私は父親っ子だったね
いつもいつも 夕暮れの中
貴方が帰るのを待ちきれず
貴方の職場の門の前で待っていました
いつもいつも 夕暮れの中
貴方の大きな手を掴んで
貴方の大きな優しさに身を委ねていました
そちらは苦しい事は無いですか?
痛い所は無いですか?
貴方が逝った日
泣き叫ぶ母も姉も遠くの景色に思えて
私はひとり 病室を抜け出し
無機質だらけの建物に似つかわしくない中庭で
声を殺して泣きました
幼い私に 何が出来たでしょう?
貴方に何をしてあげられたでしょう?
貴方が眠る姿を
もう二度と見る事が出来ないと
貴方の存在が灰に変わると知ったあの時
周りの大人の手を振りほどき
貴方の棺にしがみつきました
私も一緒に行くんだと
泣いて周りを困らせました
幼さ故に
それしか止める手立てがなくて
幼さ故に
心の整理がつかないままに
貴方がそちらへ逝ってから
貴方の日記を母が読んでくれました
幼かった私が僅かなお小遣いで
貴方に贈ったプレゼントを心から喜んでくれた事
貴方が逝ってから知ったあの日
泣き顔を誰にも見せたくなくて
チラシで顔を隠して泣きました
私は貴方に愛をあげられたでしょうか?
僅かな時間の中で
伝える事は出来たでしょうか?
それだけが今でも気掛かりです……
私は貴女が怖かった
いつも厳しく いつも叱られ
貴女はきっと本当の親じゃないと
幼い頃は疑ったりしていました
生まれてから一年くらい
泣き声もあげずにいる私を殺して
自分も死のうと思ったと
語った貴女の声が忘れられず
時々 憎まれてる気がして
居場所が無いと幼いながら思って暮らしました
それでも 今 思い出すのは
貴女と一緒に入ったベッド
貴女が育てたライラックの色
貴女と遊んだ雪の日
そんな事ばかりで
今更ながら 厳しさの意味を知りました
あの頃 子供だった私には
貴女はとても強い人にしか見えなかった
貴女が人一倍弱い人なんだと想像もせずにいました
あの頃 子供だった私には
貴女の愛を受け取る術を知らず
貴女を傷付けていた事も知らずにいました
貴女に心の内を伝える事が出来なくて
お互いに苦しい日々を送りましたね
そちらで父には会えましたか?
ふたり一緒にいますか?
貴女から与えられた愛はあったのに
見過ごしてしまった事を後悔しています
貴女から教えられた愛もあったのに
知ろうとしなかった子供の頃の私を許してくれますか?
それだけが私の気掛かりです……
いつの間にかあなた方の歳を越えてしまいました
写真の中のあなた方はいつも笑顔で
幼い姉と私の笑顔が咲いてます
幸せだった事ばかりを
色褪せた写真が語ってます
私にも子供が出来 母になりました
もしも生きていたならば
喜んでくれましたか?
抱いてくれましたか?
もしも私がそちらへ いつか行ったなら
写真の様な笑顔で迎えてくれますか?
切ないくらいに好きでした
悲しいくらいに好きでした
多分 どんな時も あなた方に守られ生きて来ました
伝えたい事は沢山あるのに
何を話せば良いのか戸惑います
少しは大人になりました
貴方の影を追ってた頃より強くなりました
少しは大人になりました
貴女の厳しさの真意を読み解く事も出来るでしょう
貴方からは優しさを
貴女からは生きる術を
それは大きな愛であったと
胸を張って生きています
Dear.
あなた方の娘より・・・
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