箒の魔力

　掃除好きの人が世の中にどれくらいいるのかはわからない。

　僕の云う掃除好きとはつまり、

　一日中掃除してても飽きないだとか、

　掃除をしたいから部屋を汚すとか云う人のことだ。

　そんな人が果たしているかどうかもわからないが（けど、絶対いると信じてる）、その人の気持ちが理解できそうな経験をした。

　それは新しい箒。

　僕が用意したものでなく、他の人が用意し、たまたま僕がそれを使っただけ。

　それはなんたる。

　なんという衝撃。

　生まれて初めての掃き心地のよさ。

　箒って、こんな簡単に、

　こんな気持ちよく床を掃けるものなんだ。

　生まれて初めての快感。

　つまりそれだけ、恵まれない箒しか使っていなかったということ。

　あまり掃除が好きではないということ。

　でもでも、掃除っていいよ。

　あの掃き心地なら、一日掃いていてもいいね。

　うん、だからさ。

　他のめんどくさいことはお願いしてもいいかな？

　厄介ごとは他にうっちゃいといて、

　ただただ掃いていたくなる。

　そんな気にさせてくれる箒が好き。