(7)ブッダの座につく
シッタルダさまは小高い山をめざしてのぼりました。でも、その山の石室に住む竜の願いを聞きいれ、河岸のピッパラ樹
の下に草を敷くことになりました。
おりから草刈人が捧げる吉祥草をもって草座をつくり、その上に
結跏跌坐(けっかぶざ)して東方に向かい、自ら誓われました。
『たとえこの身はこの上で朽ちるとも苦患を破る最も勝れた
無上菩提を成ぜぬなら、この座をたつまい、動くまい。』
それはシッタルダさま三十五歳の時でありました。
まず、この世を支配する欲の王である魔王を降ろすべきと思われました。
眉間の白毫相(びやくごうそう)から大光明がはなたれ悪魔の国土を
照らしました。魔王はただならぬなりゆきに恐れをなし、
『シャーキャ(釈迦)族の王子は今に仏となって魔王の国土を
征服するであろう。ものども!ただちにいって戦え!』
魔軍は群れをなしてピッパラ樹の道場に打ち入り刀剣の雨をふらしました。
でもその刀剣は樹下にとどくとそのまま花にかわって道場を美しくかざる
のです。美女に化けて誘惑しても金剛の心をゆるがすことはできません
でした。ついにシッタルダさまは大地を指しました。
『わたしはブッタの座につく。大地よ、これを証言せよ!』
たちまち大音響がおこり魔王はついにひれ伏しました。シッタルダさまは
魔軍を降伏しすべてのくらやみをくまなく照らした上で七日間をしずかに
三昧に入られました。
七日を過ぎた十二月八日の未明、明けの明星の光がきらめく時、
四締十二因縁(したいじゅうにいんねん)のすべての観法成就し、たちまち
のうちに無上、円満の菩提を実証し、ついにブッダの座につかれました。
そのときからピッパラ樹を菩提樹とよび、その樹下の草座を金剛宝座
(こんごうほうざ)とおよびしているのです。
次回は6月1日に掲載いたします。
青山書院 澤宗彦