9月議会が閉会いたしました。27日が最終日で採決の日でした。 たくさんの議案を可決するのか、否決するのか3議案が大きく分れましたが、そ
のうちの79号議案は採決結果が賛成11票、反対8票で可決されました。 この79号議案に際し、私は賛成致しました。 下記に私の賛成討論の原稿を掲載いたします。
「第79号議案の賛成討論」
私は第79号議案に賛成の立場で討論いたします。
この第79号議案は『市の施設、ふれあいの森総合公園の指定管理者として、市がその管理候補者として決定した宗像緑地建設株式会社を議会が承認するかどうかという議案であります。
ここですぐに賛成理由だけ申し上げても、傍聴されている市民の皆様の中には前後のいきさつをよく知らない方もたくさんおられるかもしれませんので、これからすこし噛み砕いて丁寧に討論したいと思います。 少し時間を頂きますが、市民の皆様、どうぞよくお聞きいただきたいと思います。
そもそも指定管理者制度とは、小泉内閣発足後の日本において急速に進行した民営化の一環であります。 地方自治法の一部が改正され2003年 9月2日から施行されました。
この制度は、それまで市やその外郭団体に限定していた公の施設の管理・運営を、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる制度であります。 宗像市もこの制度を2005年に「かなこの里」から導入しました。
その選定の方法は市が定める条例に従ってプロポーザル方式や総合評価方式などで指定管理者候補を選定し、施設を所有する市の議会の決議を経ることで、最終的に選ばれた管理者に対し、管理運営の委任をすることができます。 これにより期待できるメリットは大きく次の2点です。
① 施設運営面でのサービスの向上が期待出来る。
② 管理運営経費を削減できる。 (その結果、市の負担軽減に繋がる)
従って、この2点をより実現する事が出来る候補者が選定されるのが当然でありましょう。
今回のふれあいの森総合公園の指定管理者に公募されたのは2団体でした。 その2団体を選定委員会が慎重審議の結果、選定したのが宗像緑地建設株式会社でした。 審査を行った選定委員会は利害をもつ当事者とは全く関係の無い、公正・公平な立場での方々で、いわゆる第3者によって構成される審議委員会です。
評価項目は①経営方針、 ②職員の配置、 ③研修計画、 ④自主事業計画、⑤サービス内容、 ⑥個人情報の保護措置、⑦緊急時対策、⑧その他、⑨提案価格 の大きく9項目で厳しく審査され、その結果、宗像緑地建設株式会社の評価得点は1,236.5点、提案価格は5,480万円でした。 一方、選定から外れた宗像市体育協会と宗像市シルバー人材センターのコラボレートの評価得点は1,126.0点、提案価格は5,996万円でした。
2社の評価得点差は110.5点、提案価格差は516万円(提示価格の約10%差)と大差がつきました。 その結果、指定管理候補者として宗像緑地建設株式会社が選定されました。 この宗像緑地建設株式会社は現在のふれあいの森総合公園の指定管理者であり、既に3年半の実績を有している会社であります。
この選定委員会の審査結果を受けて、市は庁議でふれあいの森総合公園の指定管理候補者として宗像緑地建設株式会社を決定し、今議会に諮っているわけですが、本会議最終日に行われる採決に先立ちましてこの議案は建設産業常任委員会に付託され、委員会の少人数で深く審議されました。
この79号議案が建設産業常任委員会で審議された結果、委員会では反対多数で否決されました。 何故、このような結果になったのでしょうか。 私は何度も委員会の録画を見直して反対理由を確かめました。 宗像市議会では市民の皆様がいちいち議会まで足を運ばれなくてもインターネットから議会を傍聴できるシステムを構築しています。 例え、リアルタイムで傍聴を逃しても後から再生録画を見ることが出来るのです。 市民の皆様も是非、大いにご利用下さい。
建設産業常任委員会での反対討論を確かめた結果、反対理由は主に次の5点が挙げられます。
① 『自動販売機の件』
② 『社長交代の件』
③ 『高齢者の雇用の機会を奪った件』
④ 『管理がいい加減の件』
⑤ 『市が一元管理せよ』
以上の5つの反対意見をこれより一つずつ検証してまいります。
まず最初に、一番目の 『自動販売機の件』です。 この件を関係者への聞き取り調査の結果、次のような事実が確認できました。
指定管理者制度導入前にシルバー人材センターがこのふれあいの森総合公園を管理していた時、某社会福祉団体(団体名は匿名とさせていただきます)が市の許可を得て、管理棟南側側面に2台の飲料水と1台のアイスクリーム自動販売機を設置しました。 夜間の公園は全く人気が無いために、この自動販売機の前面が壊され、販売機の中の千円札が盗られる事件が3回も発生しました。 そこで千円札の使用を出来なくし、硬貨のみ使用できるよう自動販売機を改造しました。 すると昼間の小銭を持たない公園利用者が千円札の両替のために管理事務所へ頻繁に来るようになりました。 しかし、管理事務所は現金を全く取り扱わないため、両替を出来ません。 結果的に公園利用者に大変な不便を強いることになりました。
そこで平成22年に宗像緑地建設株式会社がこのふれあいの森総合公園の指定管理者になった時、市民サービス向上の観点から千円札が使える自動販売機を設置するように、市からその社会福祉団体へ打診がありました。 しかし、社会福祉団体は千円札を使える自動販売機を設置すると、千円札がまた盗難にあうのではないか、または釣銭切れにならないかと一日の内に朝夕2回も自動販売機の所まで行って管理することなどとてもできないとの理由で、千円札を使える自動販売機を設置することを辞退されました。 そこで3者合意のもとで、宗像緑地建設株式会社が千円札を使える飲料の自動販売機3台を設置することとなりました。 これが設置のいきさつです。
当然のことながらこの社会福祉団体の売り上げは減少しました。 ではこの社会福祉団体がこの自動販売機の売上額の減少に対して宗像緑地建設株式会社を非難しているかというと全くそうではありません。 むしろ、平成22年度から宗像緑地建設株式会社が指定管理者になった時点で、この自動販売機を撤去しろと言われると予想していたそうであります。 しかしながら、意に反して自動販売機をそのまま継続して設置してもよいということになったのでホッとしているのが本心だとこの社会福祉団体の責任者の方が語っておられました。 当然、この社会福祉団体は宗像緑地建設株式会社に設置料を支払っています。 約41%も売り上げが減ったというのはその設置料を加味しての純減ということになります。 その某社会福祉団体の責任者の方曰く、『それでも、自動販売機からの売り上げがあることはとてもありがたい。 売り上げが減ったからと言って、自動販売機を撤去するなど一切考えていません。 宗像緑地建設株式会社さんは、むしろいろいろなイベントを企画しておられますのでそのイベントの際には一緒に出来る事があれば是非、やりましょうと言って参加の協力要請などしてこられます。 宗像緑地建設株式会社さんとはいい関係ですよ。』とのコメント。
従って、委員会の中で出た反対意見、 つまり宗像緑地建設株式会社が障害者福祉のために使われるべき自動販売機の売り上げ(利益)を阻害する様な自動販売機を増設したことは、弱者への配慮が足りない、障害者福祉の観点からも大きな問題であるとの反対意見は少し誤解があったのではないでしょうか。
障害者の福祉問題は重要な課題であると私も重々認識いたしております。 障害者福祉のためにお金がもっと必要であるというならば、それは福祉政策の問題です。 その議論は改めてそういう場でやって戴きたいと思います。
次に、2点目の『社長交代の件』です。
建設産業常任委員会の中で、『平成22年4月から宗像緑地建設株式会社がこのふれあいの森総合公園の指定管理者になった。 同年8月にはすぐ社長が交代した。 そしてその交代理由すら不明である。 これは市民に大きな不安を与えかねない。 このことは行政処分の対象になるのではないか。 とても容認できない。』という反対意見がありました。
ふれあいの森総合公園の指定管理者の契約は、宗像市と指定管理者との間の契約です。 この場合、契約相手の指定管理者とは 宗像緑地建設株式会社という法人格であって、宗像緑地建設株式会社の社長個人ではありません。 宗像緑地建設株式会社の責任者は勿論、代表取締役であります。 一般的に株式会社の代表取締役は取締役会や株主総会で承認されて決定しますので、代表取締役は取締役会や株主総会の都合でいつでも変わる可能性があります。 それはどこの会社もそうです。 従って、宗像緑地建設株式会社の社長交代が4年間の指定管理期間中に起こっても何ら不思議ではありませんし、指定管理者の契約上も何ら問題はありません。 しかし、社長交代によってこのふれあいの森総合公園の管理業務に何か支障をきたすような事があれば、それこそが大問題です。
で は、「宗像緑地建設株式会社」の社長交代によってふれあいの森総合公園の管理上に何か支障をきたしたのでしょうか? いいえ、何か支障をきたしたという話は全くありません。 それは公園利用者数の推移によっても明らかです。 公園利用者数の推移表を見てみると、平成22年に宗像緑地建設株式会社が指定管理者になる前の年、つまり平成21年の公園利用者数が37,560人。 これを基準値100%としましょう。 翌年の平成22年度の公園利用者数は62,779人で対前年比 167.1%と一気に伸びています。 更に2年目の平成23年は76,542人で対21年度比 203.8%。 3年目の平成24年度は78,598人で対21年度比 209.3%と倍増しています。
公 園利用者数が伸びている要因として、公園の管理が行き届いているということは勿論ですが、その他に2つの主な要因が考えられます。 一つは企画力ともう1つは予約システムです。
まず、一つ目の企画力ですが、年間のイベント数は初年度が3イベント、2年目は5イベント、3年目は7イベントと充実してきています。 特に「宝探し散策イベント」は募集定員にすぐ溢れる位の応募があり大変盛況です。
二つ目の予約システムですが、これは宗像緑地建設株式会社さんが独自に開発したシステムです。 施設の予約をホームページから誰でも簡単に予約ができます。 ホームページや電話やFAX等での予約を一切受け付けないどこかの団体とはケタ違いの便利さです。 宗像緑地建設株式会社は福岡県営の名島運動公園の指定管理者にもなっていますが、この予約システムが非常に使い易いということで福岡県が他の県営の公共施設全般にも導入して使用しているくらいです。
「これらのことは、前社長では出来なかったかもしれない。 つまり、いろんなイベントの企画や予約システムなどは40歳代の若くて柔軟性とやる気のある新社長に交代したからこそ出来たのかもしれない。」と宗像緑地建設株式会社の社員さんが話してくれました。 ちなみに前社長はもう一つの不動産会社の仕事に専念したいとして宗像緑地建設株式会社からは完全に手を引かれているそうです。
初めの社長交代の話に戻ります。 社長交代そのものが大問題であるならば宗像市内で外の指定管理者に目を向けたとき、例えば宗像ユリックスはどうでしょうか。 宗像ユリックスの指定管理者は公益財団法人宗像ユリックス(元の財団法人宗像市総合公園管理公社)です。 ここの理事長は定期的に交代します。 宗像ユリックスの理事長交代も今回の会社の社長交代と同じ理屈だと思われますが、宗像ユリックスの場合は問題にならないのでしょうか。
次に3点目の『高齢者の雇用の機会を奪った』 の件です。
指定管理者制度を導入する前はもともとシルバー人材センターがこのふれあいの森総合公園を管理していました。 ふれあいの森総合公園の指定管理者に宗像緑地建設株式会社がなったことによって、 『宗像市シルバー人材センターの仕事が減った。 高齢者の雇用機会が非常に少ない中で、高齢者の仕事を取り上げていることになる。 高齢者福祉の観点からも問題である。』 という反対意見が建設産業常任委員会の中でありました。
それでは宗像市シルバー人材センターの売り上げを見てみましょう。 平成24年度の売り上げは2億6,000万円、660人の登録者の内、577人が実稼働しています。 人的稼働率は94.4%です。 売り上げの中の1億5,000万円は公共事業の仕事です。 そしてその中の1億1,000万円は宗像市から独占的に随意契約でもらっている仕事です。 随意契約とは国、地方公共団体などが競争入札によらずに任意で決定した相手と締結した契約をいいます。 つまり宗像市シルバー人材センターは現在宗像市から競争なしで優先的に1億1,000万円分の仕事を出してもらっているのです。
平成24年度のシルバーの一人当たりの年間売り上げは約45万円、管理費等を引くと手取りで 約40万円位でしょう。 シルバーの方々はこの収入で足りないのか、もし足りないならば、具体的に宗像市シルバー人材センターはあとどれくらいの売り上げが必要なのか。 そしてその売り上げ不足の対策として宗像市が随意契約で宗像市シルバー人材センターにあとどれだけ仕事を出せる可能性があるのか。 そういったことを詰める必要があると思います。
確かに高齢者の雇用問題は大変重要な課題であります。 しかし、年金のない現役の方の雇用対策もまたそれ以上に重要ではないでしょうか。 ましてや宗像緑地建設株式会社は宗像市内の地場企業です。 地場の産業振興の観点からも非常に重要なのではないでしょうか。
ちなみに、4年前に最初にこのふれあいの森総合公園に指定管理者を議決する時、宗像緑地建設株式会社は出来るだけシルバー人材センターの雇用を守って欲しいと議会から要望が出ていました。 宗像緑地建設株式会社はそのことを重く受け止め、ふれあいの森総合公園の管理棟に勤めていた8名のシルバー人材センターのスタッフの方8名をそのまま自社の社員さんとして現在も雇用されている事実を付け加えておきます。
次に4点目の『管理がいい加減』という件です。
『ふれあいの森総合公園の境界線の草刈りが出来ていないと近隣住民から苦情が出ている。 現指定管理者である宗像緑地建設株式会社の管理がいい加減である。』という反対意見が建設産業常任委員会の中でありました。
委員会の中で指摘された境界線の草刈りが出来ていないという個所は維持管理課が調べたところ、指定管理者の指示書に指示されていない個所であったことが判明しました。 しかしながら宗像緑地建設株式会社はこの報告を受けてすぐに、指示されていないにも関わらず草刈りを行い、草刈り作業前後の写真を維持管理課に提出しています。
維持管理課曰く、『指定管理者制度の利点は包括的な管理を任せているためにこのようなイレギュラーな作業が出てきても指定管理料の中で全て行ってくれる。 大変ありがたい。 これが委託であればまた別途追加費用を支払わねばならないところだった。』と。
しかし、この境界線の草刈りが出来ていないという近隣住民からの苦情は、宗像緑地建設株式会社が指定管理者になってからこの3年半の間、一回もなかったのに、何故、この議案が出てから急にこういったクレームが出たのか不思議との関係者の話です。
最後に5つ目の『市が一元管理せよ』の件です。
『ふれあいの森総合公園は市の重要なスポーツ施設である。 ここの管理は市が一元管理することにより、よりよい市民サービスの提供につながると考えるから79号議案には反対』という意見も建設産業常任委員会の中でありました。
現在は施設に近いところで鍵等を含めた管理をするほうが市民の利便性がより高いという考えで各コミュニティ運営協議会や地域等で管理してもらっています。 確かに市が公共施設を一元管理するということもいい考え方の一つだと思います。 しかし、市による公共施設の管理の一元化が必要であるというのは、公共施設の管理を民営化するという指定管理者制度そのものを否定することになります。 時代に逆行して指定管理者制度の導入の是非からまた議論し直す覚悟がおありなのでしょうか。
以上、建設産業常任委員会の中で出ておりました5つの反対意見 ①『自動販売機の件』、②『社長交代の件』、③『高齢者の雇用の機会を奪った件』 、④『管理がいい加減の件』 、⑤『市が一元管理せよの件』を一つずつ検証してまいりましたが、これら5つの項目はいずれも本議案を否決する大きな要因にはなりえないと思われます。
最後に、シルバー人材センターから宗像緑地建設株式会社に移られた8名の元シルバー人材センターのスタッフにお話を伺いました。
シルバー人材センター時代は、17名がふれあいの森総合公園の管理スタッフとして常駐していました。 勿論、他の草刈りにもここから言っていたので専任スタッフという訳ではなかったそうですが17名体制と8名体制では大きな差があります。 ですから委託料は殆どが人件費に消えていました。 しかし、今は8名のスタッフで管理しているので、指定管理料は人件費のみではなく、いろんな消耗品代にも管理料が使えるという利点があるということです。 例えば子供たちが遊ぶ遊具、これはもう20年以上経っていますからかなりの補修が必要です。 それから貸出しの道具類、(ラインを引く石灰、野球のベース、整地用のトンボ、トイレットペーパー、巻き尺等・・)。 こういった消耗品の補充もすぐに出来ます。 そして、大きく変わったのは日報です。 パソコン上で日報を入力し、毎日インターネットで本社に送っていますので、毎日の状況が本社にタイムリーに報告できています。 ですから何かあった時の対応がとても早いので我々も安心して働けます。 とにかく、管理が断然よくなった。 でもぎりぎりのスタッフ数でやっているので忙しくて大変なところが大変ですが・・・。と笑って語っておられました。
それでは、私の意見をまとめます。この79号議案で、市はふれあいの森総合公園の指定管理候補者として宗像緑地建設株式会社を庁議で決定し、今議会にその宗像緑地建設株式会社を次の指定管理者にしたいという承認を議会に求めています。 私も今回の選定理由を詳細に審議した結果、3年半の実績のある宗像緑地建設株式会社が議決されるのが市民にとってメリットのある決断であると考えます。 従って、この79号議案に私は賛成いたします。