歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

韓国における公的医療・公的医療保険等に持続可能で効率的な有床義歯給付

2009年09月29日 | ごまめ・Dental Today
韓国医療保険有床義歯給付導入・保険歯科技工所制度創設論点検討メモ07
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韓国における公的医療・公的医療保険等に持続可能で効率的な有床義歯給付を導入することを前提にした保険歯科技工所制度創設の論点検討

歯科技工士 岩澤 毅

 歯科医学・歯科医学に関与する技術を学ぶ者にとって、その科学と技術の恩恵がより広範な人々に供されることは、国を異にするとは言え専門職として喜びとするところです。
 しかしながら、現在日本における公的医療・公的医療保険等による有床義歯給付等は、出口の見えない混迷の中にあります。その要因については、様々な分析が試みられていますが、解決の兆しがありません。
以下の各論点は、日本の歯科業界・歯科技工業界の現状の反省を踏まえ、入手し得た限られた韓国の医療制度・医療保険等の情報から韓国において低所得者層へのセーフティネットとしての有床義歯給付の導入を行う場合を検討し、各種の想定を行ったものです。

a.給付内容に関する検討
前提条件
韓国における歯科補てつの大部分は、従来と同様に保険給付外として残るものとする。すなわち、従来の「自費」歯科技工所と「自費」技工は現在のまま残るものとする。保険歯科技工を選択した歯科技工士グループが、保険歯科技工所を新設するモデルである。
給付内容
韓国の公的医療・公的医療保険等おいて、低所得者層へのセーフティネットとしての「有床義歯の給付導入」を推進することを前提とすれば、公的医療・公的医療保険制度の設計としては給付をノンクラスプデンチャーとし、他の維持装置に関しては「自費」で選択可能な制度を想定する。
※いわゆる「二階建て」ではなく、低所得者へのセーフティネットとしての「歯科補てつの供給体制の基盤整備」を行うイメージである。日本で囁かれる国民皆保険制度からのいわゆる「補てつ外し」とは異なる。
理由
財政当局や医科の価値観からは、「貴金属の国際市況」や「為替」にある種左右される歯科補てつの財政は、理解がなかなか得がたいものと考える。さらに、韓国には「アジア(IMF)危機」(1997)の記憶がまだ存在するのではないかと推測する。
公的医療・公的医療保険財政のリスクの低減という観点から、「貴金属の国際市況」や「為替」の影響が極力少なく且つシンプルな制度設計が望ましいと考える。

b.(保険歯科技工所の製作)保険点数想定・改定想定
導入時 基点時の実勢取引価格の105%←歯科技工士への保険技工参入へのインセンティブ
5年後 基点時の100%←有床義歯給付導入による需要拡大益の社会還元
その5年後 基点時の95%←保険歯科技工所の効率化・合理化益の社会還元
その5年後 原価計算によるものとする
※後年における経済・物価変動等の影響による基点時実勢取引価格との名目乖離等は補正する

c.想定する歯科技工所・業界の姿
1. 保険歯科技工所・保険技工士制度の創設
2. 保険歯科技工所開設許可制(行政による公的医療・公的医療保険提供計画に基づいた保険歯科技工所の適正配置と保険歯科補てつ供給体制整備計画の実施、保険歯科技工所の自由開業制はとらない。
3. 非営利・事業協同組合を選択(保険歯科技工所の経営形態として)←安定性・効率性・継続性の確保、従来の「自費」技工と比して利益は少ないが、安定的であるモデル。従来の「自費」歯科技工所の分社あるいは協業化・協同経営からの派生する経営体モデル。公的医療・公的医療保険財政からの利益を他分野に投資することの制限、利益分配制限。
4. 組織化された機能的で効率的な歯科技工所(3~5名以上or6~8名以上or10名前後以上等から韓国の国情により選択)を、政策誘導 (融資、助成、安全基準、設備基準、技術基準、人員配置基準等) により実現する。←製作・渉外・経営管理組織等組織内役割の確立、教育・研究余力確保、専門技術職後継者の教育・育成・養成力確保
5. 歯科技工所開設者・管理者資格の創設←経営管理と教育・人材育成・人材養成、技術管理を中心に
6. 保険歯科技工所開設者・管理者資格の創設←医療保険関連知識を中心に
7. 歯科技工士免許更新制度の創設←技術教育を中心にした研修・教育制度
8. オンライン請求(保険歯科医療機関からの請求と照合・突合)の実施
9. 保険歯科技工所連盟の創設←行政、保険者との窓口役割。設備基準、医療保険関連知識普及等を担う
10.トレーサビリティー制度の確立←第三者機関による、入れ歯の安心安全の担保を期待
※公的医療・公的医療保険等の歯科技工を担う保険歯科技工所は、継続可能で効率的な経営が求められる。また、公的医療・公的医療保険等の歯科技工を担う保険歯科技工所は、公的医療・公的医療保険制度等と歯科技工業界の継続性を担保する人材教育・育成・養成の機能の役割を担うべきである。

以上
参考文献
Seok-Hoon Ko:The present & future of the education System of the Korean dental technicians,日本歯科技工学会雑誌,第29巻特別号,48~49,平成20年11月.
岡本悦司:アジアの医療保障制度,6章韓国,161~195,東京大学出版会,東京,2009年3月27日.
榊原悠紀田朗:社会保険歯科医療小史,Ⅳ.健康保険における補綴給付,109~122,財団法人口腔保健協会,東京,平成元年9月30日.
榊原悠紀田朗:歯科保健医療小史,第6章大正・昭和期,117~119,医歯薬出版株式会社,東京,2002年1月20日.

参考Webサイト(2009.09.23取得)
保団連 韓国視察報告(2007年5月3日~5日)
http://hodanren.doc-net.or.jp/online/kankoku-honnbun.pdf
KDA
http://www.kda.or.kr/kda/
KDTA
http://www.kdtech.or.kr/
韓国文化院
http://www.koreanculture.jp/
駐日大韓民国大使館
http://korea.or.jp/
ブログ「某歯医者の言いたい放題」より (原典不明)
日本歯科医師会 第161回代議員会  2008年9月11日
また大久保会長は答弁の中で、韓国歯科医師会会長が日本歯科医師会を表敬訪問された話を紹介。それによれば、「韓国でも補綴の保険外給付に国民の不満が強まり、韓国政府は補綴の保険給付の検討に乗り出している。そこで補綴を保険給付している日本の実情を聴きにきたということで来日された」と。大久保会長はそれに対して、「保険給付されれば率直にいって点数は下がる。しかし国民の要望に答えてあげてほしいと答えた」と紹介。
http://bousikai.seesaa.net/article/106487069.html
(2009.09.29取得)
NPO法人みなの歯科ネットワーク「会の最新情報」
恐れているもの
http://minsika.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-8098.html
2009.09.26記
2009.09.29修正・追加 義歯→有床義歯 参考Webサイト追加

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