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大善人へ身魂磨き

くちばしの長い鳥 2

昨日の創作童話の続きです。


………


ある時、わたしが絵を描いていると、袋の中身を見つけた気がしました。私の袋の中身は、絵を描くことだったんだと沢山描きました。絵は瞬く間に売れ、私はお金持ちになりました。


絵は私を豊かにしました。私はそのお金で豪華な家と車を買い、沢山の女性をとっかえひっかえしました。何を描けば、いくら稼げるかなと沢山描いていたら、ぱたりと絵は売れなくなりました。


あぁ、私の袋の中身ではなかったんだと思いました。


次に歌を歌いました。私はなかなか声が良くて、ハンサムだったので、瞬く間に私が歌うと人が集まり、歌が袋の中身だったんだと、歌い続けました。


絵を描くときほどではありませんでしたが、困らない位にお金もたまりました。沢山人のいる場所を選んで歌わないと、またお金がなくなると人の集まる場所を選んで歌を歌おうと思いました。


しかし、またパタリと歌を聴く人がこなくなりました。


これも、自分の袋の中身ではなかったんだ、何が袋の中身なんだと、そっから沢山の仕事をしました。


温かい大好きなお母さんは、もうこの世にはいませんでした。


私は袋の中身がわからないまま年をとりました。もう100年はたったかしら。いや、まだまだ。あの時に私はたった100年と何故か思ったのか笑えました。私の人生には、一年一年が長く感じました。


ふと、部屋の片隅に放っておいた油絵の画材セットに気づきました。まだ、絵の具は固まっていないものもありました。また、絵を描いてみたくなりました。


なけなしのお金を袋に詰めて、町の画材屋にいき、白いキャンバスと絵の具を買ってきました。


久しぶりに絵筆を持ちました。私の絵を見にくる人もいません。しかし、白いキャンバスに絵の具がつくたびに、私の心が喜んでいるのがわかりました。


私は絵の中に入っていきました。


私はもう、絵の中で一心不乱に私の周りを描きました。すると、私が創る絵の世界だけは、どんな私も受け入れてくれました。


誰も来ない家で、キャンバスの中に入りひとり私は絵の中で世界を創りました。


下書きもせず、まず背景から絵を描き塗るのです。白い色に色をつけ始めるとき、胸が爆発しそうに高鳴るのでした。


最後に私は私を描きました。私がいる世界で、私を描くのはなんだか変な気分です。


私は私を葉っぱにしたり、岩に落ちる水滴だったり、雲だったり、木から垂れ下がるミノムシだったり、蝶にしたり、蜘蛛にしたり、芋虫にしました。一番景色に溶けこむ私を描きたいと思いました。


私は私を人の姿でなかなか描けませんでした。



私をこの世界に落としたくちばしの長い鳥を絵のどこかに入れました。その鳥はいつもくちばしを閉じていました。


私は、くちばしの長い鳥は、どんな歌を歌うんだろうと想像しました。


次に描く絵の中で、鳥のくちばしを開いて描こうと思いましたが、なかなか上手く描けません。私は、くちばしの開いた鳥を描くのが怖かったのです。またここから落とされるのは御免でした。


私は描いた絵の中の一番好きな世界の中で眠りました。


私の100年はこうして終わりました。神様から貰った袋の中身はわからないままでした。


私は私を送り出した神様に会いました。あの袋は何だったのですかと、わからないまま終わったので聞くしかありません。


気づくと小さな袋を私は握っていました。私は急いで開けました。

私が最後に描いた絵が、袋に入っていました。あのくちばしを閉じた鳥が絵の中から飛び出して私の元に飛んできてくれました。


100年間、ずっと貴方が納得する世界を創造するのを私たちは待っていましたと鳥は私にさえずりました。


はっと思いました。


私は果たして、この絵のような美しく楽しい世界を、自分の周りに創造しただろうか、


そう思うと、与えられたチャンスを活かしきれなかったなぁと反省してしまいました。








おわり



【画像はお借りしました】

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