・・・・・・・・書いてみました。
ネタとしちゃ、過去に鯖小説であげてるのと似てるなぁ。
オリジナルなので、もちろん語り部さんは架空のお人。鯖キャラじゃありません。
かといって別館の高校生でもないのでご注意を。
ま、ありがちな設定っすよ(笑)それでも良いって方はど~ぞ。よっぽど暇な人だけで良いッスよ?
『 極彩色の世界 』
この世界は、なんて味気ない色なんだろう、と思う。
灰色のビル。
モノトーンの道。
曇り空。
死んだような目をした無表情の行き交う人々。
TVのニュースは、血生臭いものばかりで。
どこを見ても字幕ばかりが飛び交っていて。
耳に痛い都会の喧騒も。
頭を貫く車のクラクションも。
目の前を横切る自転車のブレーキの音さえ。
この身、がちぎれそうだ、と。
人知れず、そっと目を閉じたら、全ては闇に染まった。
嗚呼、なんて闇は心地良いのだろう。
全てをこうして呑み込んでしまえたらどんなにいいだろう。
何もかも見ずに済むのなら。
・・・・・・・・・・・僕は、こんなにも苦しむことなどなかったろうに。
「見てごらん。」
え?
聞いたような声を耳にしたような気がしてハッと目を開く。
瞼を開く瞬間に、覚えのある甘い香りを感じて。
思わず、その芳香に向かって振り返ったら。
そこには。
『・・・・・・私たちが大人になったら、いっぱいいっぱい幸せになろうね。』
あれは。
約束じゃなくて、願い、だった。
まだ子供だった僕達には、いつも希望が溢れていたから。
『大人になったら、どこにでも行けるよ?なんでもできるの。今は子供だから何でもダメだって言われるけど。』
その頃既に頼るものがいなかった僕達はお互い信じていたね。
いつか、大人になればきっと自由になれるって。
自由になれば、全てが思い通りになると思っていた。
この手で何でも掴み取れると思っていた。
・・・・・・・・必ず、幸せになれる、と信じていた。
「見てごらん。」
もう一度。
声が聞こえた気がして思わず、空を見上げる。
動き出したスクランブル交差点のど真ん中で、一人立ち止まる。
そこには。・・・・・・・・・・・青空に一筋の飛行機雲。
あの日も僕達は、一緒に空を見上げていた。
いつの間にか曇り空が青く替わっていた空に、凛とした線を描く姿、を。
見ていたね。
ずっと、一緒に。
僕は嬉しくなって、君に笑いかけた。
君も僕を見て、笑った。
『幸せになろうね。』
嗚呼・・・・・・・・・・・そうか。
この世界は、あの頃から何も変わっちゃいなかった。
変わったのは、今、ここにいる大人になってしまった僕、で。
幸せになれたはずなのに、なろうとしなかった・・・・・・・・・・・自分。
君にずっと置いていかれたような気になっていただけなんだ。
いつしか別れたままの君は、今頃、うんと幸せを掴み取っている気がして。
君はきっと今もあの頃と同じ笑顔で、花がほころぶように笑っていて。
あの頃、より、ずっとずっと綺麗になって。
・・・・・・・・・・・君は、幸せ、かい?
交差点の信号が点滅しだした。
僕は慌てて、歩き出すと人混みを掻き分けだす。
人の波を縫うように前に進む。
あの懐かしい香りを追いかける。
やがて波がひき出した道の先に見えたのは、赤い花。
不思議とそこだけ鮮やかに見えて。
僕は、交差点を渡りきる前に、歩調を緩める。
「・・・・・・・・見えた?」
声は花の香りに混じって風に乗ってきた。
耳元の髪を揺らせて。
「ちゃんと、見えた?」
ザワリ、と街路樹が葉を揺らす。
とても爽やかな・・・・・・・・・・・緑。
「ちゃんと、感じた?」
交差点に人はいなくなって、やがて車が行き交いだす。
いつものクラクションの音は遠のいて、唐突にパァン!と何かが弾ける音。
振り返ると。・・・・・・・・・・・・・数え切れないほどの黄色の風船。
「ちゃんと。・・・・・・・・・・・聞こえた?」
道の向こうの噴水が勢い良く水を跳ね出した。
太陽が燦々と輝き出し、キラキラと光を照り返す。
弾ける水の中に・・・・・・・・・七色の虹。
なんて・・・・・・・・・・・なんて綺麗な色たちなんだろう。
この世界には、こんなに色、があったんだ。
青い空、白い飛行機雲、緑の街路樹、黄色の風船。
・・・・・・・・・君の赤い花。
君があの頃と同じ微笑みを浮かべれば、この世界は途端に鮮やかに色付きだす。
モノトーンの世界が極彩色に染まっていく。
それは、絵の具じゃ決して染められない色。
君が染めてくれた、『幸せ』。
そうだね。
僕も君も知っていたんだ。
・・・・・・・・・・・・・この世界は、なんて素敵な色、なんだろう。
再び交差点が人の波で埋まる頃。
道の先に、赤い花を持つ人影はもうなかった。
空を見上げると飛行機雲は消えていた。
黄色の風船たちももう立ち去っていて。
人の波に紛れて噴水の虹も見えない。
それでも。
僕の目には、もう鮮やかな世界しか映らない。
だから。
・・・・・・・・・・・・・大丈夫、だよ。
いつしか、また、僕達は出逢うことが出来るのだろうか。
もし、もうそんな偶然は二度となかったとしても。
君の残した幸せは、消えることはない。
『幸せになろうね。』
変わっていなかったこの世界と、変わらない君の笑顔に誓う。
・・・・・・・・必ず、幸せになるよ。
だから。
君も。・・・・・・・・・・・・幸せ、に。
END
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eriy
これ確か、大好きな某アーティストの昔の曲からイメージした話だったはず。
「昔、好きだった彼女は今でも青空の中の飛行機雲のように凛とした一筋の光のよう」・・・・みたいな、内容だったような・・・・
その当時はエラク感動したね(笑)
あと、恋愛期間に入った途端に、全ての物が鮮やかに見える、というのはよく聞く話。
この小説を読みました。鯖以外の小説を読むのは初めてですが、とても素敵な作品ですね。確かにどっかの歌詞にあったような・・・。
前からあぶねえなあ、とは思っていたんですけど、ついにパソコンが逝きました。今まで書いてきた鯖の小説が一気に全滅・・・(泣)いまは中古の安い掘り出し物を使って書いています。なので前に送った小説も消えてしまっていて、それで題名が無かった気がしたんで・・・。無かったら「幻想と己の狭間に」という題名をつけてください。もし書いてあったらそのままにしておいてください。お手数かけます。
長くなりましたが、またこれたら来ます。
では、また会える日まで。
>yuya様
ご報告遅れて申しわけありません~!日記私信にも書きましたが、ちゃんとステキ小説は届いていますからねぇ~!
後日、きちんとページにしてアップしようと思います。
高校生活大変そうですね。でも、その青春は貴重だ!(歳バレる・・・)
PCが死んだって鯖情熱は消えませんよ!ファイトォ~!!