とにかく前へ1
やっと戦争が終わった。
が、本当に大変なのは
ここからだった。
近江の実家
すみれは、五十八や忠に
神戸の様子を話した。
あたり一面焼け野原だったこと
家も焼けてしまったこと
何もなくなってしまったこと。
そう話をした。
ゆりが帰ってきた。
大阪の会社が焼けてしまったこと。
野上正蔵もなくなったこと。
五十八は驚いて
たちあがった。
声を失った。
『統廃合はお国の指示や
今後の勝利はきっちりわてが
やります。
心配しないように』と野上は
いった。
五十八は東京へ行くという。
九月にはアメリカ軍が和歌山に
上陸し、大阪に進駐した。
そんなある日、子供を背負った
女性が食べ物と交換してほしいと
やってきた。
節子は、あきれた。
靜子は「それでなんやの?」と
聞く。
すみれは彼女が
食べ物と交換して
ほしいといっていると
いった。
「いちいち応対していたら
狙われて自分たちの
食べるものがなくなるわ」と
節子は言う。
すみれは、床の下から
わずかの野菜を
取り出してわたした。
女性はさっていった。
靜子は「あんた
なにして、くれたん?」
すみれは「ごめんなさい」という
と、靜子はすみれをたたいた。
「畑仕事もできないくせに
ノミに食われたこともないくせに
人の家の食べ物を内緒でめぐんで
人助けか!!!」
ののしられた。
ある日のこと長男
肇が帰ってきた。
家族は水入らずで食事をしていた。
すみれたちは、台所に
追いやられた。
「よかったですね」とキヨがいう。
たいていの人は死んでしまったと
話す肇の話をじっときく
すみれとゆりだった。
翌日、長太郎が
ゆりとすみれを呼んだ。
「出ていってもらいたい」という。
肇が帰ってきて
家が手狭になった。
トク子は「この子たちの家は
焼けてしまったのやで」という。
「では、いつまで、めんどうみたら
いいのか?うちにはうちの家族
がいるんだから。」
ゆりは、「なにをいうているんですか。
家だけではなく
大阪の会社も焼けて
潔さんも紀夫さんもかえってこない。
そんな私たちに
でていけというんですね。
わかりました。
出ていきます。」
そういって、ゆりは外へ飛び出した。
すみれは、ゆりを追いかけた。
「今、出ていってどうするの」と聞く。
するとわいわいと
人の声がした。
子供たちが何かを
男からもらっている。
その男は、潔だった。
ゆりは、「潔さん」といって
走り寄った。
「ゆり、ただ今」
「どれだけ心配したと思っているの。」
ゆりは、泣いた。
ようやく潔君が帰ってきた。
***************
セレブでそだったすみれは
大変な思いをしています。
赤ちゃんを背負っている女性に
食べ物をあげたいが、
自分もやっかいものである。
でも、なんとかとおもって
野菜を少し上げることにした。
靜子がそれをみて
「あんた、なにしてくれたん?」
と聞く。
かなり、迷惑なことだと
言わんばかりである。
裕福なお嬢様にとって
かわいそうだと思うだけで
家にどれほどの食べ物があって
どれほど、食いつなぐことができる
ものなのかということが
よくわかっていない。
ついに、長太郎が
ゆりとすみれに出ていってほしいと
いった。
お世話などしたくなかったのだろう。
これが、人の心というものだ。
そんなとき
潔が帰って来る。
ゆりにとっては
うれしい限りであったであろうと
思う。
やっと戦争が終わった。
が、本当に大変なのは
ここからだった。
近江の実家
すみれは、五十八や忠に
神戸の様子を話した。
あたり一面焼け野原だったこと
家も焼けてしまったこと
何もなくなってしまったこと。
そう話をした。
ゆりが帰ってきた。
大阪の会社が焼けてしまったこと。
野上正蔵もなくなったこと。
五十八は驚いて
たちあがった。
声を失った。
『統廃合はお国の指示や
今後の勝利はきっちりわてが
やります。
心配しないように』と野上は
いった。
五十八は東京へ行くという。
九月にはアメリカ軍が和歌山に
上陸し、大阪に進駐した。
そんなある日、子供を背負った
女性が食べ物と交換してほしいと
やってきた。
節子は、あきれた。
靜子は「それでなんやの?」と
聞く。
すみれは彼女が
食べ物と交換して
ほしいといっていると
いった。
「いちいち応対していたら
狙われて自分たちの
食べるものがなくなるわ」と
節子は言う。
すみれは、床の下から
わずかの野菜を
取り出してわたした。
女性はさっていった。
靜子は「あんた
なにして、くれたん?」
すみれは「ごめんなさい」という
と、靜子はすみれをたたいた。
「畑仕事もできないくせに
ノミに食われたこともないくせに
人の家の食べ物を内緒でめぐんで
人助けか!!!」
ののしられた。
ある日のこと長男
肇が帰ってきた。
家族は水入らずで食事をしていた。
すみれたちは、台所に
追いやられた。
「よかったですね」とキヨがいう。
たいていの人は死んでしまったと
話す肇の話をじっときく
すみれとゆりだった。
翌日、長太郎が
ゆりとすみれを呼んだ。
「出ていってもらいたい」という。
肇が帰ってきて
家が手狭になった。
トク子は「この子たちの家は
焼けてしまったのやで」という。
「では、いつまで、めんどうみたら
いいのか?うちにはうちの家族
がいるんだから。」
ゆりは、「なにをいうているんですか。
家だけではなく
大阪の会社も焼けて
潔さんも紀夫さんもかえってこない。
そんな私たちに
でていけというんですね。
わかりました。
出ていきます。」
そういって、ゆりは外へ飛び出した。
すみれは、ゆりを追いかけた。
「今、出ていってどうするの」と聞く。
するとわいわいと
人の声がした。
子供たちが何かを
男からもらっている。
その男は、潔だった。
ゆりは、「潔さん」といって
走り寄った。
「ゆり、ただ今」
「どれだけ心配したと思っているの。」
ゆりは、泣いた。
ようやく潔君が帰ってきた。
***************
セレブでそだったすみれは
大変な思いをしています。
赤ちゃんを背負っている女性に
食べ物をあげたいが、
自分もやっかいものである。
でも、なんとかとおもって
野菜を少し上げることにした。
靜子がそれをみて
「あんた、なにしてくれたん?」
と聞く。
かなり、迷惑なことだと
言わんばかりである。
裕福なお嬢様にとって
かわいそうだと思うだけで
家にどれほどの食べ物があって
どれほど、食いつなぐことができる
ものなのかということが
よくわかっていない。
ついに、長太郎が
ゆりとすみれに出ていってほしいと
いった。
お世話などしたくなかったのだろう。
これが、人の心というものだ。
そんなとき
潔が帰って来る。
ゆりにとっては
うれしい限りであったであろうと
思う。