心が満ちる山歩き

美しい自然と、健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山と、時にはクラシック音楽や旅行のことも。

上越国境の山に登る 巻機山・牛ヶ岳(2)

2023年03月13日 | 谷川・苗場・越後駒


巻機山(1,967m)・牛ヶ岳(1,962m) ((1)のつづき)


 日本百名山を目指し、残りの山が少なくなると、家から日帰りできる山がほとんどなくなってきました。その中で巻機山は一番大変そうな山でした。
 5月の土曜日に始発の上越新幹線へ乗り、朝7時半に越後湯沢駅からタクシーで桜坂登山口を目指しました。
 粘土質の地面から始まりました。雨が降った日には大変なことになりそうです。
 「四合五勺」を過ぎると、樹はすべてブナになりました。大木は少なかったですが新緑は鮮やかでした。
 五合目を過ぎると次第に眺望が開けます。背後にそびえるのは谷川の山々です。遠くから見るとひとまとまりの連なりですが、近くから見ると山ごとにはっきり起伏が付いています。中でも、”上越のマッターホルン”と称される鋭角的な大源太山(1,598m)が、一際存在感を放っていました。
 六合目は展望台で、ヌクビ沢と割引岳、天狗岩が見渡せます。雪も岩も人も転げ落ちそうな急な沢でしたが、雪が残っていました。
 「昨日は西黒尾根から2時間半で谷川岳を登った」という人が、軽快に追い抜かして行きました。谷川岳にもほとんど雪はなかったとのことです。
 真夏のような暑さのせいで、目の前の頂上がなかなか近づきません。しかもその頂上は九合目で、本当の頂上ではありません。九合目は「ニセ巻機山」という名前で、標識まで立っています。日本各地に「ニセ**」という場所がいくつあるか分かりませんが、その中で最も立派な場所だという気がします。
 しかし、ニセ巻機山まで登れば間近に本物の巻機山をのぞむことができます。とてもなだらかな山で、ところどころに樹林帯があり、雲が斜面に影をうつしています。木道を下ると避難小屋が建っており、改装されたばかりだからか中の木材は真新しいです。池塘にミズバショウが咲き、近くにはミネザクラもありました。
 「巻機山頂」の道標に出ても、まだゴールではありません。ここを左に行けば割引岳(われめきだけ:1,931m)です。巻機山の本当の頂上は、右に10分ほど登ったところでした。そこには小石が積まれ、風が吹けば飛ばされてしまいそうな、「巻機山山頂」と書かれた封筒が差し込まれているだけでした。
 さらに20分歩き「牛ヶ岳」も目指しました。巻機山と違って三角点があり、確かにここが頂上であることを示しています。牛ヶ岳から北へ続く山道は、地図上では実線ではなく点線です。少し進んだだけで、道は笹薮に隠されまったく分からなくなりました。
 越後三山は、八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳の順に、どれも堂々とした姿でした。牛ヶ岳からの眺望は、よく知られている山とそうでない山、登山道が拓かれた山と拓かれていない山、名前のあるピークと名前のないピーク、すべて渾然一体となった眺望でした。
 登った道を折り返し、午後6時を過ぎても歩き続けていましたが、麓の清水バス停を18時40分に出る六日町駅行きの終バスには間に合いました。この停留所を出るバスは、1日に3本しかありません。


 割引岳
 
 「~ 五万分の一の地図では、この岩峰の背後の三角点のある山に割引岳と記入されている。割引岳とはワレメキ山の聞き誤りに違いない。清水から仰ぐと、天狗岩とその三角点の山とは重なって見える。陸地測量部の人が村の人にこう訊いたのかもしれない。
   「あの山は何という名前かね。」
   「あれ? あれはワレメキ山でさア。」
   「なに、ワリミキ? ふん、ワリビキか。」
    すぐ地図の上に割引山と記入される。しかも誤ってその背後の山がその名を負ったのだろう。
    こうした名前の聞き誤りは、五万分の一の地図には珍しくない。 ~」(『日本百名山』深田久弥(新潮文庫))







◆◆◆◆◆
【巻機山・牛ヶ岳】
 桜坂登山口8:27→四合目9:02→六合目10:29→九合目(ニセ巻機山)12:38→避難小屋12:47(昼食)→巻機山13:35→牛ヶ岳13:56→避難小屋14:48~15:09→五合目17:02→桜坂登山口17:58→清水バス停18:34
※危険なところはどこにもありませんが、急な坂の多くてとても長い道のりでした。陽の長い季節でなければ、自宅から日帰りすることはできませんでした。
 (体力●●●●○ 技術●●●○○) (登頂:2016年5月下旬) 



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