KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

2004年の仕事②〜鏡の向こうのドール戦争

2019年09月29日 | カノンの記録
★ローゼンメイデン
第1期2004年10月〜12月放送  全12話

原作 PEACH-PIT
監督  松尾衛
シリーズ構成  花田十輝
キャラクター・デザイン・総作画監督 石井久美
イメージデザイン 春日井浩之
美術監督 柴田千佳子
色彩設計 勝沼まどか
アニメーション制作 ノーマッド

引きこもり少年ジュンの元に届けられた鞄には美しいアンティークドールが入っていた。 
ネジを巻くことで目覚めた人形は「ローゼンメイデン第五ドール・真紅」と名乗る。
19世紀の人形師ローゼンが作った7対の人形がそれぞれ現代で目覚め、
究極の少女アリスを目指して戦う「アリスゲーム」に、
真紅との主従契約を結んだジュンは巻き込まれて行くことに____。

家から一歩も出ないで自室にこもりっきり、登校拒否などの引きこもり現象は昔からあったと思いますが、
平成時代に「引きこもり」というワードがクローズアップされるようになり、今では「オタク」同様当たり前に使われています。
そんな引きこもり少年が主人公ですが、立ち位置はのび太君のようなもので、
彼の成長より、ツンデレな真紅をはじめ、次々登場する人形たちの華やかさに目を奪われます。

美少女、人形、アリス、主人と下僕というだけで、オタクごころをそそる見事な設定ですが、
ビスクドールや球体関節人形は少女のみならず変態大人の優雅な趣味。
人形たちに自分を「お父様」と呼ばせるローゼンさんはどんな人だったのだろう、と興味はつきません。
もちろん、かの「ローゼン閣下」とは違いますが。

まあそこは深読みしすぎず、ゴシックロリータ衣装のドールたちの活躍を
アールグレイでも飲みながら楽しみたいアニメです。
 
美術としては監督のおすすめで、色調の参考にまず「アメリ」を鑑賞。 
(黄色味ががった緑や赤などが特徴的。)

原作を読んだ時点では人形界をどう設定しようか楽しみにしていましたが、 
監督のこだわりが色々あるためか、人形界の方は監督の右腕として春日井さん担当、
あなたはノーマル世界の設定だけお願いします、と最初に言われて、ちょっと腰砕け。

まあ人形界もただのイメージ空間ではなく、(監督はよくあるイメージBG がお嫌い)
色々意味のある不思議ファンタジー世界なので、一筋縄ではいかなかったかもしれません。

ノーマル(現実)世界として、学校や住宅街、ジュンの家などを設定しました。


引きこもりの少年にとって、外の世界はかぎりなくグレーな鬱の世界。
そのため、モノトーンに近い色味になっています。


 ジュンの家_浅い夕景


 ジュンの部屋 見た目とても小綺麗。パソコン以外のオタクグッズは切り返しの棚にあります。



一階廊下の突き当たり、物置の中にある鏡が異界への入り口。


ローゼンメイデン第6ドール「雛苺」のフィールド。
レースの縁取りのあるリボンの通路が幾重にも重なり、背景家泣かせな世界です。


ローゼンメイデン第1ドール水銀燈のフィールド。
暗いピーコックブルーに包まれた、中世の荒廃した街並み。彼女の傷ついた心と体を象徴する世界。



パンドラの匣

2019年09月25日 | カノンの記録
 スタジオを畳んだ時、それまで放置しておいた背景画の大半は処分しましたが
旧作などスキャンしていない作品もあったため、厳選して、段ボール10箱分残しておきました。
その段ボールは我が家の狭い部屋に積まれたまま、3年間開けられることはありませんでしたが、さすがに地震でもあったら面倒なことになるので、いつか整理しようと思いつつ放置状態。
ブログ再開を決めて、少しずつ取り出してはファイリングしていましたが、もうなぜに?と思うくらい作品タイトルばらばらに入っている。
一つの作品がやっと終了したかと思えば、また別の箱から出てくるので、なかなかファイルを片付けられません。
もはやなんの作品の背景だったかわからないものもあり、整理すればするほど収拾がつかない状態。
おまけに埃アレルギーもあって、咳や蕁麻疹まで出る始末。

懐かしい作品を見ていると、こんなに下手だったのか、昔の方がよく描けているな、とか、まあ色々思う中で、やはり後悔先立たずの苦い思い出もでてくるわけで、ちょっと鬱な気分は避けられません。

まさに開けてはいけないパンドラの箱をあけてしまったような気分です・・・。

背景画だけだと所詮アートというより、営業ゴミ扱い。
さらに厳選して、いずれ捨て去るしかない?





2004年の仕事①〜愛犬は恋人のライバル

2019年09月21日 | カノンの記録
★「まっすぐにいこう。」
  第1期は2003年8月、第2期は2004年3月放送

  原作 きら(集英社刊『コーラス』連載)
  監督 井硲清高
  キャラクターデザイン つなきあき
  美術監督 坂本信人(第1期)、柴田千佳子(第2期)
  色彩設計 有尾由紀子
  撮影監督 松崎信也
  音楽 大島ミチル
  制作 よみうりテレビ、ゆめ太カンパニー

若月家の愛犬マメタロウと郁ちゃん、その恋人をめぐる日常ドラマが楽しく展開される。
犬好きにはたまらないエピソードが満載の人気コミック。 原作は全26巻!

アニメは短期集中放映で、1期は4話、2期は5話を連日昼間に放送という形を取ったため、知る人ぞ知るアニメだったのかもしれません。
こういうほのぼの系ドラマがシリーズになれば、という要望はスタッフからの声も上がっていましたが、その後の展開はなく終了。

1期の坂本氏の美術を受け継ぐ形で、明るいイメージを大切にした美術となりました。
家具や小物など、女性好みなナチュラルでオーガニックなものや、カントリー調スタイルが取り入れられています。   



若月家外観 庭にマメタロウの犬小屋がある


散歩で通る住宅街の夕方


 ドックレース会場


北海道で過ごしたコテージ内

2003年の仕事③〜同情するより仕事くれ。便利屋は大繁盛!?

2019年09月19日 | カノンの記録
★「まかせてイルか!」OVA 2004年6月日米同時発売

  企画・監督・絵コンテ 大地丙太郎
  脚本 池田眞美子
  キャラクター原案 宮﨑なぎさ
  キャラクターデザイン・作画監督 柴田由香
  美術監督 柴田千佳子
  色彩設定 高星晴美
  手話指導 南留花

大地監督の自主製作アニメ。
コミックスウェーブなどの制作会社が協力。

湘南でイルか屋という便利屋を営みながら自給自足の生活をしている3人姉妹のお話。
いつか無人島を買って、独立国を作るという目標がある。

すでに時代は平成ですが、戦後の子供達のような、生きていくこと直結するたくましさが溢れている作品です。
秘密基地とか、無人島とか、きっと昔の子供達ならワクワクしていた冒険の世界を思い起こさせる、ノスタルジー感漂う素朴な世界。

湘南の青い海と空を中心に、きっぱりと明快で明るい美術を心がけました。



イルか屋外観
風力発電が完備、堆肥小屋もあり、畑を耕している。


坂を降りると江ノ電の線路


目の前に広がる湘南の海、遠くに見えるは江ノ島の灯台


夜の外観


3人が本来行くはずの小学校

2003年の仕事② 〜桜散る禁断の恋の結末

2019年09月15日 | カノンの記録
★D.C.〜ダ・カーポ〜2003年7月〜12月放送 全26話

原作 CIRCS
監督 宮崎なぎさ
シリーズ構成 池田眞美子
キャラクターデザイン 田頭しのぶ
美術監督 柴田千佳子
色彩監督 秋山久美
撮影監督 大平幸輝
アニメーション制作 ZEXCS

18禁の恋愛趣味レーションゲームが原作だが、アニメはいたって爽やかな学園ラブストーリー。
1年中枯れない桜が咲き誇る初音島に住む朝倉純一と妹の音夢を中心に、可愛い女の子が次々登場。
後半は一転して、枯れない桜の謎と純一をめぐるさくらと音夢の3角関係で、シリアスドラマが展開される。

「フルーツバスケット」で助監督を務めた宮崎さんのTVシリーズ初監督作品。
前年、「遥かなる時空の中で2_白き龍神の神子」という女性向け恋愛ゲームがもとになるOVAを監督された宮崎さんでしたが、今度は男性向けのエロゲー。
それが女性目線のラブストーリーに生まれ変わり、作画、色彩、美術共にきめ細やかな演出が施されました。

とにかく年中桜が咲いている島なので、背景は桜をひたすら描いたという記憶。
前作「ちょびっツ」でも結構桜のシーンを描いていましたが、それの比ではなく
「桜」が主役のようなお話なので当然といえば当然なのですが、
今思えば植物学的には全然何も調べることもなく、ただ「雰囲気」で描いていたのかもしれません。
むしろ水越邸というゴージャスな洋館を描くにあたり、インターネットで色々調べたり、
日本の洋館シリーズの書籍にはまって、こちらの方が個人的に楽しんでいました。
今でも「洋館」を見るとワクワクします。


枯れない桜_全ての謎はここに






朝倉家の隣にあるさくらの祖母の家


 デジタル専用のスタッフも入り、この作品から全カットをデータ納品するようになりました。