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KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

1995年(平成7年)の主な仕事

2019年08月08日 | カノンの記録
★キテレツ大百科 1987~1996 TV放映
原作 藤子・F・不二雄
監督 早川啓二(#44~#331)他
総作画監督 山内昇寿郎
美術監督 小林七郎 柴田聡 
アニメーション制作 スタジオぎゃろっぷ

スペシャル版含めて332本、8年間にわたって放映された人気アニメ。
美術・背景は#311まで 小林七郎氏と小林プロダクションが担当していましたが、#312からは同社から独立した柴田聡氏(スタジオフォレスト)が担当。(暖簾分け作品ということでしょうか)

#315がスタジオカノンとしてクレジットされた初めての作品です。#319からは新人スタッフの名前も表記されました。

藤子作品では「ドラえもん」や「笑うセールスマン」などアニメ化された名作がたくさんありますが、直接関わる機会がありませんでした。
それだけによく視聴していたこの作品に参加できたことは光栄です。

テーマ曲が「お料理行進曲」「睡眠不足」「はじめてのチュウ」などユニークな楽曲が多く、今でも印象に残っています。

この作品は翌年の最終回まで参加しました。
 

背景のスタイルはいわゆる小林プロスタイルといわれるもので、他社に多く見られる背景と描き方が少し違っていました。

まず原図(レイアウト)をしっかり整理して、これを画用紙にカーボンで写し取ります。
塗りは同じポスターカラーでも薄めに塗っていくため、カーボン線が見えて描きやすいのですが、慣れないと薄塗りの筆がうまく決まらずムラになったり、はみ出してしまいがちです。
何度も絵の具を重ねていくより、一筆で決めていく水彩技法の応用で、作業の効率化を図ったスタイルとも言えますが、高い技術力が必要となります。
仕上げとしてデルマー(ダーマトグラフ)という色鉛筆や、水性のマジックペンなどを使って、カーボンラインに沿って描き込んでいきますが、この線に独特のタッチがあり、ギャグ作品にもリアルな作品にも応用できる力強い「コバプロタッチ」は多くのファンを獲得し、のちのアニメ制作者に影響を与えました。

もちろんアニメーションの背景は一律ではなく、作品によってスタイルを変えてこそ美術の仕事というものです。ありとあらゆる技法を身につけ、なんでも描きこなさなければこの仕事は務まらないのです。


スタジオカノンの始まり

2019年08月07日 | カノンの記録
1995年(平成7年)の10月、当時住居として借りていた中野区弥生町のマンションの一室を利用して「スタジオカノン」がスタートしました。
先駆けて「フロムA」という求人募集誌にスタッフ募集の記事を出すと、早速数件の問い合わせがありました。
まだ法人化しておりませんでしたので正規の社員雇用ではなく、アルバイトという形での募集でした。
初心者歓迎、年齢は一応30ぐらいまでとしましたが、かなり年配の問い合わせもあったと記憶しています。

この当時実技試験はなく、作品持参と面談のみでしたが、順次面接の結果、まず男子1名の採用が決まりました。
彼は将来漫画家を目指しているということでしたが、アニメの背景をぜひ描いてみたいということで、その筋を見込んでの採用です。

背景画を描くにあたって必要なことは、当然ながら基本的な画力です。物を正確に捉えるデッサン力がまず必要とされますが、作品審査である程度の画力が見込めたら、まずはポスターカラーと筆で描いていく技術の習得を目指すこととなります。
研修では基本形となる立方体や円柱をポスターカラーで塗ることから始めますが、全くポスターカラーを使ったことがない場合は、絵の具の溶き方、ベタ塗りやグラデーションのつくり方など初歩からの指導となります。(当時はまだデジタル作業ではありません。)

見習い1号の彼は何十枚とグラデーションの練習を重ねていました。特に紙の枚数制限などなく、好きなだけ練習してもらった結果、短期間で基本の塗りはマスターし、かなり早くに本番の仕事にもトライできるようになりました。

初心者の場合、早々本番仕事に就けないものでしょうが、そこは始めたばかりの小さなスタジオ、学校ではないのでそうそう悠長に構えていられないこともあり、どんどん実践で技術を磨いていく方向で鍛えるしかありません。

当時の仕事はCMや地方企画の短編PRものの他、背景会社の下請けでTVシリーズの背景をこなしていたわけですが、新人向けに描きやすいシーンも発注いただいて、育成に協力していただきました。

年内にはスタッフが3人になり、求人雑誌を見たアニメーション専門学校からも、来春卒業予定の生徒の面接をして欲しいという申し出がありました。
面接の結果2名の採用が決まり少しづつスタジオらしくなっていったわけですが、同時にそれはアニメ界ならではの過酷な状況を迎える序章だったのです。

ご挨拶

2019年08月06日 | カノンの記録
アニメーション背景スタジオKANONは2016年10月を持ちまして、諸般の事情により解散となりました。
1995年10月よりスタートして21年間、制作会社を始め多くの皆様にご支援いただき、ここに改めて感謝申し上げます。
また当ブログも長期間放置する形となり、ご迷惑、ご心配をおかけいたしましたこと、謹んでお詫び申し上げます。

現在は有限会社スタジオカノンの名はそのままに、細々ながら活動を続けておりますが
解散という節目を迎えましたことでHPも閉鎖しておりますので、このブログも削除を考えました。
しかしながら一向に整理が進まぬまま放置してある事務書類や美術資料を前にして、21年間の活動の記録ぐらいはまとまった形で残しておこうと思い立ち、携わった作品紹介を中心に「カノン史」を振り返ってみたいと思った次第です。

そんなわけでタイトルも一新して再スタートです。