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オルタモンドは、「もうひとつの世界」、希望と公正のグローバリゼーションを求めて、さまざまな活動や研究に取り組んでいます。

2月9日開催のG7財務相・中央銀行総裁会合に向けて

2008-01-27 | G8洞爺湖サミットに向けて
                   <トンネルに入った世界経済>
     
   ~2月9日開催のG7財務相・中央銀行総裁会合に向けて~
私たちの、世界の人々の生活を破壊する投機マネーの規制を!

年初来の原油・穀物商品市場での価格高騰は、全世界的に燃料・エネルギー、食品価格の高騰をもたらし、インフレの様相を示してきています。国内においても昨年12月の灯油24.0%、ガソリン16.4%、マヨネーズ11.2%、食パン6.4%等々という物価上昇に引き続き、1月には小麦類や食用油などの値上げ、そして4月からは電力と都市ガスの大幅値上げが予定されています(ただし、ノート型パソコンが29.3%の値下げなど工業製品価格の大幅下落のため、12月の全国消費者物価は0.8%上昇に届まった)。私たちの生活の身近なところで急激な物価上昇が起きているのです。

◆生活必需品価格の上昇と投機マネー

生活必需品の価格高騰は、より貧しい人々の生活を直撃します。賃金も上がらず、預金金利も上がらない状況では、1000万人といわれる年収200万円以下のワーキングプアーの人々、そして貧しい年金生活者などの生活がいっそう苦しくなってくるでしょう。物価上昇対策や生活支援のための政策は、まずこれらの人々への現金支給や減税そして社会保障費払いの免除が考えられ、ただちに実施されるべきです。

一方、世界に目を転ずれば、原油や食料を輸入せざるを得ない途上国でいっそう厳しい状況となっています(日本も大輸入国だが金があるので今のところ困らないが買い負けがはじまっている)。国連食料農業機関(FAO)は先月17日、「世界37カ国が穀物価格の高騰や戦争・災害などによる食糧危機を迎えており、国際社会が直ちに対策を取らなければ暴動や激しい飢餓が起こるだろう」と警告しました。国連世界食糧計画(WFP)は、今月24日「急騰する小麦価格は何百万人ものアフガニスタン人を飢餓に陥れる;WFPは、7700万米ドルを求める」とのアピールを発しました。

このように国際的な原油や穀物の高騰は、途上国、先進国問わず襲っていますが、その最大の原因は投機マネーによる価格押し上げです。確かに、中国やインド等の新興国の需要が増大し価格上昇の圧力は高まっているものの、原油先物相場がそうであるように価格が需給関係をはるかに超えたところで決定されているからです。これは米国のサブプライムローン問題を機に株式やドル資産から逃げ出した投機マネーが、原油や金、穀物など現物商品市場に流れ込んでいる結果です。

さて、食糧危機の時代といわれ、インドでは100万人の餓死者を出した1970年代を知る伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏は次のように言っています(2007年12月18日付日経新聞)。

――穀物・食糧価格の高騰をどう見ていますか。
 「食糧危機が叫ばれた1970年代と似ている。71年にドルと金の交換を停止したニクソン・ショックが起こり、ドル安が進む。73年は第一次石油ショックで原油価格が急騰。そんな中で旧ソ連、中国などで大減産、米国は干ばつと穀物の需給環境が激変、価格体系が変わった。トウモロコシは1ブッシェル2ドル台後半、小麦は3ドル台、大豆は6ドルとおおむね2倍になった」
 「当時との違いはオイルマネーをはじめとする過剰流動性がけた違いに膨らみ投機の影響が大きくなったことだ。オイルマネー、ファンド、外貨準備などの過剰なドルは10兆ドルくらいに達する。その1%でも商品市場に入れば価格は飛び跳ねる。原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の年間生産規模の10倍以上となる1500億ドルものカネが原油先物市場に入っている。これが価格を押し上げている」

このように私たちの生活を直撃している物価上昇も、途上国での食料危機も、その主な原因は「けた違いの過剰流動性」、すなわち投機マネーによる価格上昇圧力にあります。このことから私たちの生活はもとより、世界の人々の、とりわけ貧しい人々の生活を守るには、マネーゲームを仕掛けているヘッジファンドや他のファンドや基金による投機マネーを規制していくことが重要です。そして「投機マネーを規制せよ」という私たちの声を、現代の金融体制とグローバリゼーションを支えているG7(主要7カ国)にぶつけていくことです。

◆2月9日G7財務相・中央銀行総裁会合に私たちの声を

ちょうどG7財務相・中央銀行総裁会合(以下、G7財務相会合)が来月9日東京において開催されます。私たちはここに声をぶつけたいと思います。その声の前に、G7財務相会合の位置と今回の課題について調べてみましょう。

G7財務相会合は年2~3回開催され、主要にはマクロ経済(世界経済)について議論し協調していく場であるようです。前々回(07年4月)には「世界経済は過去30年超で最も力強い持続的拡大をしている」と高らかに謳っていましたが、それも束の間、前回(07年10月)では「サブプライムローン問題を発端とした金融市場の混乱への対処」が議題となりました。ただ、そこでは具体策が出せず、金融安定化フォーラムが具体策づくりを行い、今回のG7財務相会合で中間報告、4月のG7財務相会合で最終報告を出すことになりました。

さて、今日金融市場の混乱はいっこうに収まらず、追い討ちをかけるように全世界で株式の同時急落が起きるなどマクロ経済(世界経済)そのものが変調をきたし、後退局面に入りつつあります。ひるがえって、今次サブプライムローン問題とは、このローンを組み込んだ証券化商品のリスク管理の失敗であったと言えます。この証券化商品は「高度な金融技術商品」ともてはやされ、米国の金融機関はもとより、全世界の金融機関が大量に保持しました。現在欧米の金融機関は13兆円規模の損失を出していますが、依然としてその底は見えず、「その数倍に膨らむ可能性がある」とバーナンキ米国FRB議長は言っています。

当然、損失を被っている金融機関は自己資本の毀損を防ぐために強力に貸し渋りに走るでしょうから、実体経済への波及は必至となっています。また、投機マネーの現物商品市場への流入で世界の生活必需品や基礎材料品の高騰をもたらし、このこともインフレの昂進により実体経済を蝕みつつあります。その上、米国では新たにサブプライムローン問題のあおりを受けて「モノライン」(金融保証会社)が破綻しつつあり、金融市場のさらなる脆弱化は避けられない状況となっています。

以上から見て、現在のマクロ経済(世界経済)の危機は、すべて金融問題から発しているといっても過言ではありません。本来マネーは貿易や直接投資、つまりモノやサービスなどを売ったり、工場を建てたりという実際の経済活動を行うための手段でしたが、今や“マネーがそれ自身で利益を生みだす”という主役に踊り出て、しかも金融のグローバル化とともに規模を途方もなく拡大させてきました。昨年段階で、マネー経済の規模は年間約770兆ドルにも上り、実体経済の規模約16兆ドルの50倍にもなっているのです。

G7財務相会合が金融の安定化や景気後退のくい止めたいと考えるなら、根本的にはこのマネー経済(マネーゲームまたはカジノ資本主義)となっている世界経済の改革を行うことです。そのためには、マネー経済の主役であるヘッジファンドや他のファンドの規制、そして投機マネーの規制を図ることです。このことを私たちはG7財務相会合に対して強く要求すべきです。

◆格段に高まるシステミック・リスク、マネー経済からの根本的転換を!

さて、マネー経済の規制のための具体的諸方策は何でしょうか? 第一には、主役となっているヘッジファンド等に対し情報開示の義務化を行わせることです。昨年のG8ハイリゲンダムサミットで一定議論となりましたが、間接的規制を要請したに過ぎないものでした。資産内容、取引履歴など上場企業並みに情報開示を義務化させることが必要です。

第二には、投機マネーの元となっている国際的な短期資金の移動の抑制です。これには通貨取引税(CTT別名、トービン税)が有効でしょう。

第三には、ファンドや基金の現物商品市場への投機の抑制システムが必要です。かつては実需のリスクを回避するための先物市場に投機マネーが入り込み価格をつり上げています。エネルギーや穀物という人々が生活するうえでなくてはならないものがマネーゲームの場となっているのです。

その他、買収ファンドの関係で世界の労働組合が要求している「各種投資ファンドへの公正な税制の導入」なども大事です。

ところで、実際のG7財務相会合では、欧州4カ国(英独仏伊)が「証券化関連商品の情報開示など金融監督体制の連携を強化、再発防止のため各国中銀・金融監督当局の情報交換と臨時資金提供などでの連携体制構築」を提案するようです(1月12日付日経新聞)。しかし、いまだ証券化商品の債務担保証券(CDO)の残高が3兆ドル、信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(想定元本45兆ドル!)もあり、「(金融)派生商品は仕組みが複雑。市場機能が低下し、保有する金融機関の損失が雪だるま式に膨らんで」おり(1月24日付日経新聞)、本当に底が見えない状態です。それで中銀・金融監督当局がきちんと管理できるのでしょうか。

金融危機が高まりそれが経済・社会危機にまで転化したのが、今から10年前のアジア通貨危機とその後のロシアや途上国を襲った経済・社会危機でした。金融危機の原因は、ヘッジファンド等による短期資金の急激かつ大規模な流入そして流出にあったこと、このことは定説となっています。つまり、この時投機マネーが猛威をふるったのです。これを経て、1998年10月に開催されたG7財務相会合は「…ヘッジ・ファンドやオフショア機関等レバレッジの大きい国際的な金融機関の活動から生じる影響を検討する」としていましたが、その検討もヘッジファンド等への規制には及びませんでした。

今日、ヘッジファンドは当時よりも10倍規模が大きくなり、さらに買収ファンドやら国家ファンドなど投資マネーはあふれ、さらに金融商品やデリバティブ(派生商品)は複雑化し、専門家でも訳が分からない事態となり、システミック・リスクは格段に高まっているようです。相当の外科手術が、つまりマネー経済からの根本的転換が求められています。経済危機でまっ先に被害を受けるのは、貧しい人々なのですから。


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