塔ノ岳(1,491m)
「~ なぜ、山頂の小屋の一つに、尊仏の名がつけられているのか。『丹沢夜話』にもその由来はしるされているが、ハンディな参考書というならば『かながわの山 山名をたずねて』 (植木知司著 かもめ文庫 神奈川合同出版 昭和五十四年)を開いてみるのもよい。それによると、尊仏とは塔ノ岳の別名の尊仏山そのものであり、それは山頂近くにあった尊(仏)仏岩にちなむ山名だという。岩は名前通りに仏様に似た形で、雨乞いの信仰を集め、岩肌についた苔には薬効さえあったと伝えられる。 ~」
(浅野孝一・打田鍈一・楠目高明・横山厚夫著『関東百山』(実業之日本社))
日記はつけていませんが、2013年の12月は寒かったようです。丹沢の山々に雪が降ったと知って、この年最後の登山は塔ノ岳にでかけました。
東海道新幹線に乗り、新横浜を過ぎると、大きく立派なピラミッドを見せる大山の左奥に稜線が続き、塔ノ岳の頂上が小さく飛び出ています。高さは大山より200m以上高いです。
丹沢表尾根の塔ノ岳に向かって、麓から伸びるのが大倉尾根です。とても距離が長いので、「バカ尾根」というあだ名がついています。
塔ノ岳へは、岩場の続く表尾根縦走コースもありますが、雪がついていると不安なので大倉尾根の往復にしました。樹林越しに続く屏風のような表尾根、花立山荘からの大山など、見どころも歩きがいもありました。
もうすぐ正月です。豪華な食事の準備に午前中から取りかかっている山小屋もありました。
しめ飾りのかかった花立山荘でお雑煮ではなく汁粉をいただき、少し登ると複線の木道が現れました。雪がここで一気に増えました。遠くには丹沢山と蛭ヶ岳がならび、目指す塔ノ岳はもうすぐです。蛭ヶ岳では霧氷を見ましたが、塔ノ岳では想像以上の雪が積もっていました。
雪に埋もれた階段を登り、丘のような頂上に出ました。登山道から眺める富士山も立派でしたが、山頂からの富士山はさらに立派でした。江の島が浮いている相模湾も見下ろせる新雪の眩しい頂上には、さえぎるものは何もありませんでした。
「~ ところが大正十二年の関東大震災の折に尊仏岩は大金沢にころがり落ちて、行方不明になった。現存するならば正確な大きさも簡単にわかるだろうが、しかし、考えてみれば、霊験あらたかな仏様が何メートル何センチなどと即物的になってしまうのは、いかにも味気ない。「かつて尊仏といふ土俗信仰の大岩ありき」ぐらいにとどめておいたほうが、ずっと床しいではないか。 ~」
(浅野孝一・打田鍈一・楠目高明・横山厚夫著『関東百山』(実業之日本社))
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【大倉尾根から塔ノ岳往復】
小田急渋沢駅⇒大倉バス停9:14→一本松10:29→堀山の家11:06→花立山荘12:05~12:22→塔ノ岳13:18~13:40→大倉バス停16:35
※新雪歩きが楽しい登山道でした。「バカ尾根」の名前の通り長いですが、危ないところはなく、急登も多くはありません。その中では、花立山荘を前に現われる木製の階段が一番急でした。花立山荘を過ぎて、山頂直下の雪道で6本爪の軽アイゼンをつけました。
(登頂:2013年12月下旬) (体力●●●○○ 技術●●●○○)