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資料室B3F

https://yaplog.jp/akasyuri/
の移籍版。

とりとめのない狩りの仕方

2015-05-30 21:47:30 | 小ネタ
「障害物競走」という名称は問題?
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=29&from=diary&id=3442073

逆にその変換の発想に驚きました。よくこんな発想になったな、と素直に驚きを隠せません。

まあ、そんなに障害走というネーミングセンスがいやなら、イギリスみたいにOCR(obstacle racing)にすれば良いんですよね。obstacleとhandicapは違いますから。まあ、今度難癖つけるとすれば、Optical Charactor Recognitionか?とか言われるところでしょう。ちげえよバカ、といったら怒られる時代ですか。バカにバカといって何が悪い、みたいな。

・・・・・・・・・

”あなたは間違えてる”はだいたい”君の考え方が気に食わない”だし”あの人が傷ついているじゃないか”は”僕の気に入らないことをするな”だし、太宰治に言わせれば”世間が許さないのではなくて、それはあなたが許さないのでしょう”だろうと思う。 
http://tamesue.jp/20150505/

obstacleとhindrance、fault、handicapとみんなひとくくりにすれば『障害(障碍)』ですが、よくよく考えてみれば『碍』の語源が『行く手を遮る様に見える石』から来ていますから、『障碍』にすると殊更に意味がややこしくなるような(そこまで考えちゃいないか、『バカ』だから(この煽りかたはかさこ風))。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ひまわりの種をまきました。力を合わせてひまわりを咲かせ、仲良くゴールを目指します』

・・・について。並走が進化してました。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940690841&owner_id=60483195

何か失敗するたびに「お前はダメだ」と言われ続けた子らは、チャレンジから逃避します。 
ヘラヘラとうつむいて笑ってばかりで、かけっこのような勝敗のある事柄から逃げる傾向があります。 

※運動会のかけっこで手をつないでみんなでゴールする話を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、そうでもしないと、かけっこの前に「おなかが痛い」と理由をつけてかけっこを参加拒否する子が多すぎて、競技が成立しないこともあります。 

・・・・・・

ハノウ2015年04月05日 22:05 『かけっこの前に「おなかが痛い」と理由をつけてかけっこを参加拒否する子が多すぎて、競技が成立しないこともあります。』
そうだったんですか。 ははあ、なるほどなぁって感じです。そんなみんなでゴールやってるうちはいいが、もし後ろにライオンを放ったらドベは喰われるんだぞ、ドベがみんなってことはみんな喰われるんだぞ、いざそんな環境になったら死にたかねえだろう?だから差ってのは・・・みたいなことを言ってましたが、この現実だと、ライオンが来ても腹痛になりそうで、なんだかね、ってところです。いや、ほんと、ヘラヘラしているのは、小中学生に限らず若めな社会人でも多いですね。小中学生は、ヘラヘラしているやつを見たければ授業参観で総合学習の発表を見ればいくらでも見れることは経験上知っていますが、jacoさんのいう『何か失敗するたびに「お前はダメだ」と言われ続けた子らは、チャレンジから逃避します。 
ヘラヘラとうつむいて笑ってばかりで、かけっこのような勝敗のある事柄から逃げる傾向があります』に加え、何でもかんでも逃げ出したくて仕方ないのかもしれないな、と思ってます。だって総合学習とか、勝ち負けないですからねぇ・・・。

jaco.2015年04月07日 13:08> ハノウさん 

> この現実だと、ライオンが来ても腹痛になりそうで、なんだかね

まったくそのとおりだと思いますw
ライオンが見えた段階で、腹痛になるか、へらへら笑うか、他の子を生贄に差し出すか、どれかになりそうで…。

へらへらしてる子たちは、緊張した経験が少ない傾向にあります。
たとえば、ブランコからジャンプして飛び降りるとき、子どもたちはすごく緊張します。
しかし、遊んでいるとき、親がいきなり制止に入るわけです、「あぶないでしょ!」と。
どろんこで遊べば「服を汚すな」、かけっこをすれば「転ぶからやめなさい」、カブトムシを見つけて親に報告すれば「そんな気持ちの悪いもの持ってこないで!」、ことごとく否定です。
また、泣けば「男らしくない・泣いてもどうしようもないでしょ」、誰かを叩けば「叩いちゃいけません」、感情を表現しようとすれば否定されます。
黙って本を読んでいるときくらいしか親に肯定してもらえないのですから、何もせずにへらへら笑うのが正義になるのは仕方ないでしょう。

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難癖をつける側に対して。この前、珍しくもないと言えば珍しくもないのだが、長谷川に久々に同意した。 

http://lite.blogos.com/article/111698/?axis=&p=2 

『そこに悪意なんてあるわけがない。むしろ、敬愛の念をこめてイギリス王室に誕生した王妃の名前を付けたのだろう。ところが、実に日本的…というか、動物園に寄せられた苦情の中には 

「日本の皇室の名前をサルにつけたらどう感じるのか!」 
「イギリス王室の気持ちを考えろ!」 

という的外れな批判が殺到しているのだ。繰り返すが、そのイギリス王室がまったく気にしていないのだが。 

これを日本では「空気を読む」という。 

勝手に相手の気持ちを慮って(おもんばかって)、自分の想像の中で相手の「迷惑」を空想し、先回り、先回り、してとにかく「周囲の人が嫌な気持ちにならないように」自分たちの行動や表現を全部制限する。』 

・・・・・・・・・

そういうことをする人には、わかりやすい外形的な特徴がある。「首尾一貫性がない」ということです。

例えば、イギリスの国家意思自体は、国益の最大化という意味では首尾一貫しています。そういうことをする人は、「こんなことをしたら、対象が喜ぶかも知れない」と思って、走り回っている為に、動線には法則性がない。何故ならば、彼らが「対象」と呼んでいるものは、彼らひとりひとりの頭の中に像を結んだ「幻想」でしかないからです。

「おれが『それ』だと思っているもの」こそが、そういうことをする人たちにとっての「それ」でしかないので す。 

「それ」が直接こちらに「指示」を出しているなら、その指示はオーソライズされており、どの施策も首尾一貫します。 

対照的に、そういうことをする人にとっての「対象の欲望と推定されているもの」は誰によってもオーソライズされておりません。「言挙げされていない」欲望に焦点化しているのだから。

「いや、殿、その先はおっしゃいますな。何、こちらはちゃんと飲み込んでおります。ま、どうぞここは、この三太夫にお任せください」 

これがその本懐といってもいいでしょう。 

「みなまで言わずと」的制止のあとに「殿の意思」として推定されるのは、多くの場合、「三太夫の抑圧された欲望」であり、三太夫は「私が殿の立場だったら、きっとこう考えるだろう」ということを推定します。

彼は、相手の欲望を読み取っていると思っている当のそのときに、「自分の欲望」を語ります。 

「せこい」やつが対象の意思を想定すると、対象は「せこい性格」を持ったものとして観念される。 

彼らが「それの意思だと思っているもの」は、それぞれの「もし自分がそれだったら、へこへこへつらってくる人間に向かって何を要求するか?」という自問への答えの部分でしかないのです。ここまで、「そういうこと」と書いてきたのは言わずもがな「忖度」でしかありません。 

「忖度されたそれの意思」はこれらの人々の「卑しさ」をそのままに表示することになります。

・・・とかいうと怒られるのでその人の目の前でいうととんでもないことになります。

(おまけ)
地震すごかったですね。昨日じゃなくてよかったです。悲惨なことになってたし。


新銀行東京吸収併合への雑感

2015-05-29 21:22:36 | 小ネタ
新銀行東京 経営から都撤退へ
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=3437765

東京で裏目に出たのは、CBO ALL JAPANだった。まあ、いろいろあったから、こんなことになったわけだが・・・。

blogosでは以下の2件を見かけた。
http://blogos.com/article/113139/
藤田憲彦
2015年05月27日 10:00
新銀行東京地銀傘下に

http://blogos.com/article/113268/
おときた駿(東京都議会議員/北区選出)
2015年05月27日 23:14
東京都、ついに撤退!千億円の大赤字をたたき出した「新銀行東京」とは何だったのか

昨年CBOの関連でこの件については解説を書いたことがある。タイトルは・・・

A Bolt from the Gray――CBO All Japanと東京都債券市場構想の戦歴編――

だった・・・。新銀行東京とCBOは切り離せない。

4.3章 A Bolt from the Gray――CBO All Japanと東京都債券市場構想の戦歴編――

マイカルが初めてのABS Defaultを起こした後、2回目のABS Defaultが2009年7月2日に発生した。中小企業の資金調達を円滑化させようと、東京都が旗振り役(Take the Initiative, Prenez l’initiative)となり発行された発行額881億円の証券化商品「CBO All Japan」が全額償還されないことが2009年7月2日に発表され、投資家の損失は130億円超となった(注BG01)。


同債の発行額が計881 億円であり、資産プールの総額は914 億円であったことは、社債発行総額に対して、資産プールは3.75%上回り(余剰担保)、これが損失に対する引当となり、原資産の中堅・中小企業の私募債の債務不履行に備えられていたことになる。原資産(私募債)の選択では、参加銀行により当初、正常先とされており、格付け機関による中小企業Credit Modelで推定貸倒率が一定水準以下とされた先であった。しかしながら、発行から1年6箇月を経過した2007 年9月時点で、既に資産プールの累積債務不履行率は3.5%(金額ベースにして30億8,350万円)となっていた。最終的には、償還までの3 年間の累積Default率は22%(金額ベースにして193億8,200万円)に達した。この数字は、当初の余剰担保率(3.75%)の6倍に匹敵する。

「CBO All Japan」に関わる新聞報道自体が2009年7月で終わっており、この問題はそこ迄他の問題に波及するものではなかったと言えよう。尚、主要経済誌は『旬刊金融財政事情』のみしか破綻を取り上げていなかった(発行時は、『旬刊金融財政事情』と『信用保険月報』が取り上げていたが、『週刊ダイヤモンド』や『週刊東洋経済』、『エコノミスト』が取り上げていなかったのはある意味で驚きを覚えた)。本件証券化商品は2006年3月に、東京都が推進する「都債券市場構想」に基づき発行されたCBO(社債担保証券。Collateralized Bond Obligation)で、東京都、大阪府、横浜市、川崎市、静岡市、大阪市、神戸市と共同し、7自治体に営業所を有する中小企業の発行する社債(私募債)が裏付資産となっていた。

CBO All Japan
クラス 号名 発行額 対象 予定最終償還日 償還額 発行時の格付け(S&P)
スーパーシニア A号 40億円 個人投資家向け 2009年4月 40億円(100%) AAA
第1シニア B号 831億円 機関投資家向け 2009年7月10日 709億円(85%) AAA(2009年7月2日にCCに格下げ)
第2シニア C号 7億円 0円(0%) AA(2009年7月2日にCCに格下げ)
メザニン D号 3億円 A(2009年7月2日にCCに格下げ)

出典:伊藤直仁「7地公体の連携により大規模資金供給を実現した広域CBO」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2698(2006.06.12)所収)P36。

広域CBO個人投資家向け債券発行の概要
出典:神戸市産業振興局中小企業振興センター「広域CBO(社債担保証券)の結果速報及び市民(個人投資家)向け債券発行について」(2006.02.17)P2、伊藤直仁「7地公体の連携により大規模資金供給を実現した広域CBO」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2698(2006.06.12)所収)P37。
発行形態 国内公募特定社債
発行者 シービーオー・オール・ジャパン特定目的会社
格付 AAA(S&P依り取得)
発行額 40億円
販売単位 100万円単位
表面利率 0.40%〜1.40%
発行日 2006年3月15日
償還期限 2009年4月3日
最終償還期限 2009年7月10日
販売窓口 みずほインベスターズ証券の本支店
購入対象者 連携自治体内の在住・在勤者中心
償還方法 満期一括償還
信用補完 優先劣後構造。劣後金額部分は34億5,000万円(全体の3.77%)。
特定社債管理会社 みずほ銀行
信託受託者・運営代理人 みずほ信託銀行
幹事証券会社 主幹事:みずほ証券、幹事:みずほインベスターズ証券

裏付けとなる社債の発行会社は1,269社存在した。大企業と比較して中小企業は景気変動の影響を受け易い前提はあるが、1社当たりの発行額を1億円に制限したことに依り、リスク分散の効果が期待されていた。そして、制度の参加企業は東京都のホームページで紹介されることから、IR(投資家向け広報。Investor Relations, Relations avec les Investisseurs)効果を狙い宮崎から参加する例もあった(注BG02)。通常、私募債の発行はそのものが対外的に企業のクレディビリティをアピール可能となる。

また、参加金融機関であるみずほ銀行、スルガ銀行、池田銀行(現:池田泉州銀行)各行に依る債務者分類が正常先であったこと等も前向き材料として捉えられていた。石原都政時代、2000年から債券市場構想の一環としてローン担保証券(Collateral Loan Obligation ,CLO)は発行されていた。2000年3月23日に発行されたCLOの場合、都市銀行各行と東京都民銀行、横浜銀行、日本興業銀行が窓口となり、中小企業の融資を受け付け、第一勧業富士信託銀行に債権譲渡、富士銀行が設立したSPCが発行し、富士証券が発行するスキームであった(注BG03)。本件CLOに係る投資家の利回りは1.13%であり、2000年3月27日には、都内の信用金庫を窓口としての約15億円分のCLOも発行された。
元々単独では社債発行の出来ない中小企業に、無担保、無保証で資金調達出来る様にした仕組みであった。担保となる資産を持っていない企業の融資は、半年から1年と短期間であった中で、CLOは3年と比較的長い融資期間を提供していた。ただ、この時のCLOは、「CBO All Japan」よりも融資基準は比較的厳しく、自己資本比率や過去の業績と言ったハードルを掛けていた(「CBO All Japan」の窓口であったみずほ銀行の融資基準は非常に緩慢なものであったとされる指摘は多い)。CLOの融資限度額では「本格的な設備投資額には足りず」(「ローン担保証券きょう発行 都債券市場構想の第一歩 中小企業の資金調達支援 都内1700社参加、680億円規模に」(『日本経済新聞』(2000.03.23)15面(地方経済面)))、利息も3.14%と通常の信用保証付き融資より高くついていたとされる。利用企業はCLO制度の利用を可能とする為に売掛金を圧縮、在庫も見直して、結果的に財務体質を向上させた等、別の方面で良好な結果を出していた(注BG04)。
富士銀行と信金中金をアレンジャー(中核金融機関)に第1回債券発行を実施した。毎回、これ迄参加した中小企業の意見・要望をその都度反映させていったことが以下の表からわかる。尚、第4回は3方式に変更されている。

A方式 財政負担のないスキーム(中核金融機関:三井住友銀行)に依るCLO
B方式 保証協会を活用する改良・進化スキーム(中核金融機関:みずほフィナンシャルグループ/窓口金融機関:6行2金庫・都内1,600箇店)に依るCLO
C方式 日本初の行政主導CBOスキーム(中核金融機関:みずほ銀行・みずほ証券・みずほ信託銀行のみずほフィナンシャルグループ)

過去3回の発行を通じ、都内約5,200の中小企業に1,900億円超の資金供給実績となっている(中規模信用組合1つ分の貸出残高に匹敵)。特に、2002年3月の第3回債券発行額は、当時過去最大の約881億円の資金供給を達成していた。保証協会の信用保証を活用する従来型スキーム(A方式)は、三井住友銀行を中核金融機関として組成する一方で、B方式では日本初の財政負担を伴わない準民間Baseスキームを用意し、東京スター銀行とBNPパリバ証券を共同中核金融機関として組成している。

CLOの評価
出典:越坂淳「特集 東京都債券市場構想――自治体金融政策としての証券化・CLO/CBO――」(日本政策金融公庫中小企業事業本部保険情報部『信用保険月報』Vol.46(3)(2003.03)所収)P8。
【評価の向上】〔金利が高い〕→変動金利導入 第1回:54.3%
第3回:18.9%
【優良中小企業の集積】企業評点(帝国データバンク評点)は53〜55点(都内平均は45点)
【課題】資金使途が「手元資金の増強」52.3%(定型化・継続が課題)

平均的な参加企業像
出典:越坂淳「特集 東京都債券市場構想――自治体金融政策としての証券化・CLO/CBO――」(日本政策金融公庫中小企業事業本部保険情報部『信用保険月報』Vol.46(3)(2003.03)所収)P8、図6。
売上高 10億円未満(単純平均:23億5,600万円)
従業員 11〜30人(単純平均:56人)
帝国データバンク評点 54点(都内平均:45点)
社長 50歳代(当時)
資本金 3,000万円未満(単純平均:4,976万5,000円)
創業以降年数 約20年(当時では1980年代創業が最多であった)


募集要領
出典:冨金原宏諭「直接金融へより一歩前進したスキーム」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2551(2003.05.12)所収)P41、別図。
注:各項目の計算方法は下記の通り。
○純資産額=自己資本(バランスシートに於ける資本の部の金額) ○自己資本比率=純資産額/使用総資本(バランスシートに於ける資産の部の金額) ○純資産倍率=純資産額/資本金 ○使用総資本事業利益率=事業利益(=営業利益+受取利息配当金+割賦販売利息)/使用総資本 ○インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益/支払利息割引料
1.総資産額3億円以上。
2.自己資本比率20%以上又は純資産倍率2.0倍以上。
3.使用総資本事業利益率7%以上又はインタレスト・カバレッジ・レシオ1.5倍以上。

私募債の特徴
○2002年10月1日から2003年1月10日迄に申し込みのあった東京都内に事業所等を有し、みずほ銀行の審査に依り私募債引き受けが可能と判断された17業種189社に依り発行された。
○発行会社は店頭公開1社を除き、総て非公開中堅・中小企業。
○みずほ銀行を社債管理会社とする年限2年、満期一括償還の無担保社債。
○財務上特約は右の通り。 担保提供制限特約(Negative Pledge Clause):契約期間中に担保の提供を原則禁止する条項。無担保で借入や起債を行う際に債務者への財務制限条項として、債務者が将来第三者の利益のために行う担保提供を制限する条項のことを指す。本条項の主な機能としては、無担保で借入や起債を行うことは限度があるので、放漫経営による加重債務を抑制する効果を期待出来ること、債務者の資産を他の有担保債権者の手に委ね、無担保債権者を将来実質的な劣後債権者に陥れることを防ぐことが期待される。
利益維持特約:営業利益や経常利益などを指標として、一定の利益水準を確保することを約束させる条項。
担附切換条項:発行会社が財務上特約に違反した際に、その社債に適切な担保が提供され、債券が保全されるという条項。
○みずほ銀行は私募債発行日である2003年3月20日に発行総額150億6,000万円の私募債を一括して引き受けた後、同日付で全額をみずほ信託銀行へ信託譲渡し、当初受益者として優先受益権(140億円)、第1劣後受益権(1億5,000万円)、第2劣後受益権(9億1,000万円)の交付を受け、優先受益権はSPCに売却、第1劣後受益権は日本政策投資銀行に売却(従来であれば、劣後部分は委託者が持ち切ることが前提となっていた点で従来とは異なる性質を持つ)、第2劣後受益権はみずほ銀行が保有する形を取った。中堅・中小企業向けの無担保・無保証CBOに於いては、原資産である私募債は投資適格の格付けを有しない為に、優先劣後構造とした場合、必ず投資不適格の部分(劣後部分)が発生する。多くの場合、この劣後部分は取扱金融機関が保有してきた。劣後部分は、証券化スキームのキャッシュフローを最劣位の順序で受領するものであり、債券プールのクレジット・リスクが凝縮された部分である。通常、格付機関は債券プールに係る予想損失額の数倍となる金額を劣後部分として要求する為、劣後部分を保有することは、債券プールのクレジット・リスクの大部分を負担していることに等しい。従って、劣後部分を取扱金融機関が保有している場合、取扱金融機関が殆どのクレジット・リスクをテイクしているに等しく、参加企業にとっては、実際には資本市場調達は限定的にしか実現されていないこととなっていた。第1劣後受益権の購入に当たっては、高度なリスク判断が要求される。この受益権は元本に関してミドルリスクを負う上、配当に関しては私募債に1件でも債務不履行が起こると配当が減額される性格を有する為、日本政策投資銀行は、案件組成の段階から精緻に私募債プールの分析を行い、内容を精査していた。
○SPCは優先受益権から生ずるキャッシュフローを裏付けとしてCBOを発行。当CBOはR&Iに依り多数分散型の評価手法に基づき格付けされ、優先部分に対してAAAを取得した。尚、第1劣後受益権配当は第2劣後受益権元本・配当と同順位と、その劣後性が高められている。
○7%強の信用補完水準については、私募債プールのクレディビリティに対する分析に加え、社数、金額、地域、業種等の分散を考慮に入れた上で評価している。具体的には、みずほ銀行の行内格付別の債務不履行率等をベースに、クレディビリティの分析を行った後に、分散が効いている時に使用する大数プールアプローチと、やや分散が効いていない場合に使用する少数プールアプローチ(CDOアプローチ)の、2つの異なるアプローチから、信用補完水準の適正さを検証している。

銀行融資の道を開く狙いで2004年に設立された新銀行東京とこの債券市場構想は、車の両輪のような存在であったのだが、甘い融資が不良債権化した新銀行東京は経営難に陥り、2008年4月末に400億円の税金投入で資本を増強した。そこで火種が飛んだのが債券市場構想である。そうでもしないと債券発行が行えない位の企業をかき集めたことが以下の記事から見えてくる。

「直近の半期報告書に記載された年間の営業利益などが支払利息の何倍かという指標を見ると、 参加企業の45%近くが2倍未満という低さ。「公募の証券化商品として異常な構成」 (クレディ・スイス証券の宮坂知宏証券化商品ストラテジスト)だ。元本が棄損する場合に バッファーの役割を担う劣後部分も全体の発行額の4%強と薄めだ。今回のCBOを組成し、参加企業を審査したみずほ銀行は 「私募債については通常の貸し出しと同様の厳格な与信判断をしている」と説明する。」(『日経ビジネス』(2008.08.04-2008.08.11)

発端は2008年7月11日、S&Pに依る「CBO All Japan」の大部分を占めるB号の格下げであった。S&PはBマイナスとしていた格付けを、債務不履行の蓋然性が高いとするCCCマイナスに3Notch格下げした。発行当初は最上級のAAAだったが、S&Pは2007年7月以降、大幅な格下げを繰り返し、僅か1年で18Notchもの大幅な格下げを引き起こしていた。引き下げの理由は無論、景気悪化で証券化の裏づけとなる中小企業の業績が急激に悪化した為である。2008年6月末迄の債務不履行額は累計66億円強で、年率0.5%以下を想定していた債務不履行率は過去半年間で6%超に跳ね上がっていた。S&Pの松尾俊宏アナリストは、「現時点で元本が棄損する可能性がかなり高い」(小瀧麻理子「東京都、新銀行に次ぐ火種 みずほ銀組成の中小企業債券で波紋」(『Nikkei Business』(2008.08.04-2008.08.11)所収)P16))と述べていた。元々、シービーオー・オール・ジャパン特定目的会社は、発行直後からDefault率が当初の想定より高率で推移したが、債務者属性も相対的に悪かった。2008年時点の半期報告書に記載されたインタレスト・カバレッジ・レシオを見ると、参加企業の45%近くが2倍未満と言う低さであった(注BG05)。

これについては、Credit Suisse証券の宮坂知宏証券化商品ストラテジストも「公募の証券化商品として異常な構成」(小瀧麻理子「東京都、新銀行に次ぐ火種 みずほ銀組成の中小企業債券で波紋」(『Nikkei Business』(2008.08.04-2008.08.11)所収)P16)であると指摘している。尚、劣後部分も全体の発行額に対し4%と薄めの設計となっていた。

CBO All Japanの格付け推移
出典:徳島勝幸「クレジット市場混乱期における格付けについて」(日本証券アナリスト協会『証券アナリストジャーナル』(2009.10))P48。
注:何れも格付けはS&Pに依るものである。原典はS&Pリリース。
  2006.03.15 2007.07.06 2007.09.11 2008.04.11 2008.07.11 2009.07.02 2009.07.10
A号 AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA
B号 AAA AA BB+ B- CCC- CC D→NR
C号 AA A- B+ CCC- CCC- CC D→NR
D号 A BBB- B CCC- CCC- CC D→NR

発行されたのは2006年3月15日であるが、1年後の2007年4月11日にCW Negativeが発表され、2007年7月6日にS&Pが最初の格下げを公表した。格下げの対象はB号〜 D号であり、その理由は、「裏付け資産プールのパフォーマンスが悪化していること」であった。B号は2Notchの格下げとなり、CWは解除された。しかし、2007年8月28日には、「裏付け資産プールから追加的にデフォルトが発生していること」から、再度CW Negativeが発表された。結果が2007年9月11日に公表され、B号の格付けはBB+となり、CW Negativeが継続とされた。こうして、最初の格付け見直しから、僅か5箇月でAAAからBB+と10 Notchの格下げとなった。その後、2008年4月11日にS&Pが、最大のTrancheであるB号についてBマイナスに5 Notch引き下げた上で、CW Negativeとした。
B号は、最初のCW発表から丁度1年で、AAAからBマイナスへと計15 Notchの格下げとなった。S&Pは定期的に「CBO All Japan」の裏付け資産の状況についてMonitor結果を公表しており、事前に公表したPerformance Watchに於いて、中小企業の信用状況が大きく悪化し、実績Performanceが当初格付け分析時の想定から大きく乖離している為に、純毀損増加額が大きい場合には格下げとなる方針を公表していた。尚、S&Pは07年9月11日の大幅な格下げの際に、格下げ理由を説明する目的でReport(注BG06)を公表している。その中で、「募集型による債務者の逆選択」について、これまでリスク要因と考えていなかったと表明している。本件に於いても、裏付け資産に債務者のMoral Hazard(つまり、リスク分散が為されているのだから幾分財務体質が悪かろうと社債にはそう響かないだろうと言う邪な考え等)が含まれていたことは十分に推察されるが、格付会社の側にもデータの扱い、即ちデータ取得期間が短い場合に、過去に経験されなかった様な景気のDown CycleをStress Scenarioとして織り込む等の分析で、改善の余地があった様に思料される。格付会社がこれだけ短期に大幅な格下げを行ったという結果に対しては、後に述べる様に当初の債務不履行率の想定を誤った為、当初の格付けが甘くなっていた(7自治体の関与もある為、その傾向は余計に増大していたであろう)のではないかという疑念が生じる。

A Bolt from the Gray 尾注

注BG01:「ニューススクエア 都が旗振りの証券化商品、全額償還されず」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2844(2009.07.23)所収)P8。

注BG02:宮崎市のティナプリ、マエムラの2社。ティナプリは1億円発行し、化粧品の開発や女性用下着の増産に充当、マエムラは3,000万円発行し、東京事務所の開設費用に充当していた。「東京都の「債券市場構想 宮崎の2社利用 私募債を発行 資金調達」」(『日本経済新聞』(2005.03.15)13面(地方経済面))。尚、企業要覧の掲載意向を示した企業は約58%であった(伊藤直仁「7地公体の連携により大規模資金供給を実現した広域CBO」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2698(2006.06.12)所収)P38)。

注BG03:「ローン担保証券きょう発行 都債券市場構想の第一歩 中小企業の資金調達支援 都内1700社参加、680億円規模に」(『日本経済新聞』(2000.03.23)15面(地方経済面))。

注BG04:例として東京都大田区の三美テックス。「企業と石原都政(1) 技術に理解、中小振興前進」(『日経産業新聞』(2003.04.15)3面)。

注BG05:小瀧麻理子「東京都、新銀行に次ぐ火種 みずほ銀組成の中小企業債券で波紋」(『Nikkei Business』(2008.08.04-2008.08.11)所収)P16。

注BG06:スタンダード・アンド・プアーズ「国内中小企業CDO分析における案件特性の取り扱い」(2007.09.11)。


その後、2008年7月11日には、遂にB号からD号迄が、総てCCCマイナスに並び、元本の毀損が必至と認定された。しかし流石に最上位のTrancheであるA号に対しては、B号の831億円がCushion(緩衝材)として存在する為に、浸食される懸念は小さかったのだろう、そのままAAAの格付けが為されている。2009年に入って最終償還を迎えることになったが、裏付け資産のPerformance悪化から、最終的にはC号及びD号が全損となったのみならず、B号の償還も額面の83.95%に止まった。
まさかこれほど迄に中小企業向け私募債Portfolioが劣化するとは、流石に案件組成の段階で予想するのは困難であったのは確かだろう。しかし裏を返せば、B号に当初AAAが付されていたことについて、中小企業のクレディビリティ悪化のリスクを的確に認識出来ていなかったという解釈もあり得よう。
 「CBO All Japan」が発行された2006年は、元々中小企業への貸し渋りが横行していた金融機関の姿勢が積極的なものに転じた時期と符合している。新銀行東京が2006年、融資規模の拡大を狙い、高金利の預金キャンペーンを展開していたが、キャンペーンの支払い金利が重荷となり、新銀行東京より高い金利を提示していた日本振興銀行に客が流れ(尚後に日本振興銀行は2010年9月に破綻している)、2007年3月期には547億円の最終赤字を計上する結果となった。それ故に、新銀行東京と広域CBOが、経済環境の変化に対応出来ず、そのまま事業を進めて傷口を広げた構図が似ていると評されることとなった。
同種のCBOは2005年3月以降、毎年計3回発行されていたが、景気低迷を受け、2007年3月を最後に発行されなくなった。2008年から償還自体が怪しくなっていたことから、CBOの新規発行が「為されない」のではなく「出来ない」状態に陥っていた(注BG07)。国内のある大手運用会社は、B号を発行時に購入したものの、AAA格から引き下げられた時点で売却したと語っている(注BG08)。
本件のDefaultがマイカルのケースと違い、そこ迄尾を引く騒ぎとならなかったのは、証券化市場への影響が非常に限定的なものになっていた為である(注BG09)。元々Lehman Shock(Bankruptcy of Lehman Brothers)の深刻化に因り、本邦に於いても仕組みの複雑な証券化商品自体が敬遠され、殆ど発行されなくなっていたことが、本件Defaultの影響を限定的なものとした大きな要因である。
2007年3月に発行され、2010年3月に償還されたCBOである「Excellent Collaboration」は、Defaultこそ起こさずに済んだものの、格付けはA号を除きB号はAAAからB、C・D号はAからCCCへと格下げされていた。こちらについては、Moody’s及びS&Pの2社から格付けを取得しているが、Super SeniorであるA号を除いて、2008年10月から2009年7月末迄に、B号はAaa(Moody’s)/AAA(S&P)からB2(Moody’s)/B(S&P)へ、C号はA2(Moody’s)/A(S&P)からCaa3(Moody’s)/CCC(S&P)へ、D号はBaa2(Moody’s)/BBB(S&P)からCa(Moody’s)/CCC(S&P)へと、相次いで大幅な格下げとなっており、同じく満期一括償還の構造を採った「CBO All Japan」と同様の状況となっていた。ただ、Moody’s Japanの北山慶代表取締役が、2007年10月11日の『日経金融新聞』に掲載されたインタビューで、「信用補完の水準などスキームが全然違い、問題はない」と明言していた通りに、償還自体は為されている(注BG10)。またMoody’sは、旧中小企業金融公庫が主導して組成された地域金融機関CLOシリーズについて、2009年4月に優先受益権で最大7Notch、メザニン受益権で最大9Notchの大幅な格下げを公表していた。こちらの格下げ理由としては、経済環境の悪化に依る裏付け債権プール若しくは参照プールのPerformance悪化とされていた。無論その背景には、想定を上回る債務不履行率の悪化があることで、こちらも当初の案件組成・格付付与時点での前提に問題があったものと言えよう。当初AAAの格付けをしたS&Pの松尾俊宏アナリストは、本件のDefaultについて以下の様に説明している。

「一定の経済環境の変化にも耐えられると判断した当初の想定から、実績は大きく乖離した。格付けの際に採用した中小企業のデフォルト確率のモデルと、実際の資産プールに差異があった可能性がある」(「ニューススクエア 都が旗振りの証券化商品、全額償還されず」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2844(2009.07.23)所収)P9)

リスク分散自体に問題は無かったことはマイカルの際に挙げた基準を振り返ると分かり易い。

1.大数の法則が働く多数の債権プールを裏付けとするもの
(Que la loi des grands nombres est soutenu par un grand nombre de pool de créances à fonctionner) 真正証券化
(Vrai de Titrisation)
2.少数の債権の債権プールを裏付けとするもの
(Ceux qui soutenu par lot de créances d'un petit nombre de créanciers) 特定証券化
(Certains de Titrisation)
3.一つの債権を裏付けとするもの
(Est soutenu par l'un des créanciers) 擬似証券化
(De Pseudo Titrisation)

マイカルにしてもOne for All Asset FundingやSymphonyに代表されるCBOを取り扱っていたが、前提としてCBOは、投資リスクが債務者の分散度合いに大きく依存する。理論上、数社でも組成可能CBOスキームの場合、肝(The Basic Point, Du Point de Base)は小口分散にある。通常、300以上の債権プールを構築すると、大数の法則が働き、過去の不履行率を基に、将来の不履行率の確率が推定出来る様になる。個別資産のクレディビリティは、Tranching構成に依り補完され、CBOに関する格付機関の一般的な考え方は、格付け毎に設定されたDefault率以下となっているかを判断することになるのであるが、統計的なApproachに依る為、企業数とリスクが密接な関係を持つことになる。企業間及び産業間の分散については、Stress Testが行われており、格付けの見直し(Credit Watch)が為されるのは、プールの一部を構成する社債の格下げに依るものであり、プールのPerformance低下に因るTrancheの影響を再度分析する必要が生じることとなる。ここ迄はマイカルの際にした説明と大差ないが、「CBO All Japan」の場合、1,000以上の債権プールを保有していながら破綻している。しかしポイントは「過去の不履行率を基に、将来の不履行率の確率が推定出来る」と言う点である。
元々CLOの際には、「優良企業でないと利用出来ない」(「企業と石原都政(1) 技術に理解、中小振興前進」(『日経産業新聞』(2003.04.15)3面))と言う批判が出る程にハードルが高かったこともあり、「CBO All Japan」の様にハードルを下げた審査が行われてもある意味不思議ではないが、それは「過去の不履行率」をそのまま当て嵌めることが出来なくなることを意味する。前提として、「審査基準に変更がない」ことが「将来の不履行率」の推定に際して置かれる訳であり、仮に銀行側が融資ハードルを下げたのであれば、それは推定材料である「過去の不履行率」の意味を無くすものである。推定が外れるのもある意味無理はない。尚、Credit Risk分析は以下の様に行われていた。

CBO All JapanのCredit Risk分析
出典:宮坂知宏「投資家がリスク・リターン分析を行うに当たって必要とする情報について」(2008.04)P3。
原典:格付機関のプリセール・レポート。
番号 項目 数値
A S&Pが想定した裏付プールのBase Default率(年率) 0.50%
B CBOのWAL(WALはWeighted Average Life(加重平均残存年限)の略。起算日から各元利払日の元本償還までの年限をそれぞれの元利払日に発生する元本償還額で加重平均した値。) 3.0年
C(=A×B) 累積Base Default率(年率) 1.50%
D AAAの格付けに必要なStress後累積Default率 6.70%
E(=D/C) Stress倍率 4.5倍
F 必要信用補完 4.90%
G(=D×F) 利用可能Excess Spread 1.80%

CBO All Japan SPCの裏付プールのBase Default率を、S&Pは年率0.5%を下回る水準と想定した上でのモニタリング状況が以下の通りである。尚、S&Pの中小企業Credit Model(注BG11)による予想貸倒率は年率0.8%である(注BG12)。伊藤(2006)に依れば、金融機関毎に企業のクレディビリティに対する評価が異なることから、一定の評価軸に依り参加企業の基準を設定する観点から導入したとされ、中小企業Credit Modelに於いて判定されるクレディビリティが一定以上であることを参加企業の基準の一つとしたと説明される(注BG13)。また伊藤(2006)は、参加企業の基準設定については、売上高や純資産額、利益水準等の財務指標や収益指標に依り設定する方法もあり得るものの、これらの基準のみでは、債券プールのクレディビリティを一定水準以上とすることが難しいことから採用しなかったと説明している(注BG14)。ここで、仮に信頼区間を68%(1標準偏差)で計算すると、必要となるStress PD(Probability of Default)値及び倍率は次のようになる。

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.169% (x2.77)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 4.063% (x5.07)

Student-t copula w/ asset correlation 30% => 7.798% (x9.74)

これらの数字は、S&Pの「中小企業CLO・CBOの格付け手法 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるStress倍率(5~8倍)とちょうど同水準となる。尚、「ボラティリティのボラティリティ」を15%として計算すると、信頼区間は丁度75%(1.15標準偏差)となる。この数字を使ってもう一度同じ計算をしてみよう。

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.637% (x3.29)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 5.172% (x6.46)

Student-t copula w/ asset correlation 15% => 7.091% (x8.86)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 9.441% (x11.8)

S&Pが仮定するStress倍率(0.5%)を30~50%上回る結果となった。この結果は、「CBO All Japan」に於ける2007年3月から9月迄のDefault率(年率4.7%(Base Default率の10倍)も十分予測の範囲内に収まることになる。つまり、そもそものStress倍率(5~8倍)、つまり「中小企業CLO・CBOの格付け手法 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」そのものに疑いが向けられてもおかしくはない。Stress倍率はAAAの格付けに必要なStress後累積Default率を累積Base Default率で割って出る為、取り得る選択肢としては以下の2つとなる。

1.「中小企業CLO・CBOの格付け手法 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるストレス倍率を見直し、裏付プールのBase Default率を底上げする。
2.信頼区間を下げる。

1.の場合、関与するファクターがなく信頼区間を恣意的に操作しようと思えば操作出来てしまうので、他に関与するファクターの存在する2.から考えてみたい。累積Base Default率はS&Pが想定した裏付プールのBase Default率にCBOのWALを掛け合わせたものである。CBOのWALは固定化されている(CBOのWALを変更する為には、そもそもCBO自体の仕様を変えなければならなくなる)以上、累積Base Default率を操作する為にはS&Pが想定した裏付プールのBase Default率を操作しなくてはならなくなる。つまり正確には、取り得る選択肢としては以下の2つとなる。

2.の選択肢を取ったが最後、分析を扱う組織としては完全にお終いとなってしまう。これは推論として1.を取らざるを得ないだろう(ただ、新たな「中小企業CLO・CBOの格付け手法 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」が出た話を聞かないが)。ただ単に、みずほ銀行に中小企業を見る目がなかったと責任を丸投げするのは簡単ではあるのだが、特殊ケースと投げることなく、もう少し分析ツールを見直す機会と捉えても良かった様に思料される。

A Bolt from the Gray 尾注

注BG07:「東京都主導の社債担保証券 元本割れが確定 商品設計に疑問の声も」(『日本経済新聞』(2009.07.03)4面)。

注BG08:Ibid.

注BG09:この指摘については、BNPパリバ証券の野川久芳ストラクチャードクレジットストラテジスト発言が同趣旨。原典は「東京都主導の社債担保証券 元本割れが確定 商品設計に疑問の声も」(『日本経済新聞』(2009.07.03)4面)。

注BG10:「証券化商品大幅格下げ 格付け会社に聞く 価格リスク評価せず CDOの想定は見直し」(『日経金融新聞』(2007.10.11)8面)。

磯道誠「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が九月に中小企業の社債を束ねたCBO(社債担保証券)を大幅格下げしたが、ムーディーズも同じシリーズの今年発行されたCBOに格付けしている。」
北山慶「信用補完の水準などスキームが全然違い、問題はない。S&Pが格付けしたCBOに仮に格付けしていたとしても、同じ格付けはつかなかったと思う。」

注BG11:S&Pと日本リスクデータバンクが開発した倒産確率推定モデルのこと。

注BG12:予想貸倒率は、『RUMのNYクオンツ日記』に依れば、S&Pが当該当CBOに予備格付けを付与した時点でのS&Pの「Base Default率」の1.7倍程度(出典:FISCO(http://www.fisco.co.jp/index.html))であるとされる。

注BG13:伊藤直仁「7地公体の連携により大規模資金供給を実現した広域CBO」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2698(2006.06.12)所収)P38。

注BG14:Ibid.

A Bolt from the Gray 参考文献
「ニューススクエア 都が旗振りの証券化商品、全額償還されず」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2844(2009.07.23)所収)
「東京都主導の社債担保証券 元本割れが確定 商品設計に疑問の声も」(『日本経済新聞』(2009.07.03)4面)
「都政データ09都議選 中小の直接金融 経済環境の変化追いつけず」(『日本経済新聞』(2009.07.08)15面(地方経済面))
「ローン担保証券きょう発行 都債券市場構想の第一歩 中小企業の資金調達支援 都内1700社参加、680億円規模に」(『日本経済新聞』(2000.03.23)15面(地方経済面))
「企業と石原都政(1) 技術に理解、中小振興前進」(『日経産業新聞』(2003.04.15)3面)
「社債担保証券 売買単位を下げ 都、個人の購入増ねらう」(『日本経済新聞』(2004.09.04)15面(地方経済面))
「東京都の「債券市場構想 宮崎の2社利用 私募債を発行 資金調達」」(『日本経済新聞』(2005.03.15)13面(地方経済面))
「証券化商品大幅格下げ 格付け会社に聞く 価格リスク評価せず CDOの想定は見直し」(『日経金融新聞』(2007.10.11)8面)
「シービーオー・オール・ジャパン特定目的会社の有価証券報告書一覧」(『投資関係がわかる「有報速報」』)
http://toushi.kankei.me/c/1042

「証券化商品の格付けについて考える」(『RUMのNYクオンツ日記』(2007.11.10))
http://rum-planet.blogspot.jp/2007/10/blog-post_28.html

「地に堕ちた「米格付けS&P」」(『FACTA Online』(2007.11))
http://facta.co.jp/article/200711023.html

伊藤直仁「7地公体の連携により大規模資金供給を実現した広域CBO」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2698(2006.06.12)所収)
大井智生「証券化商品の情報開示推進~情報ベンダーが果たし得る役割について~」(2008.05.15)
http://www.jsda.or.jp/shiraberu/syoukenka/hanbai_wk/files/4-2.pdf

小瀧麻理子「東京都、新銀行に次ぐ火種 みずほ銀組成の中小企業債券で波紋」(『Nikkei Business』(2008.08.04-2008.08.11)所収)
北原一功「精緻なリスク分析、モニタリング体制が投資家に安心感与える」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2551(2003.05.12)所収)
神戸市産業振興局中小企業振興センター「広域CBO(社債担保証券)の結果速報及び市民(個人投資家)向け債券発行について」(2006.02.17)
http://www.city.kobe.lg.jp/information/oshirase/backno/2006/img/20060217ia01.pdf

神戸市産業振興局中小企業振興センター「「第3回政令指定都市CLO融資」及び「第2回広域CBO」の結果速報並びに市民(個人投資家)向け債券発行のお知らせ」(2007.03.02)
http://www.city.kobe.lg.jp/information/oshirase/backno/2007/img/20070302ia01.pdf

越坂淳「特集 東京都債券市場構想――自治体金融政策としての証券化・CLO/CBO――」(日本政策金融公庫中小企業事業本部保険情報部『信用保険月報』Vol.46(3)(2003.03)所収)
張毓宗「CBO/CLOの格付手法」(日本資産流動化研究所『資産流動化研究』Vol.5(1999.03)所収)
冨金原宏諭「直接金融へより一歩前進したスキーム」(金融財政事情研究会『旬刊金融財政事情』Vol.2551(2003.05.12)所収)
徳島勝幸「クレジット市場混乱期における格付けについて」(日本証券アナリスト協会『証券アナリストジャーナル』(2009.10))
http://www.nli-research.co.jp/company/financial/aj0910-tokushima.pdf

豊島健治「中小企業金融の理想と現実(東京都の失敗)」(『SMC金融・経済マーケットレポート』(2009.07.04))
http://www.hi-ho.ne.jp/smc_toyo/0907041.pdf

松尾順介「金融再編と投資銀行業務--CBO/CLOを中心に--」(地方債協会『地方債月報』Vol.244(1999.11)所収)
松本康宏「注目トピック 中堅・中小企業向け私募債担保のシービーオー・オール・ジャパン債がCC に格下げ」(新生証券『新生クレジットマーケット・デイリー』(2009.07.03))
http://www.shinsei-sec.co.jp/pdf/Daily_090703.pdf

宮坂知宏「投資家がリスク・リターン分析を行うに当たって必要とする情報について」(2008.04)
http://www.jsda.or.jp/shiraberu/syoukenka/hanbai_wk/files/3-2.pdf

吉永康樹「広域CBO、元本割れが確定」(『吉永康樹のCFO News』(2009.07.03))
http://www.cfonews.jp/?p=681

Arturo Cifuentes and Georgios Katsaros, “The One-Factor Gaussian Copula Applied To CDOs: Just Say NO (Or, If You See A Correlation Smile, She Is Laughing At Your “Results”)”, Structured Finance Department, R.W. Pressprich & Co. New York, NY, USA, May , c2011.
http://www.dii.uchile.cl/wp-content/uploads/2011/05/Cifuentes_Katsaros.pdf

Karl B. Gregory, “The Gaussian Copula Model”, Texas A & M University, April 30, c2011.
http://www.stat.tamu.edu/~kbgregory/Gauss%20Copula%20Model%20Presentation.pdf




あんまりうまく行くとは思えない

2015-05-27 21:44:33 | 小ネタ
■18歳選挙権、来月にも成立=2日採決で合意―衆院委
(時事通信社 - 05月26日 15:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=3435050

18の坊っちゃん嬢ちゃんたちが行きますかねぇ・・・。唯一、公職選挙法違反で未成年者にも刑事罰を下せるあたりだけは非常に画期的ですが。

ただでさえ18の高校生は受験だなんだで考えている暇なんかあるわけないでしょうに。受験抜きにしたって仕事は探さなきゃならない。出来て浪人生か引きこもりニートのどちらかくらいしかいやしません。いやしない、とか言い切ると、後がややこしくなる(意識高い高ーい系が現れる)ので言い切りはしませんけれども。

電車に乗っていると、高校生は英単語の本かパズドラかのどっちかです。「AIIBに参加すべきか?」とか「習近平の対日外交はどうなるか?」とか、そんな話してますか?

ないでしょうよ。すればいいじゃないですか、わからなくたっていいんですよ。新聞とらないとかいってた同僚が新聞持ち込んでやっただけで饒舌になりますから。

世間様でそういう話したってよさそうじゃないですか?

でも、絶対しないんですよ。

子供同士で話すときに、それが少しでも学校の成績の向上にかかわるような話題は絶対に選びませんから。

アニメの話とか、アイドルの話とか、トリヴィアルな知識を披瀝しても成績に関わりませんからね。成績に全く関係がないことがわかっているトピックについてなら、子供たちは異常に能弁になるでしょう。

文学の話はしない。それを聞いた友だちの国語の成績が上がるかも知れないから。
歴史の話もしない。世界史の成績が上がるかも知れないから。
政治の話もしない。政経の成績が上がるかも知れないから。

嘘だと思うなら、明日あたりに町中でおしゃべりしている中高生のそばににじり寄って、彼らがどんな話をしているか聞いてみてください。わかりますから。




シラ切り通し

2015-05-27 21:44:03 | 小ネタ
12歳アイドル“ヘリウム事故”壮絶現場……「BPOで審議を」日本小児科学会の提言にテレビ朝日はどう応えるか
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=53&from=diary&id=3435296


以前にも話がありましたが、ああ、やっぱりそうだったんでしょ?というところです。

テレ朝も制作会社もあれからだんまり決め込んでますねぇ。業務上過失傷害を法人に適用しないなんてことをやってるからバカみたいなことになってるんでしょうに。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結果的には私が誤りを認める必要もなかったかもわかりませんが。

(修正版)馬鹿げている http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1939206811&owner_id=40049699&full=1

テレ朝社長「退院めど」ヘリウム事故女性
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=3289212

前の日記は確かに書き方がおかしかったです、すいません。破けただと、ホントに破けたのか怪しくなりそうなので、詰まった線でも書くべきでした。体の動脈に直接空気が入ってしまう動脈塞栓が今は有力視されています。肺胞がヘリウム吸ったくらいで破けるわけないだろと言われたので、ああ、やっぱり?みたいな感じがしたんですが、大袈裟だったのかもしれません。なんかすいません。
でも、塞栓を考えると、メッチャ高圧or肉体の限度を超えた高容量ガスがあれば、ガスが肺胞の毛細血管を破壊せずに通過し溶解し、あとで気道の圧が下がったときに一気に血管内で気化し塞栓が生じる線がありそうな感じが・・・しませんか。肉体の限度、これがまた小学生ですからね、大人と一緒にしちゃいけないよ、というのは、捨ててはならないとは思います。

以前のコメント欄で、きよっちさんに、

『少なくとも私の知識では、空気(ヘリウム)塞栓がおこる原理が理解出来ないのです。パーティー用のヘリウムは非常に低圧ですし。肺胞が大人と比較して脆弱だという事はないと思いますし、深呼吸で肺胞の血管に入ってしまうなら、普段の深呼吸でも同じな筈ですし、経験上深呼吸で空気塞栓を来した人は知りません。それに、空気塞栓で意識消失するでしょうか・・・。あまり脳梗塞で意識不明になった人見たことがないのです。やはり、純ヘリウム説→窒息が初期の症状としては説明しやすい気がします。』

と御忠言されまして、いやぁ、なんかわざわざすみません。肺胞が脆弱でないってのは、どうかしら、みたいな感想は抱いたままなんですが、思春期くらいに肺が肺胞も含めてゆっくり完成していきますから、同じだッ!というのは、どうかな、程度の意識の差ではあると思います。

そんでです、ヘリウムでやらかす例はありました。わけのわからんことをしでかすガキが世界中いるもんだな、と。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12006819
Tretjak M, Gorjup V, Mozina H, Horvat M, Noc M, "Cerebral and coronary gas embolism from the inhalation of pressurized helium.", Crit Care Med. 2002 May;30(5):1156-7.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10692202
Mitchell SJ, Benson M, Vadlamudi L, Miller P., "Cerebral arterial gas embolism by helium: an unusual case successfully treated with hyperbaric oxygen and lidocaine.", Ann Emerg Med. 2000 Mar;35(3):300-3.

○高圧のヘリウムタンクから吸ってみた。

○圧の調整のされてないシリンダーから吸ってみた。

☆パーティー用の缶を吸って起こしたという事例ではない。

ここが厄介なんです。今までそんな事例がなかった。たしかにやらかしたやつはいたにはいたが、無茶苦茶なやつだらけで手前がいなかった、と。

大人用とかは、確かに子供用と比べても、よくわからないことは認めます。大人(女性)は、肺活量は2000ccから3000ccです。子供とそんな変わらないんです、肺活量自体は。ヘリウムもマツコ・デラックスの番組(月曜からよふかし)で(まともに使って)2回くらいしか使えなかったので、今回がいかにまともでなかったかは、何となくお察しください。

今回のカンカンが5000cc×2でしたから、思い切り吸って吸って、それでみんな、口を密着させて一気に吸い込んでたとなる(ホントは、何のガスだって、鼻の周囲に流して、周囲の空気と一緒に吸い込むようにするもんなんですが、まだ小学生ですから、よしすっちまえ状態だったんだろうとは思います)と、高圧で肺の中の気圧が瞬間的に上昇した・・・わけです。先程も申し上げた通り、まだまだ思春期に達しちゃいないお年頃でしたから、成長過程にある柔らかい肺の中の肺胞のいくつかが弾けるケースは、想像するに難くなかったのです。

・・・・・・・・・

ここまで書いてなんなんですが、そのあとまたコメントいただきまして、

『そうなんです。圧外傷(バロトラウマ)ならあり得ると思うのですが、流石にいくらなんでも高圧タンクからはすわないと思います。映像的に面白くないですし。潜水病の場合は、血管内に溶けたヘリウムが減圧した際に気化するものですが、一瞬では溶解できないですから、この線もきついかと。
不謹慎ではありますが、興味深い症例かと思います。』

正直、ランニングさせてからイッキ吸いとか、わけのわからんことをした複合症状でけりがついてしまいそうななげやりな結論に至りそうです。きよっちさん、何度もありがとうございます。

・・・・・・・・・

ここから以前のです

さすがに理屈がおかしい。昨日辞任した農林水産大臣がだいぶまだマシに見えてしまう。

『「大人用」と書かれたヘリウムガスのパーティーグッズを一気に吸ったことが原因に挙げられているが、吉田社長は「ご本人がガスを吸ったが覚えていないと聞いている。原因を特定できていない。検証委員会で詰めている」と話した。』

これは、言葉を少し変えただけでもわかるはずです。20年前の3月であれば、

『神経に作用するサリンを吸ったことが原因に挙げられているが、○○は「ご本人がサリンを吸ったが覚えていないと聞いている。原因を特定できていない。(・・・)』

となるわけです。サリンとヘリウムは違う?そりゃ構造は違うでしょうよ。酸素じゃダメなのか?ダメなんですよ。

まず、「脳空気塞栓症」という診断がついているわけです。ポイントは酸欠でないことにあります。

酸欠であるならば、酸素濃度が低い場合には、どんなガスを吸っても瞬間的に酸欠になる(ヘリウムに限らない)為、疑問として、大量に吸った場合に酸素分圧が下がるということがあるのかどうかが焦点となってくるわけです。しかし、酸欠ではない。

今回の病状からすると、ヘリウムと酸素の混合気体(ヘリオックス)は大深度ダイビング(に限らず、パーティグッズの「変声」用ガスには、酸欠になるのを防ぐため、酸素が20%ほど含まれている)で使われるわけですが、ヘリウムは窒素に比べて血液中に溶けやすいことから、空気塞栓(潜水病)を防ぐために、安全停止を長く取る必要があることをベースとすれば、

一度に大量に吸ったために肺に圧がかかり、通常より多くのヘリウムが血中に溶解し、そのまま脳まで運ばれたヘリウムが気化して塞栓を起こしたケースが考えられます。

そもそもの中学生でもわかる話として、肺胞は肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の、2層の薄皮を隔て、空気と血液がガス交換を行っている場所であります。
無論、小児の肺や血管は成熟した個体と比べて脆いわけです。ここは小学生でもわかります。

先程の話の通り、息絶え絶えの状態で思いっきり吸入した際に、肺胞の層構造が破綻したと考えられているわけです。

肺内の血液中にヘリウムガスが混入して、肺循環は全身の動脈系に血液を供給するわけです。比重の軽い(空気は窒素78%、酸素21%、その他の気体1%で1リッターあたり約1.3gであることから1リッターあたりの酸素は約0.273gで、ヘリウムは1リッターあたり約0.2gとなります)ガスは高いところ(脳血管)に集まりやすくなり、脳血管空気塞栓を来すわけです。この病変は急性脳梗塞(脳虚血状態)を来し、病変の部位、範囲に応じた病状を呈することになったわけです。

サリンが神経毒を引き起こしたのと同じように、ヘリウムも今回そういう現象を引き起こした。なぜそれを認めないのか?馬鹿げている。


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http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0053.pdf

No. 53 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害事例
年齢:12歳5か月
性別:女
体重:36kg
身長:149cm
傷害の種類意識障害原因対象物ヘリウムガス入りスプレー缶(市販の変声用のパーティーグッズ:ヘリウム80%,酸素20%の混合ガス)

臨床診断名脳空気塞栓症の疑い

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救急隊が接触した時は軽度の意識障害(日本昏睡尺度Japan Coma Scale(JCS)で20)と低酸素血症(SpO2:89%)を認め,酸素投与を受けながら搬送された.
患児に基礎疾患はなく,家族歴にも特に問題はない.
当院搬送時には四肢の硬直が強く,ジアゼパムの投与を受け頓挫した.
頭部CT写真には異常所見を認めなかったが,胸部CT写真で広範囲の皮下・縦隔気腫と気胸を認めた.
意識障害(E1V2M4/JCS200)が遷延するためICUに入室した.入院翌日も意識障害は続き,左半身に優位のけいれんを認めた.
頭部MRI写真と髄液検査では問題となる所見はなく,発作時脳波で右後頭部に棘徐波を認めた.
てんかん性疾患を考えミダゾラム,フェニトイン,レべチラセタムを開始した.入院2日目には脳波異常は改善した.以後病的反射は消失し,意識状態の改善が徐々にみられた.
入院6日目に再度けいれんし,頭部MRI写真を再検したところ,皮質・皮質下優位に多発性の拡散低下があり,頭部CT写真でも同部位の低吸収域が認められた.入院後は,脳炎・脳症,代謝性疾患,てんかん性疾患,内分泌疾患,感染症などの検索を行ったが有意な所見はなく,臨床経過から空気塞栓症の可能性があると判断し,転院した.高圧酸素療法を施行し,左半身の麻痺の改善傾向,自然開眼するなどの臨床所見の改善を認めたため,ヘリウムガス吸引をきっかけとした脳空気塞栓症として,他院で治療的診断された.
2015年2月5日現在,追加の高圧酸素療法を行っているが,高次脳機能障害を残す可能性があると判断されており,早期のリハビリ介入が検討されている.

【こどもの生活環境改善委員会からのコメント】
1. パーティーグッズなどで変声用に使用されるヘリウムガス入りスプレー缶(ヘリウム80%,酸素20%)は,世界的に広く販売されており,多くの使用者がいるものと推定される.今回使用されたヘリウムガス入りスプレー缶もその一つであり,缶の表面には「大人用」と書かれていた.ヘリウムガスの缶からの吸引方法は説明書に書かれているとおりの使用法であった.

2. ヘリウムガスの危険性に関しては,2011年にJournal of Forensic Sciencesが行った調査によると,オーストラリアでは2005年7月から2009年12月までの間に79人が死亡している.2013年には,イギリスで62人が死亡しており,死亡事故が増えていると報告されている.日本中毒情報センターによると,玩具に使用されたヘリウムガスを吸ったことによる事故の相談は,2001年4月から2012年3月までに32件あり,患者の年齢は5歳以下が13件,6~12歳が18件,成人が1件と報告されている1).原因としては,風船のガスが26件,声が変わるガス(ヘリウムと酸素の混合ガス)が5件,不明1件で,半数にあたる16件において意識消失,嘔吐,顔面蒼白,気分不良などの症状を認めた.ヘリウムガス自体は無害であるが,直接吸引,または袋など狭い空間に充満した場合は,酸素が無いために酸素欠乏症となる危険性が高い.パーティーグッズのヘリウムガス(酸素を20%程度混合)を風船用などのヘリウムガス(酸素0%)と混同し,風船用ヘリウムガスを直接吸引して死亡に至った事例がある.


3. ヘリウムガスによる空気塞栓症は,主に心臓の術後やカテーテル検査後などに医原性の事故として発生しており,今回のように一般者が使用できる加圧されたヘリウムガスの吸引で発生した事例の報告は,学術誌上では世界的に数例2)~4)のみのようである.いずれの報告も加圧されたヘリウムガスを吸引し,直後に意識障害,けいれん,片麻痺などを認めている.なお過去の報告からは,具体的にどのような製品を吸引したのか,どの程度の圧でガスが充填されていたのかなど不明である.

4. 潜水士(ダイバー)が深いところから浅いところに向かって上昇するとき,肺の中のガスは膨張するが,このときガスを吐き出さずに溜め込めば肺胞が破裂する5).本事例ではヘリウムガス入りスプレー缶から噴出されたヘリウムガスの吸引により,それ以上肺が膨張できない状態まで拡張したところに,噴出され続けるガスによって圧がかかり,その結果,肺胞が破裂したBarotrauma(圧損傷)が主病態であったと推測される.

本事例の女児の肺活量は年齢,身長,体重からおよそ2.6Lと推定される6)が,事故発生時の状況から完全に息を吐き切った状態からガスを吸引したわけではないようである.よって吸引の開始から肺容量が最大に達するまでに2.6Lのガス量は不要であったと考えられ,ガスの吸引中に肺容量が最大に達していたものと推定される.

今回使用されたヘリウムガス入りスプレー缶のガス容量は5,000ccであり,仮に最大呼出状態からの吸引であったとしても肺容量は最大に達しうる.鼻をつまみ,ノズルの先端をしっかりくわえたために,ガス圧の逃げ場がなかったこともおそらくは病態に関与していると思われる.Barotraumaでは細気管支や肺血管と隣接する肺胞が破綻する7).


漏れ出たガスは肺門部に向かって伸展し縦隔気腫を形成する.さらに伸展すれば頸部・胸部の皮下気腫を認めるようになる.臓側胸膜が破綻し胸腔にガスが漏れた場合には気胸を形成する.圧が高い場合には,肺胞と同時に破綻した肺血管にガスが流入する可能性がある.

肺静脈系にガスが流入した場合には左心から大動脈を介して空気塞栓症を引き起こす.肺動脈系にガスが流入した場合であっても,卵円孔開存や生理的な肺動静脈シャントなどを介して左心系に達し空気塞栓症を引き起こす.また,卵円孔開存やシャントがなくても肺血管床による空気のろ過域値を越える量のガスが流入すれば空気塞栓症を発症しうる(イヌにおける実験では0.3mL/kg/minがろ過域値)2)8)9).

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