もはや教科書ですね、これ。ぜったい論文じゃないよ・・・。
【実証ターム02.補論01:単位根検定の方法】
単位根検定の方法は、基本的なDF-GLS検定(Dickey-Fuller Test is Based on GLS Detrending)(注1)、DFを拡張したADF検定(Augmented Dickey-Fuller Test)、そしてPP検定(Phillips-Perron Test)(注2)である。
単位根検定を行う際のソフトウェアとして、ウェブサイト上では「R」(注3)が多く紹介されている。
しかし、注釈3の通り、実際にライトユーザーがRを使い回帰分析を順調に行えるとは到底考えられない為、大半の論文の読者が使用した事のあるであろうMicrosoft社の「Microsoft Excel」(注4)を使用し、本補論の説明を行う。
さて、単位根検定とは、変数がランダムウォーク(酔歩)(注5)であるか否かを検定するものである。
以下の式に於いて、β=1の時の帰無仮説検定を行う事になる。
y_t=β(y_t-1)+ε_t・・・01
注)DFテストの場合、定数・トレンド項(01式で云うε)は無視する。
まずは、「階差」というものを作る。
なぜ「階差」を作るかと言うと、そのままの変数で回帰させた場合、後に言うP-値と言うものが上昇してしまい、単位根過程と認定されてしまう為である。
単位根過程同士を回帰させた場合、見せかけの回帰(互いに無関係の単位根過程で回帰分析を行った際に、実際よりも高い説明力が生じてしまう現象を指す)が発生してしまう可能性が高く、とりわけ「トレンドのあるような変数(GDPや株価等)」をそのまま使ってしまう事は問題がある為である。しかし、現にそのような変数の単位根過程を見極めたい訳である為、一種の処方箋(Prescription)として、階差(差分系列)を作るわけである。
要は、2002年度の階差を求めたければ、2002年度のデータから2001年度のデータを差し引けばよい。
実際に、付表01のM2のデータを使ってやってみよう。
《イランM2(2000.01~2011.12)金額単位:10億リアル》
2000.01:258,274
2001.02:325,023
2002.03:422,887
2003.04:533,560
2004.05:692,707
2005.06:932,308
2006.07:1,296,288
2007.08:1,657,774
2008.09:1,917,444
2009.10:2,372,784
2010.11:2,962,702
2011.12:3,861,157
この階差(ΔM2)を出す。
2001-2000:66,749
2002-2001:97,864
2003-2002:110,673
2004-2003:159,147
2005-2004:239,601
2006-2005:363,980
2007-2006:361,486
2008-2007:259,670
2009-2008:455,340
2010-2009:589,918
2011-2010:898,455
ここで01式を修正し、
ΔM2_t=β(M2_t-1)+ε_t・・・02
この式を推定しよう。
02式に於いて、β=0を帰無仮説とする仮説を推定する。
即ち、β=0が有意であった場合、01式のβは1であり、単位根は存在する事になる。
故に、当該時系列はI(1)のランダムウォークとなる。
エクセルで、「Excel 2003」の場合はツールバーからデータ分析(注6)を、「Excel2007」の場合はデータのタブからデータ分析をクリックし、回帰分析を選択する。
入力Y範囲と入力X範囲を求められるので、入力Y範囲には階差データをそのまま、入力X範囲には、2010年までのデータを入れる。
2011年までのデータを含んだ場合、同数のデータにならず、回帰分析が行えない(もし入れても、警告が表示され弾かれる)。
そして、出力先を適当なセルを選択し(出来るだけ広いスペースのとれるようなセルを推奨する)、「定数に0を使用」(これは、要するにDFテストに於けるε=0)という項にチェックを入れる。
これを行うと、M2の回帰分析データが出力されるので、他の変数に対しても同じ手順を踏めば問題なく回帰分析が行える。
ちなみに、M2の単位根検定に於ける回帰分析結果は以下の通りである。
《回帰統計》
重相関R(回帰分析の当てはまりの指標で、偏差平方和のうち、偏差平方和によって説明できる割合):0.773672
重決定R2(自由度修正決定変数。説明変数の数を考慮した当てはまりの指標):0.598569
補正R2(重決定の補正):0.50766
標準誤差(エラーの平均的なばらつきの推定値):256,451.7
観測数:12
《分散分析表》
注)切片以外の全ての説明変数は無効(切片以外の説明変数の真の係数は全て0である)という帰無仮説の検定を行った結果。
〈回帰〉
自由度:1
変動:1.08E+12
分散:1.08E+12
観測された分散比(決定係数が大きいほど大きくなる。値が大きいと、帰無仮説が不自然になる):16.40196962
有意F(帰無仮説の下、偶然によって標本が観測されてしまう確率の上限。低いほど効果のある説明変数がある事になる):0.0023238
〈残差〉
自由度:11
変動:7.23E+11
分散:6.58E+10
〈合計〉
自由度:12
変動:1.80E+12
〈X値〉
係数(被説明変数への効果の推定値):0.165452
標準誤差(係数の不確かさを示す。小さいと、推定精度が高いことになる。説明変数のエラーのばらつきが大きい時や、説明変数同士が相関を持つ場合は大きくなる):0.040853
t(標準誤差で割る事で、基準精度で評価した推定係数。t分布を示しており、回帰式のあてはまり具合を示す。目安として絶対値で2を超えれば効果のある説明変数と言える):4.049935
P-値(係数が0となる確率。帰無仮説の下で、分析結果のt値が出る境目の確率を示している。0.05を切っていることが目安となり、低いに越した事はない):0.001915767
下限95%:0.0755349
上限95%:0.2553681
求めた推定式は、t値が2を超えておりP-値も0.05以下となっており、有意Fも低い値であり、回帰式として成立していると考えられる。
帰無仮説は棄却不可能である為、M2はI(1)のランダムウォークである。
上記を全ての変数に当てる必要があるが、結果は本論に示してあるので割愛する。
注1:GLS Detrendingを提唱したのは、
Elliott, Graham, Thomas J.Rothenberg and James H.Stock, “Efficient Tests for an Authoregressive Unit Root”, Econometrica, Vol.64, p813-816.である。
Available at
http://www.jstor.org/stable/2171846
注2:PP検定は、分散不均一状況下と系列相関がある条件下での一致性のある推定量の考え方を利用したノンパラメトリック(Non-Parametric)な検定モデルであるが、今回の補論では一切使用しないので、そういうものもあると言う認識でよい。
Reference
松浦克己『応用計量経済学8』
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=4&ved=0CDIQFjAD&url=http%3A%2F%2Fwww.yu-cho-f.jp%2Fresearch%2Fold%2Fpri%2Freserch%2Fmonthly%2Fm-others%2F1999%2Fno134p111.pdf&ei=GSEwUq6eJIKRkwXErYGQCg&usg=AFQjCNE_wbQdYN2em4hcJ-5UJAUHWCfMGw&sig2=6qFgUyrLS1aQjIB6ef5VGw
注3:統計ソフトウェア内では有名なフリーソフトの名前である。
しかし、R言語と言うものをまず覚えなければならないのはもちろんの事、R自体の操作が慣れないうちは回帰分析に至る事はまず難しい、と言う点から、今回はRは使用していない。
Reference
「無料統計ソフトR」
http://o-server.main.jp/r/about.html
注4:ちなみに、筆者のExcelは「Excel 2003」であるが、「Excel 2007」でも画面が違うだけで、支障なく事は行える。
注5:次に現れる位置が確率的に無作為に決定される運動を指す用語。
注6:Excel2003にせよ、Excel2007にせよ、データ分析が見つからなかった場合、それはアドインで追加していないからである。
ツールバーのアドインで分析ツールを選択し、一度インストールすれば、使えるようになる。
参考
teramonagi「Rで学ぶ回帰分析と単位根検定」
http://www.slideshare.net/teramonagi/r-7066155
豊田利久、大谷一博、小川一夫、長谷川光、谷崎久志『基本統計学 第3版』(東洋経済新報社、2010.09)
http://www.toyokeizai.net/shop/books/download/kihontoukeigaku3/data/sec11.7.pdf
「Excel~回帰分析」
http://ryu.kakurezato.com/excel/excel_ra.html
第 6 章.時系列分析の基礎 -WordPress
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=1&ved=0CCkQFjAA&url=http%3A%2F%2Fhungrysleepygreedy.files.wordpress.com%2F2012%2F04%2Fe_views_6.pdf&ei=r2AwUsPYDIjekAXb1YHgBQ&usg=AFQjCNFqlU54GoMuxWQsyEaAQNG8VnrfAg&sig2=65wa6mDxb_hzNtNaxBvs4g
【実証ターム02.補論01:単位根検定の方法】
単位根検定の方法は、基本的なDF-GLS検定(Dickey-Fuller Test is Based on GLS Detrending)(注1)、DFを拡張したADF検定(Augmented Dickey-Fuller Test)、そしてPP検定(Phillips-Perron Test)(注2)である。
単位根検定を行う際のソフトウェアとして、ウェブサイト上では「R」(注3)が多く紹介されている。
しかし、注釈3の通り、実際にライトユーザーがRを使い回帰分析を順調に行えるとは到底考えられない為、大半の論文の読者が使用した事のあるであろうMicrosoft社の「Microsoft Excel」(注4)を使用し、本補論の説明を行う。
さて、単位根検定とは、変数がランダムウォーク(酔歩)(注5)であるか否かを検定するものである。
以下の式に於いて、β=1の時の帰無仮説検定を行う事になる。
y_t=β(y_t-1)+ε_t・・・01
注)DFテストの場合、定数・トレンド項(01式で云うε)は無視する。
まずは、「階差」というものを作る。
なぜ「階差」を作るかと言うと、そのままの変数で回帰させた場合、後に言うP-値と言うものが上昇してしまい、単位根過程と認定されてしまう為である。
単位根過程同士を回帰させた場合、見せかけの回帰(互いに無関係の単位根過程で回帰分析を行った際に、実際よりも高い説明力が生じてしまう現象を指す)が発生してしまう可能性が高く、とりわけ「トレンドのあるような変数(GDPや株価等)」をそのまま使ってしまう事は問題がある為である。しかし、現にそのような変数の単位根過程を見極めたい訳である為、一種の処方箋(Prescription)として、階差(差分系列)を作るわけである。
要は、2002年度の階差を求めたければ、2002年度のデータから2001年度のデータを差し引けばよい。
実際に、付表01のM2のデータを使ってやってみよう。
《イランM2(2000.01~2011.12)金額単位:10億リアル》
2000.01:258,274
2001.02:325,023
2002.03:422,887
2003.04:533,560
2004.05:692,707
2005.06:932,308
2006.07:1,296,288
2007.08:1,657,774
2008.09:1,917,444
2009.10:2,372,784
2010.11:2,962,702
2011.12:3,861,157
この階差(ΔM2)を出す。
2001-2000:66,749
2002-2001:97,864
2003-2002:110,673
2004-2003:159,147
2005-2004:239,601
2006-2005:363,980
2007-2006:361,486
2008-2007:259,670
2009-2008:455,340
2010-2009:589,918
2011-2010:898,455
ここで01式を修正し、
ΔM2_t=β(M2_t-1)+ε_t・・・02
この式を推定しよう。
02式に於いて、β=0を帰無仮説とする仮説を推定する。
即ち、β=0が有意であった場合、01式のβは1であり、単位根は存在する事になる。
故に、当該時系列はI(1)のランダムウォークとなる。
エクセルで、「Excel 2003」の場合はツールバーからデータ分析(注6)を、「Excel2007」の場合はデータのタブからデータ分析をクリックし、回帰分析を選択する。
入力Y範囲と入力X範囲を求められるので、入力Y範囲には階差データをそのまま、入力X範囲には、2010年までのデータを入れる。
2011年までのデータを含んだ場合、同数のデータにならず、回帰分析が行えない(もし入れても、警告が表示され弾かれる)。
そして、出力先を適当なセルを選択し(出来るだけ広いスペースのとれるようなセルを推奨する)、「定数に0を使用」(これは、要するにDFテストに於けるε=0)という項にチェックを入れる。
これを行うと、M2の回帰分析データが出力されるので、他の変数に対しても同じ手順を踏めば問題なく回帰分析が行える。
ちなみに、M2の単位根検定に於ける回帰分析結果は以下の通りである。
《回帰統計》
重相関R(回帰分析の当てはまりの指標で、偏差平方和のうち、偏差平方和によって説明できる割合):0.773672
重決定R2(自由度修正決定変数。説明変数の数を考慮した当てはまりの指標):0.598569
補正R2(重決定の補正):0.50766
標準誤差(エラーの平均的なばらつきの推定値):256,451.7
観測数:12
《分散分析表》
注)切片以外の全ての説明変数は無効(切片以外の説明変数の真の係数は全て0である)という帰無仮説の検定を行った結果。
〈回帰〉
自由度:1
変動:1.08E+12
分散:1.08E+12
観測された分散比(決定係数が大きいほど大きくなる。値が大きいと、帰無仮説が不自然になる):16.40196962
有意F(帰無仮説の下、偶然によって標本が観測されてしまう確率の上限。低いほど効果のある説明変数がある事になる):0.0023238
〈残差〉
自由度:11
変動:7.23E+11
分散:6.58E+10
〈合計〉
自由度:12
変動:1.80E+12
〈X値〉
係数(被説明変数への効果の推定値):0.165452
標準誤差(係数の不確かさを示す。小さいと、推定精度が高いことになる。説明変数のエラーのばらつきが大きい時や、説明変数同士が相関を持つ場合は大きくなる):0.040853
t(標準誤差で割る事で、基準精度で評価した推定係数。t分布を示しており、回帰式のあてはまり具合を示す。目安として絶対値で2を超えれば効果のある説明変数と言える):4.049935
P-値(係数が0となる確率。帰無仮説の下で、分析結果のt値が出る境目の確率を示している。0.05を切っていることが目安となり、低いに越した事はない):0.001915767
下限95%:0.0755349
上限95%:0.2553681
求めた推定式は、t値が2を超えておりP-値も0.05以下となっており、有意Fも低い値であり、回帰式として成立していると考えられる。
帰無仮説は棄却不可能である為、M2はI(1)のランダムウォークである。
上記を全ての変数に当てる必要があるが、結果は本論に示してあるので割愛する。
注1:GLS Detrendingを提唱したのは、
Elliott, Graham, Thomas J.Rothenberg and James H.Stock, “Efficient Tests for an Authoregressive Unit Root”, Econometrica, Vol.64, p813-816.である。
Available at
http://www.jstor.org/stable/2171846
注2:PP検定は、分散不均一状況下と系列相関がある条件下での一致性のある推定量の考え方を利用したノンパラメトリック(Non-Parametric)な検定モデルであるが、今回の補論では一切使用しないので、そういうものもあると言う認識でよい。
Reference
松浦克己『応用計量経済学8』
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=4&ved=0CDIQFjAD&url=http%3A%2F%2Fwww.yu-cho-f.jp%2Fresearch%2Fold%2Fpri%2Freserch%2Fmonthly%2Fm-others%2F1999%2Fno134p111.pdf&ei=GSEwUq6eJIKRkwXErYGQCg&usg=AFQjCNE_wbQdYN2em4hcJ-5UJAUHWCfMGw&sig2=6qFgUyrLS1aQjIB6ef5VGw
注3:統計ソフトウェア内では有名なフリーソフトの名前である。
しかし、R言語と言うものをまず覚えなければならないのはもちろんの事、R自体の操作が慣れないうちは回帰分析に至る事はまず難しい、と言う点から、今回はRは使用していない。
Reference
「無料統計ソフトR」
http://o-server.main.jp/r/about.html
注4:ちなみに、筆者のExcelは「Excel 2003」であるが、「Excel 2007」でも画面が違うだけで、支障なく事は行える。
注5:次に現れる位置が確率的に無作為に決定される運動を指す用語。
注6:Excel2003にせよ、Excel2007にせよ、データ分析が見つからなかった場合、それはアドインで追加していないからである。
ツールバーのアドインで分析ツールを選択し、一度インストールすれば、使えるようになる。
参考
teramonagi「Rで学ぶ回帰分析と単位根検定」
http://www.slideshare.net/teramonagi/r-7066155
豊田利久、大谷一博、小川一夫、長谷川光、谷崎久志『基本統計学 第3版』(東洋経済新報社、2010.09)
http://www.toyokeizai.net/shop/books/download/kihontoukeigaku3/data/sec11.7.pdf
「Excel~回帰分析」
http://ryu.kakurezato.com/excel/excel_ra.html
第 6 章.時系列分析の基礎 -WordPress
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=1&ved=0CCkQFjAA&url=http%3A%2F%2Fhungrysleepygreedy.files.wordpress.com%2F2012%2F04%2Fe_views_6.pdf&ei=r2AwUsPYDIjekAXb1YHgBQ&usg=AFQjCNFqlU54GoMuxWQsyEaAQNG8VnrfAg&sig2=65wa6mDxb_hzNtNaxBvs4g
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