Una voce poco fa・・・

日々のつぶやき、舞台の記録など。。

ロイヤル・オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

2015年09月23日 | 舞台
兵庫県立芸術文化センター大ホール 17:00 3階3RA列8番 ¥22,000



あ~凄かった~!
晩餐のシーンあたりからは「あぁもう少しで終わっちゃうんだ・・・・」と悲しくなって。
終わったあとの虚無感・喪失感の凄かったこと!(笑)
3時間半がこんなに短いなんて。

引っ越し公演だからってチケット代5万円は高い!と思っていたけど許すことにしよう(私は下から2番目の席だからそんなに出してないけど)。それに東京公演は5万5千円もしたんだよね。東京のNHKホールより兵庫の方が見る方も演じる方も、ホールの環境としては数段上だったんじゃないかしら。

ダルカンジェロの声はドスが効きすぎていて好みじゃないとか、エスポジトもそれほど好きではないとか(だってレポレッロはやっぱりダーリンで見たい(笑))、まぁいろいろとあるけど、それを差し引いても、ロンドンでもなかなかお目に掛かれない豪華なキャスト陣は期待を遥かに上回りました。当分中途半端なオペラは観に行きたくないね。マエストロ・パッパーノもこのプロダクションで振ったのは今回が初めてだったから、ロンドンっ子も羨むかも?

ヴィリャゾンは東京では調子が悪かったそうで心配していたのだけど、そんなことは感じさせませんでした。おぉ!ヴィリャゾンの声だ~!とミーハーな反応をしてしまった私。一言一言が粒立って届いてくるような歌唱でした。ちょっと情けないオッターヴィオというより、一生懸命アンナのことを思っているのが伝わってくるというか。ジョイスとヴィリャゾンの声が重なりあってハーモニーを紡いだときには思わず涙が出そうでした。

ドンナ・アンナはちょっとポッチャリさんだけど素敵な声。それに上手かったですね~。
ツェルリーナも艶のあるチャーミングな声で。イタリア語の発音に違和感あったけど。出待ちでお会いしたらとっても小柄で本当に可愛いかったねぇ。
ジョイスのドンナ・エルヴィラ・・・ただただ圧倒されるばかり。この演出ではジョヴァンニとラブラブな場面もたくさん出てくるけど、そういう時のエルヴィラも良かったねぇ。
マゼット君は以前ロンドンでも見た気がするけど、気のせいかなぁ?
騎士長は出待ちのときに聞いた声も渋くて素敵。やっぱり私、低い声のおっさんに弱いんだわ(笑)

ついでに書いておくと(笑)ダルカンジェロは思っていたよりも押し付けたような歌い方でなくてほっと安心。エスポジトは前にロンドンで見たレポレッロとはずいぶん違う印象でした。もう7年も前だし演出も違うから当然かな。それとも髪型のせいかしら・・・(笑)

序曲からセットに何やら名前がどんどんと投影されて、だんだんと埋め尽くされていく・・・
最初は「何を書いてあるんだろう?」とじっくり読んでしまいそうだけど、そんなことは無意味だと気付いてくる。これはジョヴァンニが征服した女性のリストなのね。
だけどこれは作品を知っていないと全く分からないよね・・・。

ドンナ・アンナは明らかに自分の意思でジョヴァンニを受け入れていて、それをカモフラージュするようにオッターヴィオに「復讐して!」と頼む。エルヴィラは自分を置いて去ってしまったジョヴァンニに怒りを表すけど、ちょっと甘い言葉を掛けられるとまたメロメロになってしまう。ツェルリーナもジョヴァンニの誘いを受け入れる。この辺りは初演の映像の方がもっとはっきり表現していたけど、今回はそうでもなかったような ・・・・。いや、冒頭の部分なんかは私が見落としていたのかもしれない。

初演ではツェルリーナは「手に手をとって」のところでジョバンニに取られた手袋が無いのに気が付いて、マゼットと仲直りしましょう、のシーンで慌ててもう片方の手袋を外して隠すのだけど、そしてジョヴァンニはその後ツェルリーナにその手袋をチラつかせてまた誘惑するのだけど、そういうのは無かったなぁ。ほかにも細かい所がいろいろと違っていたのはちょっとした発見でした。

2階建ての箱型のセットが回り舞台に乗っていて、場面によって角度を変えたり扉を閉めたり。そこに精密な映像が投影される作りなので、演者も精密な動きが要求される。多くの扉が並ぶセットでのシーンはどの扉から入るのか、などちゃんと覚えてないと映像と一致しなくなるから大変そう。ロンドン公演を経て来ているから難なくこなしていたかな。でもドレスの裾を持ち上げて階段を昇りながら歌うエルヴィラのシーンはハラハラしました・・・。

最初から最後までこのセットがステージ上にあって、ちょっと閉塞感を感じたり。でもステージ端の後方で演技される場面が無かったので、高所バルコニー席で見ていた者としてはほとんど見切れることなく快適でした。おまけにここからだとマエストロ・パッパーノのフォルテピアノ弾き振りも楽しめる、特等席でございました。

通常はジョヴァンニが登場しないシーンでもジョヴァンニが絡んでくるのは面白かった。「カタログの歌」でレポッロがジョヴァンニの実態を語っているときにも現れて、エルヴィラはやっぱり靡いてしまう、とか。プロジェクションの映像に紛れて騎士長や過去の女性(?)の亡霊があちこちで現れるのはジョヴァンニの心の奥の罪悪感と不安を表していたかな。
終盤のジョヴァンニは怖いもの知らずで高慢というより不安で押しつぶされそうになっていましたね。

最後の地獄落ちのシーンは炎が燃え上がって飲み込まれる、などは一切無く。
エンディングはジョヴァンニ以外の登場人物が“この後どうしましょう”と歌う場面はばっさりカット。「これが悪人の末路」と歌う部分だけ、ステージの両サイドに3人ずつ分かれて立って歌われました。その間ジョヴァンニは助けを求めるように明るくなった客席に向かって両手を上げて・・・最後はうずくまって終わり。
騎士長の亡霊にとりつかれて心神耗弱になった・・・・ような。
呆気なかったです。。

近くにいたマダムが帰り際、「地獄落ちのシーンはどうだったんですか?怖くて3秒ほど目をつぶっていたもので・・・」と言われてびっくりしたけど。「なんにも起きなかったんですよ・・・・」。

ジョヴァンニが主役、と印象付けられる幕切れでした。それに喜劇色がより薄くなりましたね。
カットされた部分は実はかなり好きなシーンだったのだけど。
見終わったあと虚無感に包まれたのは、このエンディングのせいもあるのかも知れません。

パッパーノの指揮は予想通り「速いところは速く!」、全体的にテンポよく進めて。以前ロンドンで見たときにはびっくりしたのだけど、今回は全く違和感無く。これぐらい軽快に進めてくれる方が見てる方も乗れて楽しい。もちろん聴かせるところはゆったりじっくり聴かせる、このメリハリが良い。

そうそう、食事の場面は豪華な晩餐ではなく、廊下でつまみ食いしている雰囲気で。。。
「贅沢に楽しむぞ!」と豪語する騎士様の晩餐なのに・・・・。
お抱え楽師のバンダもセットと映像に紛れるように白い衣装に白いキャップというのは奇妙な光景でした。

今回の演出はプロジェクション・マッピングが使われているということで、写真を見るとゴチャゴチャしていてどうも一度見ただけでは分からないと感じて、直前まで昨年の初演の時の映像で予習して行ったのだけど。やっぱり全てを見て取ることはできないのね~。
特に歌に集中しちゃうと他のことは全然見てなかったりするわけで。結局細かいことはどうでも良くなってしまうのでした。。

ほかにもいろいろあった気がするけど・・・切りがないのでこの辺で。



これだけの顔ぶれが東京だけでなく大阪でもなく兵庫に来てくれたこと自体が奇跡。
(出演者)
ドン・ジョヴァンニ: イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレッロ: アレックス・エスポージト
ドン・オッターヴィオ: ローランド・ヴィリャゾン
ドンナ・エルヴィーラ: ジョイス・ディドナート
ドンナ・アンナ: アルビナ・シャギムラトヴァ
ツェルリーナ: ユリア・レージネヴァ
マゼット: マシュー・ローズ
騎士長: ライモンド・アチェト

指揮 アントニオ・パッパーノ
管弦楽 ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

A席 \50,000/B席 \43,000/C席 \36,000/D席 \29,000/E席 \22,000/F席 \15,000
豪華プログラム ¥2,500(当然買わず)

ちなみに東京公演は
S=¥55,000 A=¥48,000 B=¥41,000 C=¥33,000  D=¥26,000 
エコノミー券=¥10,000 学生券=¥8,000
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2 コメント

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まってたよ。 (きよか)
2015-09-26 22:54:08
このレポート読みたくて何回も
開き、待ってた甲斐ありました
読んでるだけでよだれがたれてしまいそうな夢の
世界。
何回も劇場行っても、こんな風にトリップできること
はまれよね 
そんなのライブに出会えて幸せだし、やはり今までのの場数の賜物よ。

羨ましいわ。わたしもユーチューブでちょっとさがしてみよっと。

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ありがとう(*^_^*) (Angelina)
2015-09-26 23:51:42
もっと上手くレポートしている人がいるのにわざわざ読んでくれて申し訳ないわ~。
ロイヤル X ジョイス X パッパーノ指揮という時点で私はもう舞い上がってますから・・・。
でも場数と言えば確かにドンジョはこれが12回目なんだな。オペラ鑑賞歴の割には多いかな。
この幸せを味わうために、また海外に飛びたくなってしまいました

良かったらDVDお貸ししますよ(^^)
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