ムービー・クリティサイズ

映画ブログ。映画を愛でよ!監督を愛でよ!
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ウルフマン(2010)

2010-07-03 04:01:03 | HORROR
『ジュラッシック・パークⅢ』のジョー・ジョンストン監督作品。

キャスト:ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス

ストーリー:突然の兄の訃報を受けたローレンス。兄の死を確認するため、急遽実家に戻るが兄を殺したのは人狼だという噂が広まっていた。

事前の高評価を受けて劇場に足を運んだのですが、これがとんだ肩すかし。
ゴシック調の世界観は見事でしたが、展開のテンポが悪く、人物描写も相当にぬるいので眠くなる始末。
これは失敗作。

【ゴシック世界とジョー・ジョンストンのキャリア】
本作の魅力の最たるものとして、「オカルトゴシックとしての世界観の構築」というものがありました。
何故、本作にその魅力が生じたのかは監督のJ・ジョンストンのキャリアを見ることで明らかになります。
ジョンストン監督は大学でイラストレーションを学び、『スターウォーズ エピソード4』でデザイナーとして頭角を現し、続く続編2作では特撮アートディレクターとして活躍の場が広がり、後に『レイダース/失われたアーク』でアカデミーの視覚効果賞を受賞するに至ります。
元々、デザインに精通していたので、小物のディテールなどに拘りがあり、それが積み重なってゴシック的世界観の構築に至ったと考えられます。
こうしたデザイン畑出身の映画監督がズバ抜けた世界観を構築するケースは他にもあり、パッと思いつくものが『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督ですね。彼も『エクソシスト』で特殊メイクを施したディック・スミスの師事をうけ、美術を学んでいます。

【オカルトホラーか、オカルトアクションか】
分類的にはホラーとされている本作ですが、ホラーとしての要素は多分に薄い印象を受けました。ホラー的な要素はあくまで画面の薄暗さや、「恐いのが、出るか?いやまだか?」というドキドキ感に留まります。身体の芯が冷えるような要素はありません。
ホラー的な要素より目立ったのはアクション性。
飛び散る鮮血はバイオレンス映画のようであり、走るのが速く目に映らない狼男はちょっとしたモンスターパニックのよう。挙句の果てに、ラストでは狼男二匹のガチンコファイト。これ、、、ホラーとしては無理がある。。。

【人物の思考説明の欠如】
全体的に人物の感情の変化や心情が掴めません。結構ハッキリ言ってしまうとぺらぺら。
なんで主人公(B・デル・トロ)と主人公の兄嫁が劇中に恋仲になるのですが、二人が心を通わせるシーンは1シーンのみ。この1シーンにさしたる密度がないため、何故二人が恋に落ちるのか分からない。観客はおいてけぼり。
それから、主人公は父親(A・ホプキンス)は息子を狼男にするという企みを抱いているのですが、何故そうしようと思ったのか、それが全く描かれない。
只一人の狼男ゆえの孤独か?そうすると、ラストのガチファイトの意味が分からない。とにかく意味不明。
この脚本、全然ダメダメじゃん!
せめて、父親のサイコ性とかをクローズアップしておけばサイコホラーの側面を出してもっといい作品になったと思うのに。

残念というより、勿体ない!

【ウルフマン】
世界観の構築にもかなり貢献している重要な要素として、本当の主人公と言っていいモンスターとしての狼男のデザインが一つ挙げられます。本作は1941年公開の『狼男』のリメイクになりますが、同じ狼男を題材とした81年公開のジョン・ランディス監督作『狼男アメリカン』で特殊メイクを担当したリック・ベイカーが参画しています。
今回の狼男のメイクアップに要する時間はなんと4時間。CGを使わない昔ながらのメイク技術が、違和感を感じない温かみ(?)のあるモンスターに命を吹き込むことに成功しています。
狼に変身する時にはCGを使っています。骨格が変化するゴキゴキ感はとてもよかったです。




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パラノーマル・アクティビティ

2010-06-20 00:30:38 | HORROR
オーレン・ペリ監督、脚本作品。
なんと自主制作映画。総制作費100万ちょい。

ストーリー:同棲中のケイティとミカ。ケイティは昔から夜に不思議なことが起こっていることをミカに告白する。ミカは興味本位で夜中にカメラを仕掛けるのだが―。

怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い!
単純だけど、他でお目にかかったことない不気味なシーン。
主人公ケイティが恋人のミカを2時間立ちっぱなしで凝視するシーン。

薄気味悪くて、ゾッとしました。完全なアイディア勝利。

後は、絶望感。
逃げても無駄、もう誰も頼れない、日に日に悪化していく状況。希望が見いだせないのは何より恐ろしいことだと感じました。

しかも性質が悪いのは、リズムコントロールが上手い。
最初は緊張するのは夜のみだけれど、最後には昼でもお構いなし。観客の余裕をクライマックスに向けて削いでいく。


最後は登場人物のみに、向けられていた悪意が観客の方へ。
ここは怖くないワケがない。不覚にもちょっと泣きそうでした。


ミカーーーーーっ!ミガアアアアァッァァアァアアッッ!
ミガアア”ア”ア”ァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!!

あんな断末魔の叫びとも言える壮絶な絶叫を聞いたら、観客とは言え身体が竦むのは、生物としてごく自然なことだと思う。
映画館で観賞しましたが、後ろからすすり泣く音が聞こえてきたのも無理ないです。

近年中々出てこなかったオカルトホラーの新生児。
あのスピルバーグがリメイクを「無理」と判断したとのこと。
そりゃそうだよ。この映画、本質突いてると思うもの。

また違う楽しみ方として制作費130万の内、「ハハーン、さてはこのシーンにいくら使ったな」とか考えながら観賞するのも、中々オツですよ。


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ブレア・ウィッチ・プロジェクト

2007-08-28 15:33:55 | HORROR
ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス監督作品。


キャスト:マイケル・C・ウィリアムズ、ジョシュア・レナード、ヘザー・ドナヒュー

ストーリー:1994年10月、モンゴメリー大学映画学科に通う三人の学生は、「ブレアの魔女」を題材としたドキュメンタリー映画を撮影するためにメリーランド州バーキッツヴィルのブラック・ヒルズの森に向かう。しかし、彼らの行方は分からず1年後に彼らの撮影したテープだけが発見される。

劇場よりTV画面で観た方がいいという珍しい映画。この作品は実際のテープを「見る」という設定により、細密に構成された魔女伝承を現実の世界にあるものとして認識させようとします。従って、鑑賞方法もより現実的である方が効果的です。残念なのは、字幕(吹き替えも同じく)。字幕なんて入ってたら折角のリアリティに水を差すことになります。英語を理解出来る人でなければ本作品を100%の状態で鑑賞することは無理です。
で、肝心の中身なんですが

怖ぇええよーっ!!!

明らかに「異質なもの」の存在を感じる。でも見えない。警戒しても警戒しても見えず、そのくせ序々にその気配の濃さは増してくる。その所業は確実に人間でも獣の類でもない。こちらの理解を超えた絶対的な存在。その掌で弄ばれているのが分かる。この正体の分からない相手に完全に掌握されている感覚がとにかく怖い。
そして暗闇。明るければカメラに映っているかもしれない。すぐそこにいるのに暗くて見えない。「暗闇」の持つ恐怖感をフル活用しています。


さらに

序盤で「ブレアの魔女」の伝承を紹介しているんです。このことを忘れずにいると、次々に起こる事態が以前起こった事件と共通する点がいくつかあることに気が付きます。つまり今、起こっている異常事態がガチで「魔女」の仕業だという証明になりますし、「伝承」の時と同じように行方不明者が凄惨な死に方をしていることは間違いないんです。映らないんですけどね。映るのは異常事態だけ(考えてみればこっちが映ってるっていうのが、かなりのスパイスになってるんだろうな)

徹底的に観客のイマジネーションを刺激しまくる見せ方は巧いですよ。これが1番怖いっていうことをよく分かってる。それを全力で補佐するためのインターネットだったんでしょうね。


金なくてもアイディアでいいものは作れるといういいお手本。

薄気味悪いし、背筋凍ります。
必見。


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アザーズ

2007-08-07 13:40:35 | HORROR
『オープン・ユア・アイズ』のアレハンドロ・アメナバール監督作品。

キャスト:ニコール・キッドマン、エレイン・キャシディ


ストーリー:グレースの子どもたちは日の光にあたると死んでしまうという奇病を抱えていた。そのため霧に覆われた家に引越し、遮光カーテンを閉じたきりの生活を送るが、子どもたちが家の中に誰かがいると言い始める。



どうもアメナバールさんの作品と私は相性が悪いらしく面白いと思いませんでした。まずこの作品はラストに大きくウェイトを割いている作品なんですが、オチが分かり易いのなんのって。私は伏線というものには二種類のタイプがあると思ってまして、それは「ラストの中心になるバレてはいけない伏線」と「ラストを彩るためのバレてもいい伏線」とに分かれます。
この作品では「バレてはいけない伏線」と「バレていい伏線」の境界が曖昧だったためにラストのオチが見え見えになってしまったと思われます。

暗い雰囲気に高級感があってストーリーさえシッカリしてれば一級のゴシックホラーになったと思うんですがね。残念です。

これ以上のコメントは思い浮かびません。
その程度の作品。

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インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

2007-07-17 02:35:40 | HORROR
ニール・ジョーダン監督作品。

キャストは
ブラッド・ピット
トム・クルーズ
キルスティン・ダンスト
アントニオ・バンデラス
(加えて、当初の予定ではリバー・フェニックスまで!!)
主役級のスーパースターが集った超豪華な映画。今、このキャスティングを実現させたら、お財布が空っぽになること間違いなしです。

一応、区分はホラー映画ということになるんですが、この作品は他のホラー映画とは毛色が違います。すごく耽美的なんです。


物語はヴァンパイアであるルイが記者のマロイに自分の生きた200年を語りだす場面から始まります。インタビューを受ける現代のルイは酷く表情に欠けていて、感情を感じることが出来ません。とても虚無的で正に「ヴァンパイア」です。
しかし、ヴァンパイアになりたての頃のルイは人間としての感情を捨てることが出来ないのです。

この200年で彼がいかにヴァンパイアに変わっていったのか、その体験をルイは語り始めます。

死ぬことの出来ない不幸。よく耳に聞くフレーズですが、物語として観客に訴えかける作品は数少ないです。
彼が長い生に味わうのは「苦悩」「刹那の幸せ」「呪い」「孤独」「虚無」。どうかその過程を追体験して下さい。


観終わった後の余韻を楽しめるのがオツな作品です。

あと、どうでもいいけどトム様のお顔が大変なことになっているシーンが一瞬あります。爆笑確実です。

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ドーン・オブ・ザ・デッド

2007-06-29 06:22:49 | HORROR
『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督作品。

キャスト:サラ・ポーリー、ヴィング・レイムス

ストーリー:看護師であるアナは夫と安らかな眠りについていたが、家の中に隣家の少女ヴィヴィアンが血まみれでたたずんでいるのに気づく。夫はヴィヴィアンの手当てをしようとするが、凄まじい勢いでヴィヴィアンは襲いかかってくる。

中毒性のある面白さ。
映画としての粗はけっこう目立つのだけれど、他の作品にはない魅力があります。
ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』の再構築作(リエンビジョニング)。リメイクではないのはロメロがリメイクを認めなかったようです。

【ミュージックビデオとしての面白さ】
この『ドーン・オブ・ザ・デッド』が他の映画と比べて魅力的な部分として、「ソンビ」世界をミュージックビデオ的観点で楽しむことが出来る点が挙げられます。
 元々、監督のZ・スナイダーはCMやミュージックビデオの分野で活躍していた人です。そこで培ったであろう感覚が惜しみなく、この作品に注がれています。具体的には、序盤のS・ポーリーが車で逃走するシーンと、中盤のモールでの生活を登場人物たちが満喫するシーン、エンドクレジットの3つなのですが、選曲のセンスが抜群(EDで流れる『dawn with the sickness』をRichard Cheeseがjazz調にアレンジ)で尚且つ短時間で世界や人物がどういう状況に置かれているのかが分かるようになっています。
 「ゾンビ」物の暗い世界感をポップに端的に説明する手法として非常に効果的だったという印象です。


【走るゾンビとガンアクション】
本作で描かれるゾンビはロメロ版で描かれたような鈍重な動きではありません。非常に機敏に動きます(多分、死んでからの方が元気なくらい)
走るゾンビのモチーフは2002年に公開されたダニー・ボイル監督作の『28日後…』にも出てきます。恐らく本作のゾンビ像は2年先に世に出た『28日後…』の影響を受けているものと思われます。そのため両作はよく比較の対象になるのですが、『28日後…』と『ドーン・オブ・ザ・デッド』は作風がかなり異なっています。『28日後…』はソンビ的世界を背景にしたアドヴェンチャーであり、『ドーン・オブ・ザ・デッド』はゾンビ的世界を背景としたアクションです。比較するには前提が大きく離れています。
 『ドーン・オブ・ザ・デッド』がゾンビアクションであることを先に述べましたが、それがこの映画を「恐い」という感想から離れさせる要因となっています。そう、この映画は決して恐くないのです。ゾンビが現れる、すごい勢いで走って来る、銃で撃つ。そんなアクション映画なのです。従って、「恐いのは苦手」という人でも楽しく観ることが出来ます。
 よろしくないのは、銃の描写がある度に銃口をアップにし、空の薬莢が落ちるのをスローで映したりすること。ダサいし、テンポが悪くなる。ここは長編初監督の至らない点であるように思えます。


【最高のエンディング】
 エンドクレジットがここまで面白い映画も珍しいのではないでしょうか。本編後キャラクター達がどうなるかを描いているのですが、恐らくゾンビものとしては初めてP.O.V(手持ちカメラからの視点)を用いた結末は、、、観てのお楽しみ!


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