5.瓦葺き 入母屋(日本家屋構造) 

2023-06-05 11:35:12 | 同:屋根

9)入母屋造り

  [入母屋の妻壁の位置]     文中のG書体、改行及び図中の文字は編集によります。

 『入母屋の妻』      古寺建築入門 岩波書店刊より

 『古代の建物では入母屋の屋根のは側面の入側柱(いりがわばしら)通りの上に位置した。

  母屋(もや)(ひさし)の関係からすれば、入母屋の妻は当然入側柱(いりがわばしら)通りになるはずである。

  しかし野屋根(のやね)が発生して、(ひさし)部分の屋根が化粧垂木(けしょうたるき)野垂木(のだるき)の2種になってくると、

  化粧垂木の勾配を緩やかにして軒高を少しでも高め、逆に野垂木は勾配を強めて雨仕舞いを考慮することになる。                             

  ところで、妻側の庇の屋根の勾配が強まると、入母屋の妻も必然的に高まることになり、全体に屋根と妻の納まりが不釣合いになるので、

  中世以降には、入母屋の妻の位置を入側柱通りより外側に立てる例が多くなる。

  この場合はの長さも長くなり、の三角部分も大きくなる。また妻飾りも複雑になる。』 

入側柱上に妻壁がある例

  新薬師寺本堂  8世紀中頃 古寺建築入門 岩波書店より

 

 平面図・側面図・桁行断面図 日本建築史基礎資料集成四 仏堂Ⅰより

・外側に妻壁がある例

 喜多院 1640年頃 埼玉県川越市 桁行断面図・西立面図

   

 

 平面図 

日本建築史基礎資料集成十七 書院Ⅱ 中央公論美術出版より 

 


・簡素な入母屋屋根の瓦割付け                                         

妻面化粧小屋束位置の決め方  

 軸組図             

 参考図書 日本の瓦 坪井利弘著 新建築社刊

流れ方向梁行断面の枚数」の割付けを検討し、           軸組図

同時に「妻軒方向A」「平軒方向B」の軒の出が最終的に同じ長さになるように瓦枚数の検討を行う。

(瓦はきつく葺いた方がよく、若干の摺り合わせが必要になる場合が多い。瓦の隙間が広いと雨漏りや吹き上げの原因となり、

 小さ過ぎると瓦が割れたりするため、一般的に摺り合わせは2~3㎜程度。)

② また、「妻軒方向」の瓦割りAは、妻面の拝み巴の中心線と桟瓦の桟心(または谷心)がほぼ揃う割付け」を検討する。

③ 瓦の「桁行方向の割付:B」に従って、破風板奥の妻壁面の大きさを「妻面の流れ方向の瓦枚数:C」によって検討し、化粧小屋束の位置を決める。

   (上図の場合は、妻面の流れ方向の瓦を5枚としている。)

④ 破風板の位置は、平葺き方向の瓦との納りで決まるが、大棟より風切丸(かぜきりまる 袖瓦と桟瓦の継目に載せる丸瓦)や

  降り棟(くだり棟 大棟から流れに沿って熨斗・丸瓦を積み先端に鬼瓦を据える)を設ける場合もある。

 


日本家屋構造 齋藤兵次郎著 明治39年発行】      G書体は編集によります。

  

隅棟 四篇取(へんど)り鬼板書方

鬼瓦鬼板おにいた)の正式なる割り方は破風の幅より定むるものとす、図は普通隅棟四篇取(へんどり)鬼板を示すものとす。・・・・・

・・・・棟積重(むねのつみかさ)ねに於(おい)何篇取(なんべんとり)とは、平(ひら)の屋根瓦上に、熨斗(のし)及び(かんむり)を重ねたる数にして、例へば四篇取りとは平屋根瓦上に、熨斗瓦三通(とおり)冠瓦一通を積み重ねたるものにして、三篇或(あるひ)は五篇取るも亦(また)(こ)れに準ず。

 

千鳥破風(ちどりはふ)玄関 (妻壁位置は柱通り)

・・・・屋根引渡(ひきわた)し勾配は七寸五分にして流れ全長の百分の三、中央にて「たるみ」を付(ふ)す、破風板の掛け方は三つ母屋納めとす。

三つ母屋納め   参考 日本の瓦 新建築社刊

 

(むく)り破風入母屋玄関 (妻壁位置は柱より外側)

・・・・破風板の巾(上(か)み六寸三分、下(し)も五寸二分)其(その)(むく)は腰巾の三分の一位(ぐらい)にして

上は野地の上場(うわば)より五寸下り(即(すなわち)みのこ)の高さを裏甲(うらごう)の上場として下方(しも)野棰(のだるき)の下場(したば)又は棰(たるき)の眞中(まんなか)を裏甲の上場と定め其(その)下場に破風板を仕掛(しか)く、而(しかし)てその上方(かみ)前面(まえづら)への傾きは其(その)厚さ丈(だ)けとして三つ半母屋納めとす・・・・(原文のまま掲載)

箕甲(みのごう)みのこ入母屋屋根切妻屋根で、平葺き部分破風(はふ)の間にできる曲面のこと瓦では掛瓦(かけかわら)二の平(にのひら)利根丸(とねまる)などを用いる。                                      

 

起り破風造り玄関 (切妻屋根)

・・・・破風板の巾(上(か)み七寸七分、下(し)も六寸四分) 同じく厚さは一寸八分とし 中央にて全長百分の二位(くらい)起り(むくり)を付く、・・・・・・屋根勾配は五寸五分にして、側軒(そばのき)の出は棰(たるき)一小間(ひとこま)を通例とすれども其(その)現場によりて二小間出(いだ)すも可なり。

 


瓦の章 参考図書 

日本の瓦 坪井利弘著(新建築社):葺き方の詳細が説明されている。  

木造住宅工事仕様書(住宅金融支援機構)、 おさまり詳細図集①(理工学社)、木造の詳細2・現代木造住宅のディテール(彰国社)、内外装材チェックリスト(彰国社)

各産地(例:愛知県、兵庫県)の瓦工業組合Webカタログ、設計資料

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