「袋はあけてはいけませんよ、ほんの100年以内に私の所に還ってこれますからね。苦しくてもしっかりいきなさい」
と神様は私に言われました。そして小さな袋を持たされた私は、大きな袋に入れられました。
その私が入った袋は伸び縮み可能な袋で、くちばしの長い鳥が私の入った袋をはこんでくれました。
入れられた袋の内側からほんのり光る外の世界を見ていました。神様のもとを離れるのは嫌だったけれど、たった100年位平気だよとその時は何故か思いました。一番の場所に自分を落としてくださいとくちばしの長い鳥にたのみました。
鳥がハイといった途端、私は急転直下、真っ暗な世界に落ちました。私の袋の中でしたけれど、落ちるのは怖かったです。
その真っ暗な世界も次第に慣れてきてほんのり光りが感じられました。そして、少しずつ動けるようになりました。音もありました。
無言で私はそれまで神様と話していましたので、あぁ、この全身に響くものはなんだろうと思いました。特に嫌だと感じる響きもありました。
だんだんとそれにも慣れました。音というものに慣れるという感覚を私は最初に覚えました。
すると、急に苦しくなりました。まだ、100年もたっていないのに、おかしいなと思いました。私には時間の感覚がまだありませんでした。苦しくて私はもう辛さに身体をぎゅっと固めました。
光が見えたので、私は助かると思ったのです。私を包んでいた伸び縮みできる優しい袋はパンと弾けました。もう苦しくて、何故、こんな苦しみを経験するのか、と思いながら光の先に飛び出していきました。
しかし、私はそこが光の世界でないことがわかりました。だれも、わたしを理解しないんです。透明な袋から無造作に出された私は、真っ先に熱いお湯のようなものにつけられました。嫌だと思いました。
ここにいきなさいと神様はいわれたのか、あの鳥は間違った所に私を落としたのか、
全身から私は大きな声で泣きました。すると、温かいものに触れ、私が泣いた口に甘い優しい飲み物をくれました。はじめて私は神様は私を見捨てなかったとホッとしました。
いきなさいと言われたときに持たされた袋を探しましたがみあたりませんでした。
あの袋に入っていたものをそれから私は探しました。でもわかりません。開けてはいけませんといっていたので、私はあけませんでした。しかし、あの袋の中身が知りたいと私はずっとどこかで思っていました。
私は宝探しに、この暗い、言葉も解らない世界にきたんだとわかりました。だんだんと暗い世界に明るさが出てきました。
言葉をまずは覚えることにしました。言葉のない世界からきた私は、何もわからないまま真似ることで周りの話す言葉というものを覚えました。
私の身体に染み込むものを最初に口に含んでくれた人をお母さんと呼ぶのだとわかりました。
この地上のお母さんには、色々反抗もしました。神様に持たされた袋の中身がわかりたい気持ちがどこか強かったのかもしれません。
あれ買って、これ買って、それじゃない、買ってもらっても、すぐその宝は袋の中のものじゃないと私にはわかりました。
買って貰ったものや形あるものは、見えない袋の中身ではないことに気づいてしまいました。
つづく