのギャラリーや工芸作家のお手伝いをしている日々。

土屋範人展@アートフロントギャラリー

2011年03月27日 14時53分18秒 | アート

大勢の人々の工夫、節電の成果が出てきているようですね・・・今日も計画停電がなくなったので他の電気は消しつつもPCを立ち上げました。本来なら12日に書いていたはずのレビューです。

地震の前の日3月10日に上京してすぐ代官山のアートフロントギャラリーへ行きました。

ヒルサイドテラスにある素敵なギャラリーは「大地の芸術祭・越後妻有トリエンナーレ」や「瀬戸内芸術祭」などで有名な北川フラム氏の会社経営です。以前は版画の販売店になっていたスペースが広いギャラリーとして再生していました。

土屋さんは芸術大学の日本画で学ばれましたが、伝統的な素材を使いながら現代の表現で制作していらっしゃいます。最初にギャラリー舫で個展をしていただいた時から、無駄のないストイックな表現に衝撃を受けその後の変化にも興味を持って拝見しています。

ギャラリー舫では飾れなかった大作ものびのびと展示されていてうれしい・・・

「KIKU」和紙(薄美濃紙)、発泡樹脂、洋箔、岩絵の具、顔料、アクリル

彼の作品は発泡樹脂を土台としてくぼみを作り、ぴったりと和紙を張り付けてから絵の具を塗り、更にそれをこそぎ落として表面を平らにするという面倒な工程を踏んで作ります・・・作品自体は薄くて軽い板ですが厚塗りしたのと同じ密度の濃い絵の具が重ねられています。

色の濃いところは絵の具が盛り上らず支持体の中にのめりこんでいる・・・といっても分かりにくいですかね・・・それはさておき

日本画に使う岩絵の具、顔料がたっぷり使われていて艶のない重厚な色合いでありながら、現代建築に溶け込み和室でも落ち着くというタイプの作品ですが、一方で自分の表現したい目標にむけてあらゆる素材を研究しつつ、地道に制作している作家の姿勢に頭が下がります。

あいにく3月13日が最終日でしたのですでに終了しておりますが、観ていただけなかった方へのご紹介でした。

 

 

 

 


旧フランス大使館

2010年01月29日 22時28分15秒 | アート
フランス大使館が建て替えのため取り壊されるのだそうです。昨年11月からその建物を使ってアートイベントが行われていることはきいていましたが、なかなかいけませんでした。
もう30日までで終わってしまう・・・しかも木・金・土しか開いていない・・・28日に山に帰る前の午前中に行ってきました。

生まれてからずっと東京育ちなのに、ご縁はなくてフランス大使館には行ったことがありませんでした。大体すぐ近くの天現寺にあったことも初めて知りました・・・もっと早く行っておけばよかった

http://www.ambafrance-jp.org/spip.php?article3719

10時をちょっと過ぎた頃天現寺橋から歩いていくと、結構多くの人がぞろぞろ歩いています。

こんな門が現れたら迷うことなくわかりますね
みんなが写真を撮っていました。

入場は無料ですが募金箱があったので、コインを入れて中に入ると・・・もうこんな感じでたまりません真新しいプジョーに惜しげもなくピンクのペイント

入り口の風情はなんだか、美大の学園祭風です

大使館のスタッフがお仕事していた事務室の壁も惜しげもなくペイントされてます。

廊下も一面に作品が並べられていて、作品の量もすごいものです・・・やはり学園祭か?

当然のように階段も意味ありげな赤・・・この上の窓には「鼻血」という文字の赤いネオンサインが輝いているのです

しかし職場としては、各部屋緑が目に入る大きな窓があってとても素敵な環境。

かつてビザの審査でもしていたかもしれない机の上は牧場と化し・・・

日本庭園風の立ち木にも赤いロープの作品・・・これは木の形もよかったせいでしょうか、とても美しいたたずまいでした

古い本の表紙とガラスを組み合わせた不思議な「本」ですが、この部屋の空気にぴったり合って気持よい

この部屋には入れません・・・ぎっしり詰まっているのはシュレッダーで裁断された辞書の山です。

突然声をかけられたら太湯雅晴さんでした。彼はデジタルプリントを使って「お札もどき」を作る人です。シニカルでユーモアのある作品です。

今回も自画像をプリントして零円札のポスターを展示していました。暗室の中を観るとこのポスターをいただけるそうです。

5階と屋上には結構過激なグループが、めちゃくちゃにみえて実は奥が深い・・・?かなあ??ちょっと好みからはずれるのでパス

でもこの部屋は面白かった窓の外にいっぱいの事務機器が・・・怖いです

感心したのはAir Franceの事務所だったらしいところ・・・航空会社の人が堂々アーティスト宣言です

キルトの作品は結構きめ細かくて見ごたえありました・・・混みあっているのは狭いだけでなくて人気があるのですねー

カフェテラスの壁にも絵が

外には今まで大使館内で使われていた事務機器や家具を引き取る人を募集していて、リサイクルの意識もかなり高いものだと納得しました。予約済み札のついたものもたくさん

私は映像作品やビデオはあまり好きなものがないのですが、今回は佐藤雅晴さんの映像作品「calling」がもっとも印象深いものでした。写真では紹介できませんが、よくある風景や室内にころがっている携帯電話が鳴り続ける・・・実写なのかアニメなのかこの世に存在しない画面を作り出していて、動画も組み合わされた新しい絵画という極めて新鮮な感動を覚えました。最近あまりにたくさんのアートを観ていると若干感覚が麻痺してしまうのか、なかなか「感動」しなくなっていて・・・久々でした。
後でネットで検索したらドイツ在住で、すでに多くの個展をしている有名作家でした。他の作品も観てみたいです。

全体としては「取り壊される建物」を自由に使って、様々な表現があって"Noman's Land"というテーマもはっきりしている良くできたイベントでした。入場者の多さも驚きでした


そしてもうひとつ印象に残った部屋はここ・・・アートなどどこにも何もないような・・・単なる事務室そのままみたいな・・・地味なインスタレーションですが、つい今しがたまで大使館の人が仕事していたのかな・・・と思わせるような空気が妙に頭に残りました。
作家の名前は・・・見忘れましたどなたかわかったら教えてください。
バスの時間が迫っていて全部を観るのには時間が足りませんでした

会期が延長になって2月18日までやっているそうです

オープンアトリエその2

2009年09月21日 19時59分04秒 | アート
以前「あしはな」の展示でも紹介した、家具工房YASUSHIの清水泰さんの作品は、理工系出身の極め付き頭脳的家具・・・と私が勝手に解釈してますが、形の美しさも洗練されています。
とはいえ、勿論「手の仕事」が生きていて、なんといっても釘を使わずすべて木の組み合わせで作られているのが気持ちよいです。


元自動車の部品販売所だったという建物がアトリエです。木工の仕事は大きな材木を切るときに音も大きいので、人家から離れた広い場所が必要ですね。

一見普通の食器戸棚に見えますが、隅々まで神経が行き届いた逸品。

手前のテーブルは縁が繊細で全体もシャープな線。

子供用の椅子ですが、椅子として使わなくなれば小物を置く小さな台にもなりますし、楽しい形です。

なにげない普通の棚にみえますが・・・何故かどこか普通と違うのです。気になって何度も観たのですが・・・何が違うのかわかりません。

清水さんが答えを教えてくれました。
まず、縦の支えの部分はわずかに曲線、弧の形なのです。そして横板は手前から少しずつ幅が広くなっていて、長方形ではないのでした。そのわずかな要素が全体を柔らかいイメージに見せていたのです・・・脱帽。

この椅子も正方形ではなくわずかな傾斜と変形で、飽きない楽しさ。

組んであるところの突起に丸みをつけているのも独特で、こげ茶の素材は楔の役割だそうです。これが打ち込んであるために組み合わさった部分がゆるまない・・・構造的に強化する意味と、違う色の素材がアクセントになっています。
家具を作る場合は当然のことらしいですが、何年も寝かせて乾燥させた素材を使うので出来上がるまでの行程は想像以上の時間がかけられています。使う人にもそれが伝わってくるから、大切にしたくなる気持ちになるでしょう。
清水さんのHPは↓

http://www1.ttcn.ne.jp/~kobo-yasushi/

なんと!赤いそばの菜っ葉をたくさんいただいてしまいました。ゆでてから甘辛つゆとかつおぶしをまぶしたら、すご~くおいしかったです。そばの菜が食べられるとは知りませんでした。
ごちそうさま

オープンアトリエその1

2009年09月20日 21時36分43秒 | アート
昨日から始まった八ヶ岳のアート&クラフトネットワーク「おらんうーたん」の作家たちのアトリエ訪問しました。
作品制作している仕事場というのは、普通は公開しないものですね。制作に集中するための場所なのですから。
しかし、その仕事場を年に一度見せていただくことができて、その場で直接作家から購入することもできる「オープンアトリエ」というイベントはもう何年も前から開催されていました。
いつもこの時期は忙しくて八ヶ岳に来ることができなかった私は昨年初めて拝見しましたが、あいにくの土砂降りだったのでごくわずかのアトリエでした。
今日は素晴しい快晴で久しぶりに富士山もくっきりの秋晴れ・・・ドライブしていても景色にうっとりしてしまいます。

結構色々観てまわりましたが、全部をご紹介できないのでいくつか・・・
これから少しづつ他の作品もご紹介します。

まずは代表でもある、鉄の作家上野玄起さんのアトリエを訪問しました。

車を停めるともう目の前に作品が。


まさにオープンな工房の入り口。左の玄関からカッコいいワンちゃんが出迎えてくれました。

この赤錆は2年くらい風雨にさらされてこのような色になりました。背景の緑との対比が実に美しいです。

上野さん独特の細い線の組み合わせを生かした作品が自然の中に溶け込んでいます。

小品も野外に置いてあると錆の色が映えますね。

今日は展示即売もしているのでお宅の中も拝見できました。

この作品にはオルゴールが仕込んであって、形と饗応する音楽も流れます。
錆具合も程よく渋い色です。

作品とは関係ありませんが、すごいアンティークの戸棚にもみとれてしまい。
なんとイギリスのものだそうですが、こんな彫りの深くて珍しい南洋の植物などの装飾は初めて見ました。

私が帰ろうとしたらワンちゃんが寂しそう・・・そんなに私と別れるのが悲しいのかしら?
いえいえ、お客様が大勢でただ疲れただけみたいでした・・・

上野さんのHPは↓
http://blog.goo.ne.jp/morikaji
続きはまた明日。