歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 社会保険歯科診療と歯科技工士の法的位置 続き

2005年06月11日 | ごまめ・Dental Today
平成14年03月19日(火)閣議決定
参議院議員櫻井充(民主)提出歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問に対する答弁書について
■歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問主意書
(平成14年2月19日)
医療保険制度改革が叫ばれ、国民医療費の抑制と患者負担の増加が求められている。特に国民医療費の抑制に関しては、歯科医療の推進が効果的であることが指摘され始めている。
すなわち、噛合わせの改善によって寝たきり高齢者の身体機能が回復したり、痴呆症状が改善したりと、歯科医療の推進が国民医療費の削減につながるのである。このような観点から、今後我が国において、歯科医療を重視することが非常に重要であると考えている。
例えば、歯科医療物(補てつ綴物)の製作の分野では、良質な歯科医療物の提供のために、現在の歯科技工士の厳しい労働条件を改善することが必要条件である。
 そこで、以下質問する。
一 昭和六十三年五月三十日に告示された「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法の一部を改正する件(厚生省告示第百六十五号)」において、歯冠修復及び欠損補綴料(以下「技工料」という。)は、歯科技工士と歯科医師が、おおむね七対三の割合で分けることが記されている。しかし現場では、この告示は余り守られていないばかりではなく、法的拘束力も持っていない。この告示は、なぜ法的拘束力を持たないのか、その理由を明らかにされたい。
二 このような現状を招いたのは、そもそも技工料が低いからだと思われる。なぜなら、患者の自己負担増による歯科患者の減少と現在の不況があいまって、歯科医師は厳しい経営を強いられており、技工料の取決めを守れないような状況に追い込まれているからである。よって、この告示に実効力を持たせるためには、技工料そのものを見直すことが重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
三 今後は、明確な役割分担に基づくチーム医療を進めるため、歯科医師、歯科衛生士及び歯科技工士などの歯科関係者がそれぞれ自立することが重要である。その意味では、技工料が歯科の枠内で設定されている現状は、歯科医師と歯科技工士の間に実質的な上下関係を形成してしまうため、適切でないと言える。よって、今後は技工料を歯科医師と明確に分離すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
  右質問する。
■歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問に対する答弁書
一について
  健康保険法に規定する療養に要する費用の額の算定方法(平成六年三月十六日厚生省告示第五十四号。以下「算定告示」という。)別表第二第二章第十二部通則においては、歯冠修復及び欠損補綴料に含まれる費用のうち、補綴物等の製作技工に要する費用の割合はおおむね七割であり、補綴物等の製作管理に要する費用の割合はおおむね三割である旨を記載しているが、これは、補綴物等の製作技工の委託を円滑に実施する観点から、製作技工に要する費用と製作管理に要する費用の標準的な割合を示したものである。
  しかしながら、算定告示は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条ノ九第二項に基づき、保険医療機関等が療養の給付に関し保険者に請求できる費用の額の算定方法を定めるものであり、保険医療機関等が補綴物等の製作技工等を委託する際の委託費の額を拘束するものではない。
二について
  歯冠修復及び欠損補綴料については、歯科医業の経営の実態、歯科医療技術の進歩を踏まえて適切に設定しているところである。なお、平成十四年度の診療報酬の改定においては、義歯等の製作に関する診療報酬の引き上げを行うこととしている。
三について
  診療報酬体系については、今後、医療保険制度等の改革の中で見直しを行うこととしているが、現行の診療報酬体系においては、補綴物等の製作管理及び製作技工は相互に密接する一連の行為であるため、一体的に評価することが適切であると考えている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平成14年4月17日 第154国会 衆議院 厚生労働委員会議事録
○大塚政府参考人 ただいま御指摘のありましたような昭和六十三年の告示がございます。この七、三という割合を告示で定めましたのは、当時でございますけれども、当時の厚生省が実施をいたしました歯科技工料金調査、この結果を踏まえまして、いわば当時の実態を勘案した割合ということで、標準的な割合としてお示しをしているものでございます。
○金田(誠)委員 そこで、今日の実態としてはこの七、三が大きく崩れているという話を伺ったわけでございますけれども、実態はどうなのか。七、三から六、四。六、四から五、五。場合によっては逆の七、三まであるなんという話も仄聞しているわけでございますけれども、この実態の数字をお示しいただきたいと思います。
○大塚政府参考人 製作技工に関するさまざまな種類がございますから、種類ごとにもちろん異なるわけでございますし、個別のケースごとに異なるわけでございますが、全体といたしまして、直近の数字で把握しておりますのは平成十一年度の数字でございますが、歯科技工料金調査をいたしまして、この結果によりますと、全体の平均で、いわゆる七に当たる部分、製作技工に要する費用の部分が六六・六%という数字を私ども把握いたしております。
○金田(誠)委員 私どもが聞かされている実態とかなりこれは違うのかなという印象を受けます。
 ついては、その平成十一年の調査でございますけれども、その調査の集計表といいますか、恐らく地域格差だとか、あるいは補綴にしても、部分によってこの六六・六のところもあれば、もっと低いところもあれば、いろいろあるんだと思いますが、その辺も調査されているのかどうかも含めまして、調査結果表というんでしょうか、調査表というんでしょうか、それについて、資料として後ほど御提示いただけますでしょうか。
○大塚政府参考人 これは、診療報酬の審議をいたします中医協での必要に応じて御提示する資料という性格のものであることが一点。それからもう一点は、なかなか難しい点が一点ございますので御了解を賜りたいんでございますが、実際上、それぞれの取引は、自由といいましょうか、当事者の合意で取引されるわけでございますが、そうした点に直接的な影響を与えるというのも避けなければならないという要素がございます。
 ただ、調査をいたしているわけでございますから、少し精査をいたしまして、整理をいたしまして、お示しできるものについてはお示しをいたしたいと考えております。
○金田(誠)委員 私の聞く範囲では、今のような数字であれば、わざわざ私のところまでは恐らく来ないんだろうというふうに思います。聞いている実態は、これとはかなり違うものでございます。そのスタートラインといいますか、共通認識の上に立って議論をしなければ、かみ合わない議論になってくれば意味のないことでございますから、ぜひその議論の土台をそろえるという意味からも御提出を強くお願い申し上げておきたいというふうに思います。
 次の質問に入らせていただきますが、なぜこの七、三が空文化しているのか、その原因でございます。
 技工料の取り決めが、七、三という取り決めが守られないほど技工料の診療報酬が低いという指摘もございます。あるいは、この背景として、診療報酬の医歯格差というものがだんだん拡大をしていって、歯科としては厳しい状況に置かれている、あるいは、歯科医師の需給バランスが崩れて個々の診療所の経営が非常に困難になってきている、さまざまな背景があると伺ってはおりますけれども、厚生労働省として、この七、三に対して、実態は私は大きくかけ離れていると思っていますし、さっきの数字ですとそんなにかけ離れていないことになってかみ合わないことになるんですが、私の理解をしている、この大きく乖離している実態、この辺の原因、七、三が守られてこない原因を、どういう理解をされておりますでしょうか。
○大塚政府参考人 さきにお話の中にございましたように、私どもとしては、もちろんどんぴしゃりという数字ではございませんけれども、基本的には、全体といたしましては、七、三にそう大きな乖離がない状態になっているというふうに見ておるわけでございます。
 先ほども申しましたように、当事者間の取引という性格がございますので、いろいろなケースがある、その七、三問題とは別に、全体として、例えば歯科医師の需給問題やら歯科医療に関します全体的な課題がさまざまあるということはよく私どもも認識をいたしておりますが、その問題が直接にこの七、三の問題にダイレクトに結びつく問題だとは、私どもは現時点においては認識しておりません。
 ただ、いずれにいたしましても、歯科医療の大半を占めるのが歯冠修復あるいは欠損補綴というものでございますから、その業務が関係者の間で、先生がおっしゃいました、チームワークという表現をとられましたけれども、関係者の連携で円滑に進むというのが患者にとりまして最大のメリットでございますから、そうした観点で、こうした両当事者間の関係が円滑に進みますように私どもとしても願ってもおりますし、また必要な努力を続けてまいりたいと考えております。
○金田(誠)委員 やはり、実態がどうなのかというところの認識をそろえて議論をしないと今のような議論になりますので、厚生労働省として押さえているこの実態調査を何としてもお示しいただかないと議論がつながっていかないなと思うものですから、また重ねて御要請を申し上げておきたいと思います。
 次の質問でございますが、昭和六十三年十月二十日付で厚生省保険局長名の通知が日歯と日技の会長あてに出されております。その中では、この七、三の割合は良質な歯科医療の確保に資することを図ったものでありますとされているわけでございますが、この意味合いをちょっと解説していただきたい。
 といいますのは、良質な歯科医療の確保に資することを図ったということでございますから、一定の診療報酬が決まる、それを、技工の部分が七、管理の部分が三、こういう形で区分けをするということが適切な歯科医療をならしめるということでございますから、当然これは守るべきものであるんだという意味合いがこれに込められていると思うんですが、その辺の解説をお願いしたいと思います。
○大塚政府参考人 七、三告示に合わせまして保険局長名の通知が出ておるわけでございまして、お話ございましたように、良質な歯科医療を確保するためという観点での通知でございますけれども、やはり、歯冠修復、欠損補綴といった業務が関係者、具体的には歯科医それから歯科技工士、歯科衛生士さんなどもおられますけれども、特に歯科医、歯科技工士の間で円滑に業務が進むということが、トータルとして、全体として、歯科医療の円滑な実施につながる、患者の福利に通ずるということで七、三を標準的な割合としてお示しをいたしましたので、その趣旨をお踏まえいただいて、チームワークのとれた歯科医療を実施していただきたい、こういう趣旨、思いを込めた通知というふうに考えております。
○金田(誠)委員 さらにまた、同じ通知の中には、この厚生大臣告示の趣旨を踏まえ、関係団体との間で話し合いを行っていただくとともに、個々の当事者間で円滑な実施が図られるよう会員を御指導いただきたくお願いいたしますと、これが日歯と日技の両方に出ている文章なわけでございます。
 こういうことで、まず関係団体との間で話し合いを行う、さらに会員を指導していただくと。この七、三ということが問題にならないようにするという意味の通知だと思うわけでございますけれども、この辺の話し合いなり指導なりというものが適正に行われているという実態なのでしょうか。その辺のところ、どのように押さえておりますでしょうか。
○大塚政府参考人 通知の中で触れられた内容でございますが、おっしゃったとおりでございまして、基本的には、繰り返しで恐縮でございますが、歯科医療機関と歯科技工所の間のいわば自由な取引、自由な契約で決まる、価格が設定されるということになりますけれども、標準的な割合をお示しして、その趣旨を会を通じて個々の会員にも十分周知していただくようにというお願いの文章でございます。
 関係者の間でいろいろ引き続き議論があることはもちろんでございます。これは、それぞれの事情もいろいろ変化もし、厳しい環境でもございますから、御意見はございますけれども、全体といたしましては、この六十三年通知、告示の趣旨を踏まえて適切に対応していただいているというのが基本的な認識でございます。
○金田(誠)委員 根っこのところで、現状の数字が、私どものとらえている実態と厚生労働省の調査と一致をしておらないというところでの質問の継続なものですから、どうもかみ合ってこないわけでございますけれども。
 これは、例えば七、三が、仮に五、五というのが主流になってしまった、こうしたとします。先般、保険局からいただいた資料の中に、例として総義歯二千五十点という数字が載っておりました。二千五十点であれば、七、三に分ければ千四百三十五点と六百十五点ということになるわけでございますが、仮に五、五ということにしますと、千二十五点対千二十五点、こういうふうになります。
 そこで、技工士さん方が心配しておられることは、千二十五点でも技工が可能である、こういうことになるとすれば、千二十五点に七、三の三の六百十五点、これをプラスしますと、千六百四十点ということになり、現行二千五十点との差は四百十点、これが引き下げ可能ということになりはしないか。
 今でさえ低い診療報酬がこのように引き下げられるなんということは、現実問題としては考えられないことでありますけれども、こういう七、三というものが、六、四あるいは五、五という状態が続けば、保険者あるいは被保険者はもとよりでございますが、会計検査院あるいは総務省、さらに財務省というところからも、これは放置できないという声が起こりはしないかということも心配になってくるわけでございますけれども、この辺のところ、厚生労働省、どのようにお考えでしょうか。
○大塚政府参考人 ただいま総義歯の例を引いて御質問でございますけれども、私ども、歯科医療において、さまざまな重点項目ございますけれども、歯あるいは補綴物の長期維持に資する技術などについては、やはり今後の歯科医療を考える上でも重点というふうに考えておりまして、今回、御案内のように、全体といたしましては、厳しい環境のもとで、歯科診療報酬につきましても、いわゆる技術料部分につきまして医療費ベースで一・三%、全体としては引き下げを行いました。これは医科、調剤も同様でございますけれども。この中で、有床義歯あるいはその他の歯の補綴物に関連する技術につきましては、厳しい環境の中で引き上げを行いました。例に出されました総義歯につきましては、これを据え置く、厳しい環境の中での据え置きという措置も講じました。
 こうしたことで、歯科医療の中でも特に重点を置くべき分野、今後歯科医療の質の向上という観点から必要な分野、御指摘の事項なんかも含まれると考えておりますが、こうした技術あるいは歯科医療につきましては必要な評価をきちんとしてまいりたいというのが基本的に我々考えているところでございます。
○金田(誠)委員 今の御答弁も、七、三ということが守られていての話だと思うわけでございまして、それが崩れてくる。まあ、多少の崩れというのは、上に崩れる、下に崩れる、いろいろあるのかもしれませんが、いずれにしても、七、三というものを基本にしながら、多少の幅という程度のものだろうと思うわけでございます。
 それが、私どもが承知しているような形で七、三が崩れてくると、今のようなお話も保険者あるいは財政当局等の関連では面倒な問題になってくるんではないかなということを御指摘申し上げたいと思うわけでございます。
 最後に大臣、恐縮でございますが、お伺いをしたいと思います。
 七、三という割合が標準的な形ということで告示をされ、それについての円滑な実施ということでこれまた通知がされるという中で、厚生労働省の調査と私どもの把握と多少違うようではございますけれども、いずれにしても、かなり大きな問題として今提起をされている実態でございます。
 この七、三というものを本来の形に戻していくという立場から、努力をしていただく、具体的な方策を講じていただくということで、ぜひひとつ御尽力を賜りたいと思うわけでございますが、その辺のお考えを伺わせていただきたいと思います。
○坂口国務大臣 七、三問題といいますのは、私も随分前から実はお聞きをいたしておりまして、何とかならないのかというお話が随分前からありました。ここにきょう御出席の与野党の皆さん方の中にも、この問題何とかならないのかというふうにおっしゃる方はかなりおみえになると私思っております。
 これは、議論をいたしておりましても決着のなかなかつかない話なんですね。それで私は、やはりここは歯科医師会の皆さん方と一遍お話をする以外にないと実は思っております。そして、忌憚のないお話を申し上げて、この問題は前進させる以外にないというふうに考えております。
 前々から私も思っておりましたことの一つでございますので、時間を見まして一度率直にお話を申し上げたいと思っております。


最新の画像もっと見る