The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

映像倶楽部、外出する。そしてアカデミー賞

2018年03月13日 | ASB活動日誌
先日、第90回アカデミー賞が発表された。

さすがにリアルタイムでは見れなかったが、かなり気にしてその動向を気にしていた。
近年、こんなにも賞の行方が気になった事は無い。それはある映画のことが気になっていたからである。

Three Billboard Outside Ebbing, Misouri(スリービルボード)だ。


ひで氏です。

この映画がなぜ気になっていたかと言うともちろん、この映画を見に行っていたからなのだが、これには少し特殊な思い出が紐づいている。

以前にこのブログで少し触れた映像倶楽部という仲間内での集まりがある。
詳しくは過去のエントリをみればわかるのだが、お互いに好きな映画をノートを通じて紹介することから始まった10名弱程度のグループだ。

過去エントリ:映像倶楽部の効能

そのグループが先日、初めて「外出」をすることになった。
映像倶楽部の外出、それはつまり実際に映画を見に行き、そのあとは見たばかりの映画を肴に「研究協議」で盛り上がるというものだ。映画好きにとって、こんな夢のような楽しい外出は無い。

まずは何の映画を見るのかというところから始まったのだが、これが恐ろしい。部員それぞれが自分の見たい映画を紙に書いて投票し、多数決ではなく、引いた一枚に書いてある映画を見に行くというものだ。当然、数が多ければその映画が引かれる可能性が上がるのではあるが、1票しかないものが引かれる可能性も充分にあるのだ。

つまり誰かが冷やかしで「プリキュアスーパースターズ」と書いてそれが引かれれば、全員で何が何でもその映画を見に行き研究協議まで終えなければならない。

なんという恐ろしいシステムだ。

結果、この投票で選ばれたのが結局のところ最多数だった「スリービルボード」だったわけだ。

外出当日は全員でぞろぞろと梅田の映画館に出向き、このスリービルボードを鑑賞。
私ひで氏は個人的には素晴らしい映画だと思ったので、見た後も早く感想を他の映像倶楽部員とシェアしたくてたまらないのだが、そこをぐっとこらえて研究協議会場までは多くを語らず我慢して移動する。

そして研究協議の場に選ばれたのは同じく梅田の炉端焼きの店だ。
ここで見たばかりの映画について語るわけだが、これがまた見事に解釈が分かれたり意図がわかりにくい場面が適度にある映画だったので、予想以上に盛り上がり、だいたいこの手の「○○という名の飲み会」的なイベントにありがちな「開始10分くらいでもうただの飲み会になる」どころではなく、本当に最後の最後までスリービルボードについて熱い議論が交わされるという充実度200%のイベントとなったのである。

「映画は夜見よ」

というのは他ならぬ自分自身のモットーである。この場合時間的に夜でないといけないわけではなく、どちらかというと
「映画の後に他の予定を入れない」という意味だ。というのは、例えば昼間に映画を見て夜に別のことをすると、「そういや今日昼に映画見たな」というぐらいまで映画の印象は薄れてしまう。だからできるだけ映画を一日の最後の予定にして、そのまま眠りにつけるぐらい、もしくはそのあとに予定があったとしても映画について語り合うことをフィナーレとするというのが理想的だ。


ここで話は戻るが、こうして初の映像倶楽部の遠征で見たスリービルボードが果たしてアカデミー賞をとるのか否か。


とても気になっていたわけである。

結果、作品賞は逃したものの助演男優賞、主演女優賞を獲得。

自分の中では、映画好きの間でちょっとした会話から発足した映像倶楽部、その映像倶楽部が遠征するにあたってクジで選ばれた映画が見事にアカデミー賞を獲るという一つのストーリーは自分にとってとても嬉しい出来事だった。

人をつなげて、心を動かしてくれる、映画というのは本当に素晴らしいと思う。


アメリカに住んでいたころ、生活の中への映画の根付き方が半端ではない、とよく思った。
とにかく皆基本的に映画が大好きなので、もともと映画がそこそこ好きだった私ひで氏も、ますます映画好きになっていった。


今回助演男優賞をとったサム・ロックウェルの受賞スピーチの中で、8歳の時、学校で校長に呼び出され「おばあちゃんのことでお父さんが迎えに来ている」と言われ、迎えに来た父の車に無言で乗って「おばあちゃん、どこか悪いの?」と聞くと「おばあちゃんはどこも悪くない。映画を見に行くぞ」と言うような父だった、ということだ。(英語だけど下記動画の18秒ぐらいからのくだり)




そんな筋金入りの映画好きの親の元で育った少年がこうして賞をとり、こんなアジアの隅っこの人々にまで少なからず影響を与えているのだから、


映画は本当に素敵だ。